津村記久子の作品。
2009年に講談社から出ている。
表題作は、芥川賞を受賞している。
他、「十二月の窓辺」という作品も入っている。
この本は、雑誌「文學界」の「21世紀の文学」という特集で取り上げられていた。
そういえば津村記久子の作品はあまり読んでいないと思って、今回読んだ。
ポトスライムというのは観葉植物のことで、主人公のナガセが働くところや、家に多数ある。
それに「舟」をつけるのは、ナガセが世界一周のポスターを見つけたところから来ている。
ナガセは、化粧品を作る工場のラインで働いている。
それ以外にも友人・ヨシカが開くカフェで働き、近くの会館でお年寄り相手にパソコンを教えている。
工場の勤務は契約社員なので掛け持ちで働いているのだが、ポスターを見て、「世界一周の費用を貯めよう」と決意する。
ただ、その決意とは裏腹に、ナガセの周りでは様々なことが起こる。
日常と言えば日常なのかもしれないが、ナガセは多くのことを考える。
黙々と働き続ける彼女は、世界一周へ行けるのか。
ナガセはお金に細かく、友人と遊びに行った時も、交通費や食事代を細かく計算する。
パートから契約社員に待遇が上がったにせよ、生活は苦しい。
数を一つ一つ出して考えるところは、作者自身の経験も反映されていると思った。
話としては悪くないし、淡々としていて読みやすかったけれど、現実的すぎるとも思った。
もう少し肩の力を抜いてもいいんじゃない?とナガセに言いたくなった。
「十二月の窓辺」も、会社で鬱々と働く女性の話。
女性を辞めさせようと強い言葉で迫る上司が怖い。
他のテイストの作品をまた読んでみたい。