群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)という言葉を久しぶりに聞いた。
各地で活躍する英雄が激しい勢力争いをするという意味だ。
昔の戦国時代の話のようにも思っていたが、8日初日を迎えた初場所の相撲を見ていると、その言葉がどうも的外れでもないような気もしてきた。
横綱照ノ富士が休場、大関陣も貴景勝ただ一人。番付上はもの足りない感じは否めない。が、それを補って余りある力を備えた4関脇4小結がずらり。初日から激しい相撲を繰り広げた。
この日注目したのは、兄弟で同時三役となった関脇若隆景、小結若元春の相撲だ。
弟の若隆景は、小結に返り咲いた明生と対戦。
ガツンと当たって右からおっつけて右で上手を取ると、すばやくまわしをぐいと引きつけて明生の腰を浮かせ、一気に寄り立てた。相撲巧者の明生に反撃のチャンスも与えなかった。
初の小結昇進を引き寄せた兄の若元春は、結びの一番で大関貴景勝に挑んだ。
立ち合い、頭からあたって踏み込み、右から押し込む。貴景勝にいなされて泳ぎ、新小結初勝利とはならなかったが、大関得意の突き押しを一方的に許さない相撲は光った。
若隆景は昨年、横綱、大関陣を抑えて年間最多勝を獲得。今年の目標として関脇のもう一つ上の大関をめざすと、はっきり語る。実力は十分、口数少ない若隆景が、意欲も示した。
兄の三役昇進は、これ以上ない刺激と励みになっているかもしれない。
注目された〝初日に兄弟同時勝利〟とはならなかったが、二人が活躍すれば、土俵はさらに興味深い。
横綱不在の場所で、他の力士の刺激材料にもなっていきそうだ。