妻の説明 | 1997年夏

1997年夏

1997年の夏。ある出来事がおきました。その出来事により私は夫婦の関係について見直すことになり、そして恐らく人生も変えたと思います。その時のことを思い出しながら書いていきたいと思います。

翌7月26日土曜日


昼まで職場に行き、仕事の続きを行う。
引き続き自宅で続けるため、資料を持ち帰る。


妻は午後はエステに行くと言って出かけた。
夕方、帰ってくるが、泣き顔になっている。


夕食を済ませ、子供たちが寝た後、改めて話しをした。


いまだに自分は疑っていること。
だが、仕事のこともあり、この件は早々にクリアしたい気持ちであること。
事実がどうであれ、自分は、建設的に前向きに夫婦の関係を考えていく気持ちでいること。
そのためには、事実を隠さずに伝えて欲しいこと。
嘘や不明瞭な部分を残したままでは、次の段階へ進めないこと。


だが、やはり、返ってくる返事は同じだった。
結局、押し問答の形になる。


妻は、疲れた顔で先に寝ると言って階下に降り、僕は独りリビングに残った。


家が無意味な単なる箱のように見え、無性に腹立たしさを感じた。

また胃痛が始った。
酒を飲み始める。
酒を飲むと胃痛が治まるような気がしていた。
食欲がなく小食の日々が続いていたせいか、急速に酔いが回る気がした。


結局、何も晴れなかった。
なぜ、明らかにしてくれない?
どうして隠す?
こそこそするな!
俺がこんな状態になっているのに、どうしてエステなどに出かけられる?
エステというのも嘘なのではないか?


前と同じ疑問がループになって頭の中に渦巻く。

いつしか、うろうろと部屋の中を歩き回りながら、壁やテーブルに頭を打ち付けていた。


その音を聞きつけ、心配した妻が2階に上がってきた。
そして、話し出す。


***


エステは、この問題はあなた自身の問題なので、関わってもどうしようもないと思って行った。
泣き顔だったのは、今回のこととかであなたのことを思って。
話をしようと思ったが、疲れてたので明日にしようと思ってた。


エステに行く前、1時間くらい、同僚の人に相談した。
いともたやすく「じっくり話し合いなさい、そうすれば解決する」と言われた。


去年、学級担任になり、大変だった。
右も左も分からず、大変だった。
Tさんとは、1学期の通信簿の作成のとき、スタンプが乾かず、机に並べて乾かしてたら、揮発性のスタンプがあることを教えてくれて、それをくれたのが始まり。
そういう、つまらないことがきっかけ。
だが、とても嬉しかったことは事実。


Tさんと主任のK先生に、教えられた。
これまで教師と言う職業を半ばばかにしてたし、自分には不向きであると思ってた。
だが、2人に教えられ、自分が人間的に成長することを感じた。
仕事が本当に面白くなった。

Tさんには、「相談する相手が違うのではないか」などと叱られたこともある。
そういう人なのだ。
だから、これからも今までと変わらず、尊敬できる先輩の先生として付き合いをする。


Tさんには憧れの感情は確かにある。
それが空想になってあんな手紙を書いて遊んでいた。


仕事に夢中になり、家の事をあなたに任せてたのはすまなかった。
こんなに気にするとは思っていなかった。
周りの人には、あなたのことを「植物」のような人と言ってる。
人の感情に立ち入らず、立ち入ることを拒むタイプだと。

結婚当初のころはあなたを変えようといろいろ言ったけど、その後、あきらめたように思う。
とても優しい人だが、心の中には入らない人なんだと。
だから、それに甘えてきたかもしれない。
あなたを追いつめていたのかもしれない。
こんなになる人とは思っていなかった。
ぜんぜん見えてなかったと思う。
8割は自分が悪かった。

あの手紙については何も弁解できない。
でもあれは、本当に空想の上で書いたもの。
あなたが考えてるようなことは何もなかった。
それは事実。


***


だがやはり納得できないのだった。