真実は求められるべきものであるが、時としてそれは求めることによって負の遺産を生み出すことがある。
それはこの仕事をしているとよくわかるのだ。
ベルの音とともに扉が開く。
「すいませーん。」
女性の声だ。 俺は「どうぞ。」と言って招き入れる。
女性を椅子に座らせ、俺はテーブルを挟んだ正面に立つ。
「ではあなたのお名前と年齢、そして用件をお伝えください。」
女性は少々小声になりながら名前と年齢を言った。 初対面の人、しかも女性にいきなり年齢を言えというのはデリカシーが無いと思われるだろう。
だがしかし、仕事柄上これは仕方ないことなのだ。
なぜなら俺は探偵をしているからだ。 依頼者の個人情報は依頼の際に案外役に立つのだから 変態乙w とか言うのはやめていただきたい。
誰も言わないだろうが。
「えっと・・・小佐野真李(おさのまり) 25歳です。」
「見た目より随分年上ですね。 それで用件は?」
「はい・・・よく童顔って言われるんです。 用件は・・・浮気調査です。」
探偵といえば浮気調査。 これはよくある話。
「それでは、旦那さんに浮気をされている・・・と?」
「はい。 旦那の名前は 小佐野孝(おさのたかし) 26歳で、商社勤めをしています。 元々浮気性の男で・・・ 私も言い寄られて仕方なくと言う形でお付き合いして結婚したんですけど・・・」
この夫婦はお付き合いの期間を長く持ったのだろうか? 普通なら途中で気づくはずだが・・・
「なるほどわかりました・・・ではこちらの方でしばらく調査させていただきます。 料金はあなたに満足していただいたところでお支払いしていただいて構いませんのであしからず。」
「えっ・・・いいんですか?」
「はい。 だって、こちら、何せ無能の集まりですから、全く依頼者様のお役に立たないこともあるので。」
「えっ・・そんなにアレな探偵社だったんですかここ。」
アレって言葉を濁してきた。 事実だから否定しない。 というか俺から言ったことだった。
とは言っても探偵社の見た目にはこだわっている。 ラスベガスのBARのような雰囲気・・・並べられた瓶やアンティークの置物・・・ えっ、探偵社みたいじゃないって?
まぁ 俺の名前は日置一平(ひおきいっぺい) 俺の本職はバーのマスターなのだ。
「まぁこんなときはカクテルでもいかがですか?」
「あっいいです。 車で来てるので。」
「そ、そうですか・・・ 今度、旦那とともにここ来てくれませんか?」
「いいですけど、誘いに乗るかかどうか・・・?」
「大丈夫です。 店の名前と雰囲気だけ教えていただければ。 そして、旦那の容姿の特徴、好きなお酒の種類を教えてください。」
余談ではあるがこのバーはなかなかシックな雰囲気でイイ大人には好評なバーである。 とは言ってもここは俺の店ではなく、俺の姉の店で店のデザインなどは全て姉が行った。
とにかく、この店、よく若いカップルが来店する。 まぁじっくり飲む。 そんないい大人の男女たちにはもってこいの店だ。 旦那の小佐野孝が来ないわけ無い。
お気づきだろうか? 私の目的。 まぁそれは今夜、もしくは明日の夜になればわかること。
その日の夜。私は知り合いのものづくりの達人、目育達夫(めいくたつお)にあるものを作るよう頼んだ。 明日の夜までに届くように。 続く