わかりやすい強さ、わかりにくい強さ | ボクシングライフW

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趣味と言うよりライフワークになっているボクシングについてとりとめもなく感じたままに

先般、WBCSフライ級王者  ジェシー・ロドリゲスが圧倒的有利の予想の中、イスラエル・ゴンサレスに悪戦苦闘の防衛をした。恐らくボクシングファンの評価、期待は急落しただろう。


昨年までライトフライ級だっただけにパンチ力が劣るのは仕方がない。それをスピードと足で補っていたのだが………足を地に付けて強振した事が裏目に出た。


さてボクシングにはわかりやすい強さ、そしてわかりにくい強さ(巧さ?)がある。

人気が出やすいのは前者。今回のロドリゲスがそうだ。一方、過大評価されがちなのも前者。



私の世代だとマイク・タイソンやテリー・ノリス、フェリックス・トリニダードがそんなタイプに感じる。

もちろん、彼らは強く、文句なしのグレートだが引退後に評価が下がる傾向がある。


一方、わかりにくい強さもある。それはアマチュアでもスパーリングでも実際にボクシングを経験してみないと理解するのが難しい強さ。


パンチを放てば逆に打たれると思わせて手を出させない。傍から見ると変則ではないのに予想外のパンチが飛んで来る心理学者の様なボクサー。


代表格はバーナード・ホプキンス、スヘェン・オットケ。日本に馴染みのあるボクサーだとミゲル・カント。著名ボクサーでは晩年のフロイド・メイウェザーもそうかもしれない。いわゆるスポイラーと呼ばれるスタイルだ。

彼等は引退後に評価が下がりにくい。


晩年のメイウェザーがどうしてあれだけの人気を博したのか今でもわからない。凄いボクサーではあっても本来、万人ウケするスタイルではないのだが………。


ロドリゲスは個々の能力は高い。だが素直過ぎた。今のままではロマゴンや井岡一翔には勝てない様に思う。


田中恒成にもロドリゲスと同じ事を感じる。橋詰戦で圧倒的なスピードと回転力を見せたが………なんと言うか本能のままパンチを繰り出している。



井岡と再戦しても………スピードとパワーで王者を上回りながら、田中がリベンジすると考える人は少数派だろう。


コンビネーションの多彩さだけがテクニックではない。目線、フェイント、ポジショニング等、様々な技術がある。ナックルをベルトラインより上にしか当てる事が出来ないボクシングは傍目でみるよりずっと難しい。パンチとスピードがあるだけでは当たらない。


ロドリゲスと田中はもっと当てる工夫に磨きをかければ更に強くなれると思うのだが、その必要がなく勝ってきた。その為、ボクシングが素直。


逆に言えばまだまだ伸び代があるという事でもある。今後に期待したい。