Days of Summer Clancy -3ページ目

彼らが、Mのフライトをブックし終わって、インドネシアの地図で、バイクで旅をする道を確認していた。Gが、道を確認しながら、Look、こういう、地図上で曲がりくねったこの道は、タフだよ。多分3時間、マウンテンバイクを、押し続けるな。ふぅ。とか言っている。道中は、お腹がすくだろうな。食べ物も、水も限られているし、現地の水や食べ物で、病気になる確率だって、高いよね。なんでそんなところに、行くんだろう。インドネシアのジャングルは、虎だって、出るんだって。それでも行くんだね。


私は、よし、私も、ここまでだ、と思って、「よし、じゃあ、私は行くね!」と言った。それに対して、Mはとてもそっけなく、「ok」と言って、私はちょっと離れたところの椅子に腰をかけていたGにも、手をあげて、私は行くね、と、合図をしたらGが、「行くの?」と言って、両手をひろげて、いつもの、優しい可愛い笑顔で近づいてきた。そして数時間前に、最初に空港に2人をおろしたときよりも、優しくて、そして少し長い、hugをした。


傷degreeマイナス80%


本当の、お別れ。

水に、流れたかな。


Mとは、会ったばっかりだから、いつもの私なら、会ったばかりの人とhugをすることはめったにないけれど、これから、Mが行く旅を想って、hugを送った。ちなみに私には、彼は背が高すぎて、hugが大変だった。彼はもう一度最後に、「僕の車、よろしくね。保険に入れなかったら、どこか、できたら、安全な駐車場、みつけくれる?」と言って、だけど、ここではじめて、「でも車に何かあったら、もうそのときだから、それはもう、いいから。」というようなことを言った。(心の中の心配とは、きっとちょっと、うらはらに。)


ふふ。前の日の夜から、一転して、嬉しい瞬間がつまった、とても豊かな1日になったのは、彼のおかげ。私、彼の車を、守れるかな。(実はさっきすでにぶつけた。)ちょっとだけ。てへ。神様、私が、Mの車を、守れますように。2人のジャングルのアドベンチャーが、2人の思うように、いきますように。



昨日、嬉しいメール、到着。とても嬉しいメール。Mから。それはGからの、メッセージつき。とてもとても長いメールで、彼らの旅のことがぎっしりとつまっていて。Mは私を、笑顔にするみたい。日本で誰かと話しているときは、いつもどこか、さわやかな建前を感じるけれど、Mは+にも-にもまっすぐに本当を発信してくるから、それが-のときは、おい、と思うけれど、それが+のときは、とても愛おしい。頭がいいことをひけらかしたりもなく、自分を自分以上に見せようとする気配もなく、裏もなく、疑いもなく、詮索もなく、恐れもなく、とてもとても、ただ、とても正直。

そして証明書を書いたところで、彼が、えっと、じゃあ駐車場の出方はわかるよね、と言いながら、あれ?あれは、僕がいた空港のところだよね、と、私たちの左手に見える、空港のビルを指さして、「なんだ、ここから歩けるじゃん!一緒に来なよ。」 と言うので、でも私が戻ったら、Gが、なんで私が戻ってきたのかって、思うんじゃないかなぁって、ちょっと思ったけれど、なんとなく、言われるままに、じゃあちょっとだけ行こうか、って言って、2人で車を後にした。


歩きながら、チケットのこととか、これはしたかあれはしたか、って、私がなんだかぺらぺらと話していたら、私はこのとき、自分がなにを話していたか覚えてないんだけれど、Mが突然きっぱりと、「君は、cuteだ。You are a very very cute personだ!」と、言ったので、とても照れてしまった。この人は、なんだかこうやって、私を嬉しい気持ちにする人みたい。


でも、なにが、cuteだったんだろうな。なんでそう思ったのかな。私はこのときは、いろいろあせってぺらぺら話していたし、なんだか自分をよくみせようとか、そういうことは全然頭になくて、でも自分でいるほうが、ずっといいんだってこういうことなのかなって、思ったりした。


Very very cute person って言われたら、嬉しいよね。まるで心の中をのぞかれて、ほめられたみたい。


だけどまた。私の年齢を知ったら、どうかな、って…、いう想いがよぎる。Gは、私がうさぎ年って、知っている。中国の干支の話しになって、私は口を、すべらせたんだっけ。ああ、言えばよかったんだ。最初に会ったときに、どうどうと、36才って。それでいて、Very Very cute person と、言って欲しかった。私のばか。自信、なし。


