この本は、沢野ひとしのつぶやきで知ったのが最初だと思う。
書影がポストしてあり、「小田さんの本だ」と気づいた。
その後、新聞広告でも大きく出ていて、読むことにした。
書いているのは、追分日出子というライター。
AERAの「現代の肖像」で小田和正を取り上げたのがきっかけで、2022年のツアーに密着し、この本を書くことになった。
600ページ超の大作だが、私はこれを読んでよかった。
小田和正という人がわかるし(謎も残ったが)、この70年くらいの音楽史を振り返られるような、そんな読後感だ。
本の最初では、小田の両親の生い立ち、小田が生まれてからどんな子ども時代を過ごしたか、学校での様子も詳しく出ている。
親戚、友人の証言が多く出ているので、「小田さん、こんな風に育ったんだ」とわかる。
高校時代の音楽活動は特に圧巻で、小田さんの才能を周りが支えていたという実感。
大学時代の話も興味深い。
「車!?風呂付き!?」と驚く。
そしてオフコース。
私はオフコースのころの小田和正を、直接は知らない。
だから今回、この本を読んで「そうだったんだ」「こんなだったのか」と知れた。
彼らのそばで活動を見ているような、そんな気持ち。
「クリスマスの約束」の話がたくさん出て、特に番組立ち上げ時の、TBSスタッフと小田和正のやり取りが面白い。
「テレビってやっぱり、視聴率なんだなあ」と思った。
09年の「ワンコーラスメドレー」の企画も、「あの放送の前にこんなやり取りが色々あったのか」と知った。
私はあの内容、聞けば「やろうよ」と思えたけれど。
「クリスマスの約束」は、私が小田和正を知ったはじめなので、今回読み通せて有意義だった。
ツアーの様子もずっと追っている。
歌の歌詞もたくさん出てくる。
改めて、小田和正の世界を知れる。
証言に出てくるアーティストも様々。
みんな印象的だけど、後半に細野晴臣が出たところで泣きそうだった。
「はっぴいえんどとはあまり関わりないのかなあ」と思っていたら、細野さん。
今だからこそ、泣ける。
SUPERBEAVERの渋谷龍太の思いも、「へえええ」となった。
若手もベテランも、他にもたくさん出てくる。
音楽をたどれる内容になっている。
作詞に対する考え方が、宇多田ヒカルの最近のインタビューとほとんど同じで、共通点を見いだせた。
また、ライブで「みんな元気で」と呼びかけるところは、安室奈美恵と重なる。
小田和正と安室奈美恵は、同じ誕生日である(ちょうど30年違い)。
小田和正ファン、オフコースファン、団塊の世代、音楽がとにかく好き、音楽史を知りたい、様々な人におすすめ。