風邪引きますよ | 読書日記

読書日記

神郡が読んだ本の感想や、諸雑記を書いていくブログ。
知り合いには見せられないなあ。

よく、変化や刺激の無いことや、心地よく堕落した状態をぬるま湯と呼びます。

いい意味で使われることはほとんどなく、大抵は脱することを奨励されます。

確かにぬるま湯は気持ちいい。「気持ちいいことと戦うことは大変なことだ」と森見登美彦も『ペンギンハイウェイ』で言っていた。


しかし、何故ぬるま湯はいけないのだろう。風邪を引くからだろうか。でも一番風邪を引くのはぬるま湯から出た時ではないのだろうか。

それに、ぬるま湯がいけないのなら熱ければいいのだろうか。のぼせると思う。

では水ならいいのか。それこそ風邪を通り越して別の病気になる。


適温がそれは一番なのだろうけれど、適温ってそれはじゃあぬるま湯のことではないのだろうか。


結局、スーパー銭湯のように熱いお湯、ぬるいお湯、サウナ、水風呂、電気風呂薬湯露天風呂……と色々入ってみるのがいいよ、ということなのかもしれないな。




ということで、


・小野正嗣『獅子渡り鼻』

・金井美恵子『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』

・北村薫【編】『謎のギャラリー特別室2』

・円城塔『Self-Refarence ENGINE』


です。



・小野正嗣『獅子渡り鼻』

初めに読んだのが『森のはずれで』だった。面白く、その後『線路と母と川のまじわるところ』を読み通せなくて中断。実に正当な純文学、という印象の作家。


――入江と山に囲まれた土地を舞台に、その母の故郷を頼ってやってきた10歳の少年「尊(たける)」を主人公に、ある夏の彼の生活を描く。都会で心身不自由な兄と、男にだらしなく家に寄りつかない母と暮らしていた尊は、母の親戚に連れられ、母が大嫌いだった田舎へとやってきた。豊かな自然、素朴な人々、現実を超えた霊的な存在に触れ、尊は再生していく。児童文学、神話、近代小説、叙事詩……あらゆる形式を超えた奇蹟の物語です。
(群像2012年11月号掲載) ――


読みやすくて驚いた。面白かった、けど、面白いという表現でいいのかわからない。

田舎での日々と、田舎へ来る前の日常が交互に語られていくのだけど、とにかく、子供が虐待されるのはフィクションでも嫌だ。母にネグレクトされて、障害のある兄と二人で残されて、周囲の大人の純粋な善意だけで生きていて、と映画の『誰も知らない』を思い出した。

本文中には、どうして尊が母の親戚に連れられて田舎へやってくることになったのか、というそこの場面が書かれていないが、わざと書かないことで、何故兄も一緒ではないのか、母はどうしたのか、というところを読み手に想像させる余地があって、非常に後味が悪い想像をせざるを得ない。



・金井美恵子『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』

最近少し純文学に浸食されてきている気がする。


――物語とドレスと映画と記憶と夢に祝福された言葉の宇宙。“読む快楽・書く快楽”に充ちた前代未聞の小説。(「BOOK」データベースより) ――


最後まで読めなかった、初めて手に取る本ではなかったかな。タイトルと表紙の奇妙なコラージュ写真に惹かれたんだけど、無念。

文体が独特で、一つの話をするのにその話の中に三つくらい違う話を入れるので、千夜一夜物語みたいだった。しかも文章に途切れ目が無く、句点が少ないので今何の話をしているのかが、集中していないとすぐ分からなくなる。

ただ、描写が物凄く細かくて丁寧だし、話自体も面白かった(と思う)ので、また時間がある時にじっくり向き合ってみたい。



・北村薫【編】『謎のギャラリー特別室2』

以前『謎のギャラリー』(北村薫がアンソロジーを編む前に色々な小説を紹介・解説した本)を読んだので。1がなかったので2。


――北村薫が選ぶ傑作選集第二弾。大好評アンソロジー第2弾。クリフハンガーものから異色のラブロマンスまで、奇想天外な傑作が次から次へと繰り広げられます。まずは扉を開けてみましょう。(「BOOK」データベースより) ――


要は古今東西の「マイナーな」作品を集めた短編集です。中でもフョードル・ソログープ『光と影』とデイヴィッド・ガーネット『狐になった婦人』が印象深かった。

『光と影』は優等生の少年が影絵遊びにはまったために、その母親と共に狂っていく話。ロシア的陰鬱感がいい。

『狐になった婦人』はタイトルのままの内容。ある日急に狐になってしまった妻をどこまでも愛し抜こうとする夫の滑稽ともいえる献身が泣けて笑える。有名な毒虫になった青年ではないのだからもっと驚いても疑問に思ってもいいのに、すぐに二人(一人と一匹)で屋敷に籠って「幸福になれるはずだ」と信じて努力するとは。すごい。



・円城塔『Self-Refarence ENGINE』

ずっと探していた! 本屋でみつけてすぐ買いました。嬉しい。


――彼女のこめかみには弾丸が埋まっていて、我が家に伝わる箱は、どこかの方向に毎年一度だけ倒される。老教授の最終講義は鯰文書の謎を解き明かし、床下からは大量のフロイトが出現する。そして小さく白い可憐な靴下は異形の巨大石像へと挑みかかり、僕らは反乱を起こした時間のなか、あてのない冒険へと歩みを進める―軽々とジャンルを越境し続ける著者による驚異のデビュー作、2篇の増補を加えて待望の文庫化。(「BOOK」データベースより) ――


え? 文庫版2篇の増補? うわぁー……文庫買えばよかった。

まあいいのです。十分堪能しました。

そして相変わらずメンドクサイ文章! そしてやっぱり素敵。意味はわからないけどその意味のわからなさにごまかされてしまいたい。(byピューと吹く! ジャガー)


そのいち。時間はある日、反乱を起こしました。


「束になって歩いていた時間たちはある日、そんなことにはもううんざりだとばかり、てんで勝手な方向へ伸び始めた。」

色々な時代の、さまざまな人々が、この時間をどうにかしようと、あるいはどうしようともしないのを書いた連作短編。ストーリー的にはそんな感じ。

よくわからないので解説は出来ないが、好きだなぁ、という読後感でした。



ではまた。

さようなら。



『オマエノ、シワザ、ダタノカ!!』