どういうわけか、波乱続きの場所前。そのいくつかを挙げてみよう。
1.栃東引退
2.稽古場かわいがり騒動
3.旭天鵬交通事故で処分、十両落ち
本来場所を盛り上げるべき白鵬の綱取りがネガティブな話題で霞んでしまった。
1.
大関30場所、優勝3回を誇る栃東が引退を発表。先場所の途中休場当時から噂されていた「最悪の結果」が現実になってしまった。脳へのダメージを考えると、頭で相手の攻めを受け止める栃東の相撲は危険極まりない。ヒザをはじめ満身創痍の体を考えても、引退はやむなし。
大関に2度復帰したことが特筆される。いいとも悪いとも言いがたい記録だが、不屈の精神が表れた語り継がれるユニークなレコードだ。新大関Vを含む優勝3回は歴代大関上位クラス。羽黒山以来の各段全制覇も。休場、角番、そして変化の多さがマイナスだが、現代に希少な技能派大関であることを考慮せずとも名大関の一人として数えられる。
同時に「51組」の退場が進む予兆ではないかと心配になってきた。
2.
朝青龍が稽古場で新三役の豊ノ島を「かわいがり」、挙句の果てに足首を潰してしまった。稽古場での怪我は仕方ないが、無用な荒技で期待の星を壊されたとあって、師匠時津風は大激怒。一時、時津風一門への出入りを禁止することを示唆するなど大騒ぎになった。また、旭南海に荒技を仕掛けた白鵬に、やはり師匠の大島親方が意見するシーンもあった。
ただでさえマスコミが騒ぎそうな事件に、当事者の時津風親方の発言が事を大きくしてしまったが、これを批判するよりも、評価したい。番付が支配する角界において一門の総帥とは言え「元小結」が「大横綱」に強硬な態度に出ることはなかなか勇気がいることだろう。
鍛えるつもりの稽古ならともかく、横綱大関による稽古場での「恐怖政治」による犠牲者はファンにとっても協会にとっても損失。師匠が守らず、誰が力士を守れようか。
皮肉にも夏場所初日結びの一番は、朝青龍―豊ノ島。
3.
交通事故は「業務上過失致傷」という刑法犯。もちろん厳しく処罰されるべきだが、事実上1場所の出場停止は重過ぎないか。昨年の露鵬が3日間の出場停止で、勝ち越したことを考えると、平成11年以来幕内で活躍した功労者を十両に落としてしまうのは、やや天秤のバランスが崩れているといわざるを得ない。
関取の休場は、この旭天鵬と、腰痛悪化の霜鳥。前述2.で取り上げた被害力士の所属部屋から、関係ないところで休場者が出る偶然も皮肉である。
マイナスな話題で昇進ムードは盛り上がるはずもなく、第一子誕生しか白鵬を後押しするものはない。地力での連覇が要求されるような雰囲気だ。