絲山秋子の作品。
2014年に文藝春秋から刊行している。
雑誌「文學界」で、2012年から2014年にかけて連載していた。
絲山作品は一度読んだことがあったが、「長編をきちんと読みたい」と思って今回読んだ。
主人公は、国交省に勤める30代の男性。
勤務先は最初、群馬県の矢木沢ダムで、ある日、外国人男性が突然訪ねてくる。
ここから、話が展開していく。
ダムの情景はとても静かだけど、突然の訪問によって風向きが変わる。
男性には2人妹がいて、1人は視覚障害者だ。
彼女の存在も、話の中でとても大きい。
外国人の男性が訪ねてきたのは、主人公の男性がかつて交際していた女性の行方を捜してのこと。
男性にとって、彼女は昔の人なのに、目前に迫らざるを得ない人になる。
そして、男性はフランスへ転勤になる。
そこでは新しい友人ができて、人生の伴侶となる人にも出会う。
でも、友人は事件に遭って亡くなる。
女性の捜索は続く。
女性が産んだ子どもとも交流する。
男性は日本へ帰り、今度は熊本の八代に勤務する。
そこでまた、大きな別れを経験する。
女性とも再会するが、そこにはまた大きな問題があった。
こうして書くと、様々な出来事が詰まった本だなと思う。
でも重々しい感じはなくて、さらっとしている。
高揚している感じもなくて、淡々と。
かと言って、読み飽きることもない。
タイトルの意味は、話の終盤に出てくる。
最後にあとがきが入っている。
それを読むと作者の思いがよりわかる。
ハードカバーでこういうあとがきが入るのは珍しい気がしたけれど、いいなと思った。
また他の作品も読みたいと思わせてくれる長編だった。