4場所ぶりに出場した横綱照ノ富士が、初日を勝利で飾った。
相手は元大関の正代。大関を陥落したとはいえ、このところ力を取り戻しており、今場所は小結。横綱の復調を探るのには格好の相手だ。
立ち合い、横綱がぐいっと踏み込んだが、正代が下から起こすようにして反撃。押し込まれた横綱が後退しながら、右からすくって起こし、転がした。
まわしも取れず、一直線とはいかなかったが、復調の一端を感じさせた初日だった。
一年6場所の半分を全休。相撲勘を取り戻すのには苦労するはずだ。場所前には体重の調整もうまく行かなったようだし、膝の古傷も抱えている。
それでも、出場すると決めた以上、やるしかない。
力士にとっての〝華(はな)〟は、何といっても現役で相撲を取るときだ。
引退して指導者の道を歩むのも、確かに一つの生き方だ。まるで違った道を選び、充実した人生を送っている人もいる。
大関で高給を得ていた時代から一転、無給(序二段)まで転落。そこからまた這い上がって、今度は横綱という頂点をきわめる。照ノ富士が指導する側になったら、それはそれで卓越した指導者になる可能性は十分ある。
優れた指導者は、勝利の経験だけでなく、失敗や挫折、敗北なども体験してきた人のほうが向いていると、勝手に思っている(スポーツ界には、自分の狭い経験だけにしがみついている、情けない人も少なくないが…)。
ただ、どうしても相撲で生きようと思うなら、〝華〟はやはり、土俵の上で咲かせるしかない。
場所前のインタビューで照ノ富士は「一日一日が勝負、それに全力を挙げる」と、改めて語っていた。
そう、まだまだ過去を振り返るなど、早すぎる。
とにかく土俵に上がり続け、衰え、たとえ簡単に勝てなくなったとしても、あがき、可能性を追い続ける姿を見たい。それが、個人的な願いだ。
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霧馬山の大関なるか。貴景勝は大関陥落の危機を脱出できるか。4関脇から誰が一歩抜け出すか。注目の若手力士たちの活躍は…。
見どころの多い夏場所になりそうだ。
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