先日「ビブリオバトル」なるものの見物に行って来ました。
発表者がそれぞれ一冊本を持ちより、5分間その本のアピールを行い、投票で最終的に得点の高かった本がチャンプ本になる、というイベントです。
別に、強制でもなく、授業の一環でもなく、金銭が発生するわけでもないのに、自分のおすすめ本を主張したいがために、わざわざ集まった参加者。そして、発表もしないのに、わざわざ見に行った観戦者――
いや、何も言うまい。
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・井上荒野『あなたの獣』(08’角川書店)
・『極上掌篇小説』(06’角川書店)
・平山夢明『ミサイルマン 平山夢明短編集』(07’光文社)
・大崎梢『平台がおまちかね』(08’創元クライム・クラブ)
・皆川博子『海賊女王 上・下』(13’光文社)
・井上荒野『あなたの獣』(08’角川書店)
――仕事にも、妻の妊娠にも、どこか他人事のようにしかかかわれない僕。僕はどんな子供時代を過ごし、どんな女たちとかかわってきたのか。小学生の僕を怯えさせた音楽の清家先生、ストーカーまがいに追い求めた璃子、一度捨てたのに再び関係することになった昌、行きずりに知り合ったもうひとりの璃子、そして僕の骨を保管する女…。女を苛立たせながら女が途切れることのない櫻田哲生の不穏にして幸福な生涯。――
感心しながら読みました。文章が巧みで、書かれている内容はなんてことない日常なのに、それがとても特別な事であるように切り出して描写しています。
話は連作短編で、時系列は繋がってはいないけど、どれもが櫻田哲生という男の人生の一部。
結婚したり離婚したり、ストーカーしたり浮気したり、といった起伏に富んだ出来事が起きているのに、主人公の視点はどこか別のものを見ているようで、そのある種の不条理感が独特の、純文学的な空気を作っているのかと思います。
面白いことは書いていないけれど、読んでいるとなにかはっとするものがありました。
・『極上掌篇小説』(06’角川書店)
――現代の名手30人が、両手でそっとすくい上げた宇宙を横切る物語のきらめき-。原稿用紙わずか10枚に、こまやかな物語のひだを情感ゆたかに謳いあげる、所要時間各数分、珠玉の現代文学・各駅停車の旅。――
高橋源一郎に惹かれて読みました。『凍りつく』は短編らしい、そして高橋源一郎らしいオチで思わず苦笑が出ました。
30人の作家がジャンル不問で短編を寄せているので、色々な話を楽しみたい人におすすめです。
ただ、明るい話もありながら、この本自体の印象は何故か暗いです。
浮世離れした話ではなく、現実の延長のような作品が多いからかも知れません。
個人的には様々な話を読めてお得、というよりも、読んでも読んでも次の話が出てきて、頻繁に頭を切り替えなければならないので疲れました。
時間のあるときに、ゆっくり読むべき本だと思います。
・平山夢明『ミサイルマン 平山夢明短編集』(07’光文社)
――『独白するユニバーサル横メルカトル』の衝撃と興奮、よみがえる!日本推理作家協会賞受賞。「このミステリーがすごい!」1位。2006年の読書界を席巻した異形のマエストロ・平山夢明、再臨。凄まじくも美しく屹立する、壮絶な文学的冒険の成果を見よ。――
平山夢明の作品は始めて読みましたが、思っていた通りの世界観というか……グロテスクあり、悪徳あり、エロチシズムあり。
インパクトは凄く強い作品集です。
始めの『テロルの創世』や『それでもお前は俺のハニー』は軽めの、どちらかといえば明るい話で面白く読めます。むしろ「それでも~」は明るすぎてこの中では浮いている感すらありました。『ある彼岸の接近』は、クトゥルフ神話風です。
表題作の『ミサイルマン』は確かに面白いし妙に頭に残る作品ではあるんだけど、これを「面白い」と言ってしまうと人格疑われてしまうような……。
ピカレスクとも違うような、暴力小説というか。
テレクラで女をひっかけて、殺して生皮を剥ぐ二人の若者のスタイリッシュな生きざま。でも面白いんだよなあ。
ちょっと石田衣良っぽい? 石田衣良あんまり読んだことないけど。いめーじ。
・大崎梢『平台がおまちかね』(08’創元クライム・クラブ)
――作り手と売り場を結ぶ糸をたくさん鞄に詰め込んで、出版社の新人営業、井辻智紀は今日も本のひしめくフロアへと向かう。―でも、自社本をたくさん売ってくれた書店を訪ねたら何故か冷たくあしらわれ、文学賞の贈呈式では受賞者が会場に現れない!?他社の先輩営業マンたちにいじられつつも、波瀾万丈の日々を奮闘する井辻君の、こころがほっとあたたまるミステリ短編集第一弾。――
これこそライトで読みやすい小説ですね。推理ものではありますが謎も軽め。人の死なないほんわかミステリー。
大崎梢の作品は、『片耳うさぎ』『ねずみ石』『スノーフレーク』『キミは知らない』を読んだことがありますが、シリーズものを読んだのは初めてでした。
