十一日目
全勝髙安を、1敗の若隆景が止めた。
番付こそ関脇と平幕中位だが、かたや元大関、こなた三役2場所目。キャリアには大差あるが、重鎮は40キロ軽い新鋭に頭からかまして行った。
が、この謙虚な戦術はあまり効果なく、低く入らせはしなかったが、自然な角度で当たってきた相手を圧倒とはいかず、続く突き押しに出足を伴わせることは出来なかった。
そうなると、おっつけ名人の新関脇のフィールド。あてがって右差し、左も絞り上げるようにして二本差し。これでは腰の重い元大関と雖も、抱え込むことも出来ず、必殺突き落としを仕掛ける隙もなかった。全勝が消えた。
もう一人の1敗琴ノ若、心境著しい若手は高校の1年先輩にあたる大関貴景勝に挑戦、立ち合い張り差し気味に右へ動いていなす形に。泳いだ先輩をすかさず追撃したが、土俵際の突き落としに見事にハマって横転。張り手にか変化気味の立ち合いにか、ご機嫌斜めで引き上げる貴景勝が、花道奥の金網に拳をぶつけた。
十二日目
翌日に琴ノ若が挑むは、首位に並んだ若隆景。差されはしたが、胸が合ったので左で極め上げて巨体にモノ言わせて、と思いきや、相手はもはや軽量力士にあらず。力技に起こされることなく、下手を離さず正面から寄り切ってしまった。これで琴ノ若3敗に後退。
結び前、番付順なら千秋楽結びに組まれるべき正代-貴景勝の角番大関対決が早々に組まれた。上位対決が飛ばされる事態が続いており、ついに審判部も手を打ってきた。だが、昨日角番を脱出した貴景勝は、絶体絶命から息を吹き返してきた正代の勢いの前に簡単に組まれてあっさり寄り切られ、優勝争いから脱落。正代6連勝で脱出まであと一つ。結果論ながら、なんとなく興醒めさせる間の悪い取組となった。
そして結び、1敗高安が2敗の御嶽海との対決。1年前の3月同様、首位に立ちながら一つの黒星からガタガタと崩れてしまうのかという雑音も耳に入っていただろう。
しかし、今場所は「不動心」。前日から一転、胸で当たって右をドンと差し込んだ。両脇固めた相手を右四つ左上手に組み止める。相手のスピードを封じれば脅威は薄れる。うまさはあるが腰の高い相手なら与し易い。慌てず攻めの形を整えようとすると、相手の方が焦って巻き替えようとする。そこを突いて寄ると、御嶽海残す腰なし。元大関が新大関に貫禄勝ち。
1敗の2人がそれぞれ2敗力士を退け、残り3日で後続に2差。直接対決も13日目の若隆景-御嶽海戦だけとあって、普通なら9割がた優勝争いは2人に絞られたと言って良いだろう。
不気味なのは崖っぷちで覚醒した正代と、角番からも優勝争いからも?解放された貴景勝。1敗の両者との対戦を残しており、易々とは通してくれないだろう。成績は悪くとも意地を見せて存在感を示したい両大関がキーを握る。
もちろん御嶽海ら3敗勢も両大関戦を残しており、条件は同じ。ならばやはり二つの差は大きく、若隆景、高安、一騎討ち。どちらがより勝ち抜くか。或いは決定戦で再戦か。