夢と期待に弾けそうになりながら、
顔を出したところは、
埃と、喧騒に包まれた場所でした。
雨の日は、どろどろの水が押し寄せ、
晴れた日には、排水溝から悪臭が立ち上り、
宿根の草たちは、
「冬の初めには皆、役所の職員に、刈り取られるんだぜ。」
そんな恐ろしい話を聞かされて、
ずっと震えていました。
でも夏は素敵でした。何もかも忘れて、仲間に呼びかけました。
勿論返事はありませんでした。
お前は、こんなところに咲く花じゃないからな。
そうなのかもしれない。
でも、僕は此処にいて、
花を咲かせて、種になって、飛び立つんだ。
きっと、
大空に向かって旅立つことを信じていました。
でも、種は、僕ではありませんでした。
冬の始まりに、
宿根の草達が言っていたように雑草刈りが始まりました。
地面すれすれに切られる草たち、中には根こそぎ引き抜かれてしまう草もあります。
僕は、
もうくたくたでした。
刈り払い機の振動で、種たちはみんな飛んでいきました。
きっといいお花畑に行くんだよ!
僕は、
僕には、
此処が素敵なお花畑なんだよ。
みんな、
忘れないでおくれよ。
草刈は、
路肩をきれいにして、どんどん進んでゆくのでした。
いろんな場所に生まれた者たちに。
おわり