大相撲でNHK相撲解説者の舞の海さん(元小結)の発言が、少々気になっています。
長年、相撲中継で解説を務めている北の富士さん(元横綱)が、先場所に続いて今場所も「都合」で休んでおり、初日の正面解説席に舞の海さんが座りました。
そこで舞の海さんは、大関昇進は柔軟にやるべきだと、しきりに強調しました。
夏場所の四人の関脇陣はいずれも力を蓄えており、「そのまま大関に繰り上げてもいいんじゃないか」と。
現在、大関になるには、三役、関脇で三場所33勝以上の成績が必要とされています。しかしこれも、規則で明確な基準と定めているわけではありません。
舞の海さんはこれまでも、先輩の北の富士さんが計28勝で大関に上がったことをよく取り上げてきました。
この日も北の富士さんのケースを引き合いに、30勝まで達しなくても、将来性を見越し、柔軟性を持って昇進させてもいいのではないかというわけです。
3場所33勝以上なんて厳格にやると、実際昇進した時には力士のピークが過ぎ、体力を消耗してしまうから、だそうです。
いやあ、その心配も、わからなくはありません。横綱にあがったとたん、エネルギー切れとなった力士も、少なからずいましたからね。
ただ、ちょっと考える必要は、あります。
将来性というのを、誰が見定めるかということです。〝彼は将来きっと伸びるぜ〟と、誰が保障するのでしょうか。
幕内で優勝経験が一度もない大関を「まれにみる逸材で将来性の多さが買える」「スケールの大きい、素晴らしい素質、稽古で鍛えればダイヤモンドになれる」…
過去、横綱審議委員会の方々は22歳の青年をここまで持ち上げ、横綱に推薦しました。第60代横綱の双羽黒はこうして誕生しました。
ところが彼は、昇進した後、横綱らしい成績をほとんど残せないまま、チャンコのことで師匠とケンカすると、さっさと廃業して、相撲界を去ってしまったのは有名な話です。
以来、横審も相撲協会も昇進には慎重になりました。
大関昇進は、舞の海さんも言うように、横綱昇進のような基準もあるわけではありません。
かといって〝こいつは将来性が見込める〟と、裏付けも保障もないままに昇進が横行するようになったら、大相撲は一体どうなりますか。双羽黒事件は過去のことですか。
ルールあってこそ成り立つのがスポーツです。
〝相撲は日本の伝統文化。基準は厳格でなくてもいい〟という説は、ちょっと乱暴すぎるような気もするのですが。
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