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三代目WEB桟敷

力士分析などを行う相撲研究サイト「大相撲パラサイト」のブログです。

初場所、幕内は物言いのつく接戦が目立つ。

 

熱戦は歓迎されるが、微妙な判定による紛糾はつきものだ。

特に横綱の相撲は、判定結果が大きな話題になった。 大の里に足取りを仕掛けた宇良と、豊昇龍の小手投げを返した伯乃富士。共に横綱がわずかに先に手をつきながら、協議の結果いずれも同体。取り直しは共に横綱が圧倒したが、その後の乱調を予感させる危うい相撲だった。

 

この2番を改めて振り返り、勝負判定の是非と筆者の見解を述べておきたい。

 

 

 

3日目 宇良ー大の里

特に宇良は勝っていたのではないかという批判の声が多かった。

 

この相撲は、大の里がうるさい宇良を懐に入らせずに突き放して出たが、引いて呼び込んだが、反撃をうまくいなしてかわした。だが、攻守の入れ替わりは宇良の見せ場。大の里がつけ込んで両手で突こうとするのを屈んで左にかわし、切り株でも引っこ抜くかのように目の前にあった右足を持ち上げた。奇策に意表をつかれた横綱は重心を失い、左足も流れて前のめりに両手から落ちた。一方の宇良も足を持ち上げた反動で後方にのけぞって両膝を折り畳むように尻から落ちたが、横綱が転ぶのを視野に入れつつ倒れたためか、よっしゃとばかり反動で起き上がった。勝ちを確信したようでもあった。

 

横綱が飛んだ。宇良は後ろ向きに崩れた。リアルスピードではわからない。

スローが流れると、大の里の両手が早くつくのが目立つ。一方の宇良、足を取っていたのは一瞬で、あとは反動で自ら後ろ向きに倒れていく。大の里は前方に飛んでいるので、死に体とみなされるのは両足裏返ったりした時くらい。それよりも早く手をついているので、手をついた瞬間が判定基準。その瞬間、後方に不可逆な落下に入っている。膝のバネを使っているように見え、反り技が得意なのでこんな倒れ方でも技を仕掛けられそうだが、まわしを持っているわけでもないから「宇良なら体は生きている」というのは無理があるだろう。

 

では先に宇良の体がなくなっているか?足取りの手が離れて後方に倒れ出した時点を死に体というならそうだが、技を仕掛けた延長で後方に倒れているし、早々に死に体と判定するのも違和感がある。総合的に判断すると、取り直しの判定は少なくとも誤審というほどの不可解さはないだろう。

 

 

7日目 豊昇龍ー伯乃富士

強烈に右で張った豊昇龍、しかし、得意の左を深く差したのは伯乃富士。肘を張り、廻しを許さず寄り進む。苦しい体勢の豊昇龍は、右で抱えて下がりながら右で足を跳ね上げ、膝に不安のある左足一本で小手投げを打つ。一瞬浮き上がった伯乃富士だが、右足で着地して掬い投げを返す。両者の突っ張った軸足が土俵から離れ、逆さまに落ちて裏返りながら体が分かれた。正面からの映像で見ていて、タイミング的には同体と直感した。

スロー映像を見ると、両者が顔から落ちていく中で、豊昇龍の左手が明らかに先についた。自らついたと言える。「かばい手」か?いや、両者の体の位置からして、相手が下敷きになる可能性はなく、かばったとは言えない。我慢しきれなかった横綱の負けか。

 

ところが、土俵下からの映像を見ると違う景色が見える。手つきとほぼ同時に伯乃富士の軸足が土俵から剥がれている。両足が離れて逆さまに落ちているなら、この瞬間に「死に体」だ。

 

判定結果は同体。審判団のコメントを見ても、上記と全く同じ見解だった。納得。では、豊昇龍が手をついていなかったら?この理屈から言えば勝っていたことになるが、豊昇龍の足も直後に浮いていたはずだから、やっぱり同体という判定になったかもしれない。

 

 

 

おさらい

 

死に体(土俵の外に出たり足裏以外が地面についたりはしていないが、体勢回復が不可能で負けとみなされる状態)

・前方や、真下に頭から倒れていくときは、両足が返って場合

・後方に倒れていくときは、両足が浮いた場合、または両足ついていても尻が下がって不可逆的に落ちている場合

・土俵を飛び出すときは、両足が浮いて自力で戻れなくなった場合、相手にしがみついているだけの場合

 

かばい手(先に手をついても負けにならない)

・自分が倒れると相手を押し潰す形になる場合

・重ね餅や、投げた相手が足元に転がりそうな場合。投げの打ち合いでは適用されない。