そして私がMと一緒に空港に入っていくと、Gがいて、やっぱり少し、ほんの少しだけ、あ、戻ってきたんだなーっていう顔をしたような、気がした。だけど彼は笑顔で、「おい!2人ですごい長いこと帰ってこないから、僕は寂しかったぞ!」と、言っていた。それから、しばらく、Gが私に、よし、じゃあ君にこれをあげようとか、それはピーナッツバターとかだったから、私も冗談で、「ええええ!いいの!?でも、こんなに大切なものは、受け取れない。本当に、悪いから。」と言ったりして、そんなやりとりが、私の傷、degreeを、マイナス40%、マイナス42%、って、本当にちょっとずつ、ちょっとずつ、ちょっとずつ、癒してくれた。


それから疲れ切ったMが、イスに座りこんで、hey、ちょっと休もうぜ、って言うから、私も彼と1つあけて、椅子に座った。それでなにかちょっと話しをしていたら、私たちの間の椅子に、Gが腰をかけたから、びっくりした。話している人と人の、真ん中に、座るんだね。ふふ。でもそれで、私とMは、顔をこう、たおして、話しつづけたりした。


荷物を持って椅子に座るGの足が、私の足にふれた。私はそっと、足を、離した。私は、ホテルの部屋にいる間中、Gにふれてほしくて、抱きしめて欲しかったし、彼が少し、私にふれたら、嬉しかった。だけど、ここで、もうそれは終わった。私が足を離したとき、Gがちょっとはっとして、顔をこちらへむけて、私の顔を、見たのが、わかった。


私の傷、degreeが、マイナス、58%、もうちょっとかな、62%、くらいまで。


私はMと話しつづけた。Gは立ちあがって、少し、居場所がなさそうな感じで、どこかへ行った。変わらずに、Gとも冗談を言ったりし続けたけれど、Gが去ると、私は彼の座っていた椅子に座って、Mの隣に移動した。それはたんに、Mの持っている何かを見せてもらうために近づいただけだけど、戻ってきたGは、私の座っていた方の場所に腰をおろして、何を、思ったかな。


この日の朝、ベッドで眠るGが、すごく可愛い男の子に思えたのに、このときは、もうでも人懐こい、ただの少年に、変わった。私の中で。


それで、私は、いつまでここ、空港ににいようかって考えて、彼らのチェックインまでまだ結構時間があったけれど、12時までいてもなぁって、話すことも、なくなるしなぁって、何度か、じゃあ行こうかな、って言ったりした。こういうとき、私はとても、優柔不断。そしてどっちの答えを出しても、後悔する。Mは、私が、そろそろ行こうかなっていうたびに、「なんだ、退屈になったのか。」と言ったりした。それで私も、帰れなくなったり、それからでも、Gが聞いているときに、「でもあなた(M)が私をここへ連れてきたんだし」と、Gに、私が、誘われてきたのだって、いうことを伝えられて、満足したりした。あああ、私って、そうなんだ。


傷、degree、マイナス70%



生かされた命なんだから、もともと、もうなかった命なんだから、誰かの幸せにために使おう。家族の幸せのために生きよう。力をつけよう。それは私が生きて、誰かのためになるような。ちょっと地球が、綺麗になるような。出会うこともない人たちが、笑顔になるような。



駐車場に車をとめるとMは、「暑いな。この車、なんで今日はこんなに暑いんだろう。」って言った。車にはエアコンがついていなくって、窓は全開だったけれど、外はまだまだ暑かったし、でも砂漠を移動してきたはずの彼が、そんな、なんだかわかりきったことをぼやくから、本当に、よっぽど疲れているんだろうなって思って、私は車の中に散らばった、私のいろんな書類をかき集めて、ぱたぱたと彼をあおいだ。


そうしたらふと、突然、彼の動きがとまったような気配がしたから、彼を見て「Better?」と聞くと、彼は、なんだかとても嬉しそうな笑顔で、「君は、cuteだな。君は、いい人間だと思う。」と言ったので、私はなんて言っていいか、わからずに、「そうだね、私はいい人間だと思う。」と、返した。


そうしたらMが、「僕は君を信じたから、車を預けるんだよ。日本人はいい。日本人は、信頼できるんだ。」って言うので「誰か日本人を知っているの?なんでそう思うの?」って聞いたら彼は、ちょっと考えて、「えっと、だって、例えば、サムライとか…」











サムライかよ。


それで空気がなごんで、それで、証明書を書きはじめてくれた。


証明書には私の名前も書かないといけなかったんだけれど、Mは私の日本語の名前になれていなくって、私の名前を発音するのに苦労して、「ふぅ、難しいな、」って言うから、彼の顔をみると、彼はいやいやと首をふって、「とっても可愛い名前だと思うんだ。でも僕にとっては珍しい名前だから、難しいんだ。」って。彼との時間は、全部書きとめておきたいくらい、ほんとうに、ほんとうに、可愛い。私は彼が好き。