ま、今日も気ままにいきましょ。 -9ページ目

ま、今日も気ままにいきましょ。

本、映画、ライブ、食べ物などの感想を徒然に書いていきます。

村上春樹の作品。

 

2023年に新潮社から刊行。

 

「いつか読もう」と思って、発刊から2年半くらい経った。

 

概略は事前に見聞きしていたので、なんとなく知っていた。

 

村上作品は今までに結構読んでいるので、本作も600ページ超の長編だけれど、それほど大きな覚悟はいらなかった。

 

話は、第一部から第三部に分かれている。

 

第一部は読んでいると夢の世界に行くような、良い意味での冗長さがある。

 

第二部は現実の世界で、主人公が図書館に勤務し、そこで出会う人とのやり取りが描かれる。

 

登場人物も、第二部でどっと増える。

 

独特な個性を持った人ばかりで、村上作品らしいと言えばいいか。

 

私は、図書館の前館長・子易(こやす)さんが好きだった。

 

佇まいや話す時の言葉の選び方、相手への敬意も感じられて、出てくると嬉しかった。

 

本作は最後まで、主人公の名前が一切わからない。

 

こういう書き方もあるのか、という気付きになった。

 

最後は、ここで終わるのかなと思ったら、すっと終わった。

 

不完全燃焼の感もあるけれど、あとは想像してみて、という気もする。

 

村上作品には珍しく、「あとがき」がある。

 

この作品を書いた経緯と、書いている間がコロナ禍だったこと。

 

「そうか、村上なりのコロナ禍の答えが本作にあるのだ」と気づいた。

 

40年越しに作品をきちんと形にできて、すっきりしたようだった。

 

読んでいるとひんやりする(冬の描写が多いからかも)ので、夏に読むのには良い。

にしおかすみこの作品。

 

2023年に講談社から刊行。

 

新聞の書評で紹介されていたのを見て読んだ。

 

にしおかの家族は、両親と姉。

 

父はアル中、母は認知症、姉はダウン症である。

 

にしおかは一人で生活していたが、コロナ禍を機に実家へ戻る。

 

そこで待っていたのは、ひどい臭いと雑然とした部屋だった。

 

にしおかは家族と向き合い、字面で読むと乱暴な言葉でやり取りする。

 

母は認知症が進んでいるのかなと思うが、途中受ける介護認定も「通らなさそう」となっている。

 

このあたりの経緯と理由は、もう少し詳しく知りたかった。

 

ダウン症の姉は、言葉は少なくお風呂に入らないなど問題を抱えているが、「愛らしい人だな」と読んでいて感じた。

 

ある1つの家族の形が、笑いつつしんみりしつつわかる作品である。

畑野智美の作品。

 

2023年に中央公論新社から刊行。

 

話は、光(ひかり)という28歳の男性が、大雨の中、出かけるところから始まる。

 

そこで偶然見つけた、住み込みの仕事募集。

 

飲食店だと思っていたお店は、手芸屋だった。

 

お店を経営しているのは、亡き祖母から引き継いだ、木綿子(ゆうこ)という35歳の女性。

 

光は、住み込みで木綿子と一緒に生活する。

 

2人は男女の関係にはならないが、お互いを大事に思っている。

 

光は人と深くかかわること、木綿子は誰かと恋愛することを避けている。

 

光は飲食店でずっと働いていたので、料理をするのが得意。

 

読んでいるだけで、おいしそうな料理が次々出てくる。

 

そんなある日、木綿子をめぐって事件が起きる。

 

LGBTと性暴力を扱った、最近の畑野作品らしい内容だ。

 

手芸屋で売っている物は、心をきらきらさせてくれる。

 

読む人によっては共感が得られないかもしれないが、「こういう形もある」と思える、温かい作品だ。

 

光や木綿子の友人、お店のパートの人、常連客など、登場人物も個性で豊か。

 

書き下ろし作品。