突発性難聴専門 さいとう難聴鍼灸院です。

突発性難聴の患者さんの内、何割かには難聴発症直後に激しい回転性めまいを発症します。回転性めまいは命の危険を自覚するような激しいもので、目をつぶっていても寝ていても出現しますが、長くても数日以内には自然と消失するのが突発性難聴に伴う回転性めまいの特徴となります。

突発性難聴の詳しい病態は解明されていませんが、内耳の半規管に内リンパ水腫が起きたことで回転性めまいが出現すると考えられています。


図引用 http://medical.eisai.jp/products/menilet/treatment/09.html#mt


突発性難聴発症直後の回転性めまいが続く場合、それは突発性難聴とは別の原因があるということです。多くの場合でメニエール病か、あるいは前庭神経炎などの異常を疑います。

回転性めまいはいずれにしても内耳の前庭の異常から引き起こされます。前庭は半規管と耳石部分からなり、内部にはリンパ液が満たされています。


図引用  http://morimoto-ent.jp/doctorblog/839.html




前庭神経炎などの病的な所見がある場合は医学的な治療が必要となりますが、そういった明確な異常所見がないめまいに苦しむ方は多くいます。

めまいの原因や感じ方は様々で、どんなめまいであっても長引く場合は脳のMRIを撮るべきですが、そういった異常所見がないにもかかわらず起きるめまいの原因はどこにあるのか。



めまいの原因として最も多いのが自律神経の機能異常です。


自律神経は内臓の機能を調節する神経で、その中枢は脳の視床下部にあります。

船酔いやクルマ酔いなどは病的なものではありませんが、激しい回転性めまいを引き起こします。これは自律神経の乱れから起きるものですが、前庭の機能異常が引き起こす病態です。

通常、目から入る視覚情報を脳で補正し、また前庭からの平衡覚の情報を統合してバランスを保っています。目の揺れと脳の揺れは本来逆向きで、そういった視覚からの情報を脳は補正しています。


しかし、船酔いなどは視覚情報の揺れと脳の揺れが、前庭の揺れと大きくズレが生じた際に出現します。ズレ=ストレスとなって自律神経の異常を引き起こし、酔うということです。


同じように、突発性難聴発症後のめまい感が長期的に続くという場合も、この自律神経の異常から起きていると考えられます。

内耳の前庭の機能異常が改善されていないため、脳の情報との狂いが起きているということです。また、突発性難聴の患者さんはまじめな性格が多く、もともとストレスを抱え込む方が多いため、なおさら自律神経の異常が起きやすい状態であるともいえます。


耳鼻科では内耳の機能異常を改善させるため、ジフェニドールなどの抗めまい成分を処方して内耳血流を増加させてめまいを治療しますが、なかなかこういった薬の作用ではめまいが改善されない方も多くいます。


そこで東洋医学によるめまいの治療を希望される方も多くいるわけですが、東洋医学ではめまいの原因を大きく三つに分類します。


肺虚=寝返り時のめまい
腎虚=立ち眩みや動作時のめまい
肝虚=静止時のめまい

※虚証=エネルギー不足の状態


内耳の機能異常によるめまいは、東洋医学では腎虚によると考えます。内耳は腎の支配領域で、腎機能の低下が内耳のめまいを引き起こします。

根本的なめまいの治療は内耳=腎機能の改善が必須であり、これはかなり時間がかかります。腎機能は「先天の気」ともいい、生命力そのものですから生まれ持った力以上の向上はできませんが、ある程度の腎機能の向上、回復はできます。

しかし、とにかくめまいを軽減させなければ患者さんは外出も困難ですので、そこで今回は船酔いや車酔いをはじめ、内耳の機能異常によるめまいを軽減させるための当院の治療法をご紹介します。

それが、中央厲兌(ちゅうおうれいだ)というツボに対するお灸の治療です。







足の人差し指、第一関節の中央部分にあるツボで、胃経の厲兌とは位置が違います。

この中央厲兌に、お灸を熱さをはっきり感じる状態で7回ほど据えます。せんねん灸などの温熱では効果は期待できません。この中央厲兌にお灸を据えると反射作用で前庭の血流が増加し、内耳の機能異常を改善させてめまいを鎮めると考えられています。

また、胃経にあることから、胃粘膜への麻酔作用によって嘔吐刺激をやわらげ、酔いを鎮める効果もあると考えられます。

かなり熱いツボで、(高い効果をすぐに求めるならば)痕がはっきりと残りますが、効果は高いです。もちろん、患者さんの状態に合わせてやけどの跡を少なくするように施灸はしますが、熱いです。

当院では内耳の機能異常によるめまいに対して、患者さんが耐えられる範囲での中央厲兌のお灸を治療に用いています。


参考までに。






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