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ま、今日も気ままにいきましょ。

本、映画、ライブ、食べ物などの感想を徒然に書いていきます。

東野圭吾の作品。

 

2021年に幻冬舎から刊行。

 

500ページ超の大作だ。

 

「小説幻冬」に連載していた7編を元にしている。

 

このことを最後に知って、東野作品のすごさを見せつけられた。

 

本作では、2つの殺人事件が出てくる。

 

1つは現代、弁護士が殺害された事件。

 

もう1つは1984年、金融業者が殺害された事件。

 

この事件は容疑者が逮捕されたが、刑務所で自殺している。

 

現代に起きた事件で逮捕されたのは、倉木という男性。

 

妻に先立たれ、愛知県に住んでいる。

 

たまに上京して、息子のところを訪ねる。

 

この倉木が、1984年の事件も犯人だという。

 

「本当なのか?」と、息子は疑問を持ち、調べ始める。

 

読んでいる側としても、倉木は違うように思った。

 

何かをかばうというか、本当のこととは違うことがあると感じる。

 

終盤、話は急転する。

 

「そうか、そうつながるのか」という、納得の展開だった。

 

タイトルの意味も、「なるほど」と思った。

 

加害者の家族、被害者の家族について考える作品でもある。

 

「被害者参加制度」は初めて知った。

 

様々な思いが交錯し、時代を超えて放たれた作品だと思う。

 

思い切って読めてよかった。

 

畑野智美の作品。

 

2018年に文藝春秋から刊行。

 

主人公の愛は、派遣社員として文房具の会社で働いていた。

 

正社員になれる可能性があったがかなわず、契約満了で職を失う。

 

求職するも、仕事は見つからない。

 

やがてお金が尽き、借りていたアパートを出てホームレスになる。

 

漫画喫茶で暮らすようになり、日雇いのバイトをするが、お金はなかなか貯まらない。

 

そんな愛に、「出会い喫茶」という場が紹介される。

 

話は、そこでの出来事が主だ。

 

「女性の貧困」は話題として知っていたが、小説とはいえ、文字で実際のことを知ると、ずんと響くものがある。

 

出会い喫茶では身体を売る女性もたくさんいて、悲しくなる。

 

愛も、PTSDになるような経験をしてしまう。

 

どうなっていくのかなと思いながら読むと、タイトルの「神さま」が現れて「やっぱりそうなんだ」と。

 

そこからまた展開していくのだが、下る一方だったそれまでとは違い、愛は安定を得て回復し、そして前向きになる。

 

そうだよなあ、色んなことが愛にはあったもんなあ、と感情移入した作品になった。

 

重いテーマだが、「貧困」の本当を知るのに一歩を踏み出せる作品だと思う。

小児外科医・松永正訓の著作。

 

2025年に中公新書ラクレから刊行。

 

松永は『開業医の正体』という本も書いているが、「看護師のことをもっと書いてほしい」と要望があった。

 

松永自身、医師なので多くの看護師と一緒に仕事をしてきた。

 

本作は、「千里」という50代の看護師が自らの職業人生を語り、インタビューした内容が主だ。

 

書いているのは松永だが、元になっているのは千里の語りなので、読んでいると千里の人柄も伝わってくる。

 

複数の看護師の経験や思いをまとめるのではなく、1人の看護師がどのように仕事をしてきて、看護師という職をなぜ選んだのか。

 

この方が、看護師の実際がより具体的に伝わるので、私は読みやすかった。

 

色々な看護師の話を知りたい、という場合には物足りないと思う。

 

千里は、オペ室の看護師経験が長い。

 

そこでの勤務のこと、別の大学病院での修行経験、戻ってから新しくなった病院での勤務、「びびっと」来た結婚、また別の病院での経験。

 

興味深かったのは、最後の方で、千里自身が患者となり、入院した時に感じたことが書かれていること。

 

時代が変わって看護師の役割も少し変わっているが、根本にあるのは、患者を「看る」こと。

 

現在は開業医のクリニックで働いているという千里の見聞が、こうして1冊の本になったことは貴重だ。

 

看護師を目指す人、看護師を知りたい人、看護師としてのこれからを考えたい人、誰かの人生を知りたい人におすすめ。