出版社の新人営業、井辻君(愛称ひつじ君)が、大抵は他社の営業の真柴さんと謎に取り組む連作短編です。
相棒役が決まっているわけではないので、単独で推理したり営業仲間とみんなで推理したり。
どちらかというとメインは推理ではなく、出版社や書店の日常を表に出した作品なので、ミステリー大好き! というよりかは、出版社ってこういう仕事してるんだなあと知りたい人向けです。
どうやら作者の他のシリーズとも関連しているっぽいのですが、そちらは読んでいないので少し残念でした。
万人におすすめ出来る一冊です。
・皆川博子『海賊女王 上・下』(13’光文社)
――十六世紀。スコットランドの高地に牧童として生まれたアラン・ジョスリンは、十七歳で戦士集団に加わり、アイルランドに渡る。そこで出会ったのは、オマリーの氏族の猛々しくも魅力的な男たちと、赤い縮れ毛を短く切った、十歳の少女グローニャ。闘いと航海に明け暮れる、波瀾の日々の幕開けだった―。――
アイルランドの氏族(クラン)オマリーの女族長グローニャと、彼女に終生仕え続けたアランを中心に、イングランドとアイルランドの確執、アイルランドでのクラン同士の争い、イングランドでの貴族同士の闘争、グローニャとエリザベス女王という二人の女性の生きざま、を描いた壮大な小説です。
始めは、1593年のイングランドから。60歳を迎えるエリザベス女王。矮軀の枢密院顧問官、ロバート・セシルと、同じく枢密院顧問官のエセックス伯ロバート・デヴロー。若い二人はライバル関係にあり、セシルはその明晰さで女王に信頼され、エセックス伯はその美貌で女王の愛人として寵愛を受けている。
そんな折、アイルランドのキルケニーを領地とするオーモンド伯から書状が届く。それは、アイルランドの悪名高い女海賊、グラニュエル・オマリーに関する書状だった――
要約するとそんな感じが序章です。
登場人物も多く、地名も数多く出てくるし、ペストが猛威をふるう中、陰謀が張り巡らされまくっているイングランド情勢でした。
時を遡って1543年。スコットランドから来た17歳のアランは、15歳の弟ロイと共に、戦士集団(ガログラス)に入る。そこでオマリーの族長の娘、10歳のグローニャに従者として引き抜かれ、以降オマリーの男として生きることになる。
弟のロイはガログラスとして別々に生きることになり、オマリーと同盟を結ぶクラン・オフラハティに行く。
アランはグローニャの従者として、族長のドゥダラや戦士マクティーリャ、キャンベル隊長や、同じく従者の大男オシーンと共に成長していく。
グローニャは15歳でオフラハティの族長の息子、ドナルと結婚するが、自身が誇り高い戦士であるグローニャは、城で夫の帰りを待つだけには耐えられず、自身の力で船団を作り上げ独自で海賊行為を行う。
女性蔑視の周囲に屈せず、女性として「海賊女王」となっていくグローニャ。それにつき従うアラン。
その合間にも、グローニャは子供を産み、クラン・コンロイの族長の二男ブローナンとグローニャとの間にも子供を設け、アランの弟ロイはドナルとその従者に殺され、アランは復讐を果たし、船を略奪して船団は大きくなり部下も増え、ドナルは戦死し、亡くなったドゥダラに変わりグローニャが族長となり、謎の男トイリーは謎のまま死に、再婚したグローニャは三男を産み、大きくなった三男ティボットはイングランドに人質として取られる。
そして時は1593年。60歳となったグローニャは、書状を出しティボットの請願の為にイングランドへ赴く。
そこで初めて出会うグローニャとエリザベス女王。戦士として戦い、荒波に揉まれたくましく生きてきたグローニャと、白粉で顔を塗り固めきらびやかなドレスに身を包んだエリザベスとの邂逅。
意外な人物との再会や宮廷の陰謀、スパイや明かされない血筋、などが絡み合う。
世代は移り変わり、皆老いていくが、グローニャには信頼するアランとマクティーリャが付き従う。イングランドに屈さぬため、時には平気な顔で裏切り、激しく戦い、戦士として女性として母として生きたグローニャの、苛烈な人生のサーガ。
ちょっと要約するには長すぎるし複雑なのでかいつまむとこんなお話です。
読みごたえは物凄くあり、最初に付いている地図と人物一覧を見ながら読み進めました。
ただ、こんな長い話なのに、なんというか、足りない……というか、語り口がドライなので、重要なことがさらっと、出てきて流されていくんですね。あ、もう十年経ったの!? とか、え、あの人死んだの!? というのが、結構多い。
まあいちいち書いてたらキリないとは思うんですけどね、もう80歳越えておられますし。
かといってナレーション部分が多いわけでもないので、うーん、そういう書き方なんだろうなとしかいえないですけど。
でも面白い、というか為になる本です。一度読んで損はないと思います。
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それではまた、二週間後くらいに。
さようなら。
『ギュスターヴ、あなたは人間よ、人間なのよ!』