本日の取り組みから。
大関琴櫻に若隆景が挑んだ一番。
若隆景が先に左前みつを掴んで得意の形を作り、右半身になった琴櫻も右で下手を探る。
しかし手が掛かったのは結び目で、若隆景の攻勢を右から振って凌ぐと、結び目がほどけた。
左上手の取れない琴櫻には右が命綱で、依然掴み続ける。
今すぐ廻しが外れる惨事にはならない形だが、少し動きが止まったところで行司が止めた。
開始早々ではあったが、これは当然止めるべきで、伊之助の素早い判断は正しい。
ただ、この時点で筆者にひとつの疑問が浮かんだ。再開後、琴櫻の右手をどうするのか?
流れの中で深い下手を取ろうとして、意図せず結び目を掴んでしまうことは多々ある。
掴んだ力士も自覚はあるだろうが、だからと言ってすぐ手放すほどの正直者はなかなかいない。
動きながら廻しを取り直すのは困難なので、そのまま続行することが多い。
ちなみに、前縦みつ(前袋)を掴むには禁じ手であり反則負けとなるが、後ろ縦みつや結び目を掴むのは反則ではあるが負けにはならない。行司に離しなさいと注意されるだけで、勝負に影響しても物言いがついたのは見たことがない。
(参考)協会公式HP 大相撲クイズ
https://www.sumo.or.jp/Entertainment/quiz/1245
ただ、今回は廻し待ったがかかった。
廻しを結び直すため、一度琴櫻に手を離させ、行司が結び直したはいいが、さあどうしたものか。
廻し待ったは、足の位置を動かさず、廻しの位置も元通りで再開しなければならない。
しかし、元通り結び目を掴み直させるのもおかしい。是正すべき反則状態に戻すわけにはいかない。
そもそも結び直してしまったので、同じ状態は維持できず、より深い廻しを取らせることになる。
では廻しから手を離した状態にされるのか。ちょっと気の毒だが、そもそも取ってはいけない結び目だったので仕方ないか。
と思いきや、正面の審判長に確認しつつ、伊之助は琴櫻が伸びた結び目を持っていた位置で、右下手廻しを取らせた。
これは意外だった。
動きの中で行司に注意された場合は、結び目から手を離して廻しを取り直さないといけないが、インプレー中なので相手も大人しく取らせるわけはない。離してくれた隙に腰を振ったりして抵抗するだろう。取り直した状態で再開するのは、琴櫻に利を与えるように思えた。
どちらにしても原状回復はできないケースだが、それなら離した状態で再開するのがフェアではないだろうか。取ってもいない下手に安全に持ち替えさせる方が不自然なのではと感じた。
ましてや長身の琴櫻に小兵の若隆景。長身力士に下手を取られるのは上手を許す以上に苦しいと言われる。死活問題だ。ところが、再開後も若隆景の攻勢は続き、粘った琴櫻もついに土俵を割った。
ラッキーを活かせないとは情けないと思ったが、よく見れば再開後に取らされていた右下手は一枚廻し。中途半端な深さの下手一枚では頭をつけてのしつこい攻めを防ぎきれなかった。まだ結び目の方が力が入っただろうか。不満を押し殺したような琴櫻の表情は、そのためかもしれない。
原状通りの再開が叶わないとなった以上、泥縄と言われようと何らかの形にして再開しないといけない。
そこで、取っていなかった廻しを与える。ただし一枚廻しとする。そういう折衷案なのかあらかじめ取り決めがあってマニュアル通りなのかは分からないが、なかなかいい落とし所だったかもしれない。
世評を聞いてみたいところだが、早速取り上げたいくつかの記事ではなんとも触れられていなかった。