村上春樹の作品。
2023年に新潮社から刊行。
「いつか読もう」と思って、発刊から2年半くらい経った。
概略は事前に見聞きしていたので、なんとなく知っていた。
村上作品は今までに結構読んでいるので、本作も600ページ超の長編だけれど、それほど大きな覚悟はいらなかった。
話は、第一部から第三部に分かれている。
第一部は読んでいると夢の世界に行くような、良い意味での冗長さがある。
第二部は現実の世界で、主人公が図書館に勤務し、そこで出会う人とのやり取りが描かれる。
登場人物も、第二部でどっと増える。
独特な個性を持った人ばかりで、村上作品らしいと言えばいいか。
私は、図書館の前館長・子易(こやす)さんが好きだった。
佇まいや話す時の言葉の選び方、相手への敬意も感じられて、出てくると嬉しかった。
本作は最後まで、主人公の名前が一切わからない。
こういう書き方もあるのか、という気付きになった。
最後は、ここで終わるのかなと思ったら、すっと終わった。
不完全燃焼の感もあるけれど、あとは想像してみて、という気もする。
村上作品には珍しく、「あとがき」がある。
この作品を書いた経緯と、書いている間がコロナ禍だったこと。
「そうか、村上なりのコロナ禍の答えが本作にあるのだ」と気づいた。
40年越しに作品をきちんと形にできて、すっきりしたようだった。
読んでいるとひんやりする(冬の描写が多いからかも)ので、夏に読むのには良い。