思い切って声をかけてみたが、何をどう話せばいいのか優斗の頭の中で整理がついているわけではない。
まさか、こうしてここで会うことなんて予想していたわけではないのだから。
古川が口を開く。
「奈緒と別れたことを悔やんでいるか?」
「はい。」
「やけに素直なんだな。
俺が高三でお前たちが高一だった。
その頃から奈緒のことは知っていたよ。
その時もう隣にはお前がいた。
特別な感情があったわけじゃない。
一年のベストカップルって言われてただろ、当時。
俺の隣には別の子がいた。
奈緒と再会した時、別人かと思ったよ。
キラキラした笑顔が消えていて、今にも全てを放り出しそうだった。」
「俺が奈緒と別れたいって言ったからですね。」
「お前は、元気で明るく笑う奈緒をたくさん見てきただろ?
『自分に自信が持てない』と奈緒は言ったけど、自信満々で生きていたのはお前だけじゃない、奈緒も同じだ。
毎日、満たされていたんだろうな。
だが俺はそんな笑顔をこの頃やっと見られるようになったよ。
俺は奈緒に前みたいにしっかり顔を上げて生きて欲しかったんだ。
だからそのために力を貸したいと思った。
思った以上に傷は深くて、奈緒が元気を取り戻す前に、俺が奈緒を好きになった。
思ってもいないことがい起きるんだよな。
『感情』ってヤツは思った以上に厄介だ。
で、お前はどうしたい?」
「俺は、やっぱり奈緒を諦められません。
今でも好きです。
先輩と付き合っていると知っても気持ちは変わりません。
自分勝手で奈緒を傷つけた罰かもしれません。
奈緒は、待っていてくれる・・なんて思ったりして。
俺は自分勝手な自分がつくづく嫌になります。」
「奈緒はどんな時も辛そうな顔を見せない。
でも俺は知っていた。
普通にしていることでどうにか自分を守っているということ。
だから眠れなくなるんだ。
俺のところに来ると奈緒はいつも眠っていたよ。」
「それはどうしてですか?
先輩のところに何があるんですか?」
「多分、その思いを理解してくれそうだったからかな?
お前を失くして奈緒の気持ちは行き場が無くなった。
このまま好きでいることは、お前を苦しめると思ったんだろう。
お前は、知らないだろ?
好きな相手に理由も告げられず『別れてくれ』そう言われて行き場のなくなった心
がどんなだか。
だから奈緒に言ったんだ。
『俺を好きになればいい』ってな。」
「それは、奈緒の俺への気持ちを先輩に向けたってことですか?
先輩、お願いします、奈緒と別れてください。
もう一度やり直したいんです。
先輩は奈緒でなくてもいいんでしょ?
でも俺は、奈緒でなきゃダメなんです。
奈緒以外は考えられません。」
優斗は一気に思いを吐き出した。
「俺がお前以上に奈緒でなきゃダメだと言ったらどうする?
俺たちは付き合ってるんだ。
そんな軽い気持ちで奈緒と一緒にいるわけじゃない。」
強い口調で言うわけでもないのに、その言葉が優斗にのしかかる。
優斗は次の言葉を何も口に出来ない。


