少し前にある方からメッセージをいただいた。その方はJW組織から抜け出したものの、孤独や罪悪感など複雑な感情を味わっている最中で、なかなか前向きになれないということだった。また、サミーさんが今とても元気なことは分かるのですが、元気になる前がどういった状態だったのかできれば書いて欲しい、そしてどうやって立ち直ったのかも。それを知ることで逆に力をもらえるように思う、というような内容でもありました。
それで私がJWとしての活動をやめた直後、私が闇の間(笑)と呼んでいる時期のことを書いてみたいと思います。こんな辛い時期があっても、やがて元気になれるという誰かの励みになれたら。
闇の間の状態
・集会や奉仕に行かないことへの罪悪感
・霊的な活動をしていない自分はダメな人間だという強い思い
・妻が集会に行っている間、家で一人でいることへの罪の意識
・かつて集会に行っていた時間になると精神不安になり吐き気や頭痛がする
・町で奉仕している人たちを見ると強まる罪悪感
・自分の人生は無駄だったのではないかという思いに囚われる
・家族や兄弟や友人と疎遠になることからくる孤独感
・不眠
・悪夢
・時々原因不明の吐き気やめまい、涙が止まらず自暴自棄になるなどの情緒不安
・聖書や出版物への過度の拒否反応
・信じるものや生きがいを失ったことの喪失感
・今後の人生への絶望
・死にたいという気持ち
・親を悲しませているということへの申し訳なさ
・何をやってもむなしく、喜べない
・雷が鳴ると神に撃たれるのではないかという恐怖感
など
ざっとこんな感じでしょうか。
JWを辞めた直後から4,5年はこんな調子が続きましたね。病院に行くとうつ病と診断され薬を飲むことになりそうなので、それが嫌で病院には行きませんでしたが、行けばきっとうつ病と言われたことでしょう。
これがカルト宗教を辞めた人の誰もが通る辛い後遺症なんだと思います。
私の場合はそれに加えて、開拓者や長老として組織の拡大に貢献してしまったという罪悪感も強いものがありました。多くの人を組織に引き入れてしまいましたし、組織に留まるように励ましてもきました。無知とはいえ、多くの人の人生を狂わす片棒を担いでしまったことの罪深さはこれからも感じながら生きていくのだと思います。
どうやって回復していったのかは長くなりそうなので、詳しくはまた別の記事で書きたいと思いますが、簡単に言うと私がやったことはとにかく色々な情報を取り入れることでした。他の宗教書、JWを批判している書物、哲学、心理学、自己啓発など、JWが禁止していた資料を読み漁りました。また、役立つと思えるセミナーなどにも出かけて行って、とにかくJWの教えしか知らなかった私の脳にたくさんの情報の波を送り続けました。
初めはまだJW思想に囚われていたので、受けた情報を否定したり受け入れられないと感じる時もありましたし混乱もしました。でも徐々に受け入れられるようになりましたし、情報の正誤の見極めもできるようになっていきました。気に入った言葉を書き留めたり、自分のためになる考え方を実践する努力も払いました。
中でもアドラー心理学はとても役立ちました。ちょっと過激な考え方でもあるのですが、私の場合は回復に非常に役立ちました。
また、新たに知り合ったお友達の優しさに何度も助けられました。わたしたちがサタンの世と毛嫌いし、避けていたこの世界は優しさで溢れていました。カルト宗教に40手前までどっぷり浸かっていて世間知らずな、周りから見たらかなり変わったおじさんだったと思います(笑)それでもみんなが優しく受け入れてくれました。
家に呼んでくれたり、一緒にキャンプに連れて行ってくれたり、飲み歩いたり。きっと、こいつ何かちょっと変わってるなーってみんな思ってたと思うんです(笑)それでも優しかったです。きっと色んな人に迷惑をかけたりしてきたんだと思います。でも、そういった優しい人たちのおかげでかなり回復できたんだと思います。
どんな過去があってもそれが自分の人生だったのだと受け入れていくこと。親のせいや組織のせいにしたところで、何も終わらないし何も始まらない。自分の過去に不平や不満を言う暇があるのなら、未来に希望と夢を語ろうと決意して歩んできました。
JWのようなカルト宗教の家庭に育つということは、簡単に言うと機能不全家庭に育つということだと思います。子どもが子どもとして扱われない、純粋な親の愛情を味わえない、しつけと称した虐待を日常的に受けるなど。子どもの人格形成に多大な悪影響を与えることは間違いありません。
でも、そういう家庭に育ったこと、カルト宗教の子どもとして生まれたことを、もう受け入れるしかないのだと思います。それを受け入れてからすべてが始まるように思います。
カルトの影響力から立ち直るために色んな資料を読んできましたが、特に自分にとって励みになった一文をご紹介したいと思います。「カルトからの回復-心のレジリアンス-」という本の中にあった言葉です。
『自分を取り巻く世界がガラガラと音を立てて崩れ落ちていく経験をしたことはありますか?または想像することはできますか?自分が信じていた人たち、信じていた考え、信じていた生き方すべてが目の前から消え去ってしまうという経験です。大切に思っていた人が突然いなくなってしまうことだけでも、その苦しみや悲しみははかりしれません。しかし脱会者は、脱会することによって自分のまわりの人々だけではなく、それまでの自分自身についても一度失ってしまうのです。』
とても思いやりのある言葉だと思いませんか?この一文を読んだ時、涙が止まりませんでした。自分の心をこんなにも分かってくれる人がいて、それを言語化してくれていることを嬉しく感じました。しかも自らがカルト宗教に関わっていた訳ではないのにです。力になってくれる人は世の中にいるということ、理解しようとしてくれる人もいるということを知って、力強く感じました。
確かにカルトを抜けることで、わたしたちは自分自身を失いましたよね。そしてもう一度宗教を抜きにした自分、本当の自分、変な色のついていない自分自身を取り戻すことが必要だった訳です。その過程はとても苦しくて、あきらめてしまいそうになりますが、それでも何とか踏みとどまっていくと必ず光が見えてきます。
闇に居た時は私自身も、ずっとこういう状態が続くと錯覚していました。しかしそんなことはなく、少しずつ光が見えて、そしてそれがだんだんと大きくなって、やがて太陽の下に出ることができるようになりました。だから今闇の間で苦しんでいる方も、必ず光が訪れるようになると希望を持って頂ければと思います。