横綱照ノ富士のけがが、心配だ。
膝の悪化で秋場所10日目から途中休場していた。
「両変形性膝関節症」という診断で、秋場所後に両膝を手術したものの、今場所前には四股さえ踏めなかったという。復帰には時間がかかりそうだ。
照ノ富士は以前からこの故障に悩まされてきた。しかし大関から序二段まで陥落し、血のにじむ努力の末に再び大関、そして以前はたどり着けなかった最高位の横綱まで駆け上がった。
最近の土俵からは、すさまじい意気込みが伝わってきた。それが、結果としてけがを悪化させてしまったということはないだろうか。
ひざのけがは力士の職業病だ。
琴欧洲(現鳴戸親方)、把瑠都(ばると)など元大関も、最高位を目のまえにしながら、膝のけがでその目標を断たれた。
強烈な引きつけ、投げで幕内優勝1回、2006年初場所に大関昇進を遂げたが、特に右ひざが悪化して大関を陥落、復帰ならないまま、引退に追い込まれた。
バルト三国の一つ、エストニア出身初の力士として注目された把瑠都は、横綱間違いなしとまでいわれた。しかしひざのけがに苦しみ、2013年9月場所で引退している。
横綱貴乃花引退の原因も、膝の故障だった。何度かフランスに渡って、膝治療の世界的権威と云われた医師に頼っているが、回復には至らなかった。
こうしてみると、力士のひざの故障は、大変な難物だ。
横綱不在の土俵を、誰が埋めるか。いまのところ後に続く力士が、さっとは浮かんでこない。横綱と並ぶ相撲界の看板の大関は、勝ち越すのに四苦八苦で、何とも心もとない。
5日目日の土俵でみせた高安の気迫、逆転のかわず掛けで勝った豊昇龍の相撲のように、すべての力士が、気迫あふれた、面白い相撲で盛り上げていく。横綱不在の場所はそれで埋めていくしかない。
その中で、後に続く力士が育っていくのではないか。