【1】 医療への利用について

 医療に関連する項目は「そういう治癒効果の可能性が存在すると信じられた,かつて用いられていた」程度にとっておいてください。現代の医学的知識にきちんと基づいたものと、ほとんど民俗学に近い領域のものを意図的にごっちゃにして書いています(中世の処方の中で医学的に有効だったものも結構あれば、まったくの俗信に基づいたインチキ処方もあったからです)。
 実際にきちんとした薬効を持つものも(毒も含めて)かなりありますが、それはプロの領域での話です。ハーブとして・医薬品として処方するのに必要な相当量の知識を持たずして絶対に用いないでください。たとえちょっと試しに使ってみたとしても当方は一切の責任は負いません。


【2】 中世ヨーロッパ史との関連に絞っていることについて

 医療に関する項目を記載したのは、その幾つかを中世の民間医療家・産婆(つまり後に魔女とされた人々)・医師が処方した可能性がある、もしくは実際に処方箋として用いていたからです。そこを見ると何らかの歴史的事実が見えてくるのでは、と考えています。例えば複数のハーブの薬効を見渡すとやたら「虫下し」の項目が目立つのは、近代医療技術・知識が普及する以前の人々が寄生虫に苦しんだという事実を間接的に証明していると考えています。
 また中世と限定している以上、1492年以降に南北アメリカ大陸からもたらされた作物・樹木や、大航海時代以降にアジアから流入したものについては一切取り扱いません。
 取り扱った作物・樹木の各項目に関し、分布については地域をヨーロッパに限定して記載していますし、様々なエピソードなども中世ヨーロッパと関わりのないものはざっくり切り捨てています(いくらかは16世紀以降に関係するものが入っていますけれども数は限られています)。ただし調理法については例外で、カットする線引きがかなり曖昧になっていることはご了承ください。


【3】 画像は検索してください


【4】 引用リスト

『ハーブ大百科』デニー・バウン
『ハーブ&スパイス』サラー・ガーランド
『世界有用植物事典』
『ケルトの植物』
『英米文学植物民俗誌』
『魔法の植物のお話』
『森と樹木と人間の神話』
『大地の薬』
『樹~樹木の神話』
『世界の食用植物文化図鑑』
『世界食物百科』
『ハーブの事典』
『西洋中世ハーブ事典』
『原色世界植物大図鑑』
『魔女の薬草箱』
『ヒルデガルドのハーブ療法』
『ヨーロッパの森から』
『ドングリと文明』
※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


[英名]Silver-birch/White-birch
[学名]Betula-pendula/Betula-alba
カバノキ科/落葉高木/非常に耐寒性あり/寿命は80年前後しかない
15m前後
[樹皮]:輝くような黄褐色/(後に)黒い横筋の入った白色
[葉]:先端が尖った三角形状/縁に二重の鋸歯あり
[花期]:3~5月
[花]:雌雄同株/(雌花)緑色を帯びた毬果・新しい短枝の先に直立する/(雄花)黄色を帯びた長い尾状花序・長枝の先につく
[実]:6~8月/淡褐色の毬果

【分布・育て方】
◆全ヨーロッパに分布/北方の気候を好む
◆林間の空き地・休閑地/暗い森の中では育たない/栄養をたっぷりと吸い取るのでシラカバ林では土壌に豊かな植物群は形成されない
◆日向か半日陰/水はけの良い土地を好む
◆アイスランド・グリーンランドではかつてはシラカバが唯一の木だった

【伝承・歴史など】
◆[ゲルマンにて]:生長の早さ・しなやかな枝・白い樹皮から「生命の木」「生長の木」「祝福の木」とされた
◇女神フリッグの聖樹として緑の枝が門・窓に取り付けられた/愛・喜びのしるしとして入口に飾られた
◇5月樹(5月祭の木)としてはモミの木を圧倒している/ドイツ語の“Maie”は5月柱・シラカバの若枝を意味する
◆[アイルランドにて]:キルデアの聖ブリジット(2月1日が祝日)/聖母マリアのお潔めの祝祭(聖燭節:2月2日)と関連して光の目覚めを祝う
◇地母神ブリード:出産の守り神/治療・工芸・詩歌を司る/予言・神託を下す女神/古代ローマのミネルヴァに相当する
◇その神殿の前には火が常に点されていた
◇ブリギント(ガリア)・ブリガンティア(ブリテン島)と同一/ケルトのパンテオン(万神殿)の主な神/キリスト教伝来後はキルデアの聖女ブリジットと混同される

【花言葉】
 『従順』『公明と多産』
 『強い結束』(シラカバの束)

【民俗学的なこと】
◆[白い樹木,冬の太陽の光の中で輝く]:シラカバのこれらの性質が悪を追い出すのに相応しいと信じられていた/明るい広葉樹林を形成する
◆[スミレとともに春の到来を祝う]:人々は春の到来を願ったので“スミレ探し”“春の初花摘み”によってそれを探った/村のどこかでスミレが咲いているのを見つけると若者・娘たちはこれを摘み取ってシラカバの若枝に結えつける/これを手にして振り上げて踊る(or)地面に突き立てて周りで輪を作って歌い踊って喜んだという(春のスミレ探しは少なくとも13世紀ドナウ河畔での記録あり)
◇スミレだけでなく、春を告げる様々な花(例:ルチリサ,リュウキンカ,セイヨウオキナグサ,フキタンポポ,キンポウゲ)を摘んで、花束にして村へ持って帰った
◆[5月祭に]:若者は森に入ってシラカバ(or)モミの若木(5月の若枝)を折り取り思いを寄せる若い娘にプレゼントする/これを窓(or)戸口にくくりつけて色とりどりのリボンを垂らす/めでたく結婚する時にはシラカバなどの樹木を立てこれに白い布切れを枝ごとに吊して祝う
◇結婚したカップルにはお祝いとしてボダイジュ・モミ・シラカバなどの若木をプレゼントして2人は生涯大切に育てる
◇新しい家庭を持つ若い男女は、2つの樹を植えて養い育てなければならない
◆[枝の主日に]:復活祭1週間前の日曜日/この日の飾りつけに用いられる枝の1つとして登場する
◆[聖霊降臨祭の飾り]:復活祭後50日の日曜日/春迎えの木として家ごとに聖霊が宿るように白樺の若枝を窓・戸口に飾る/ ローテンブルクでの聖霊降臨祭の“羊飼いの踊り”でも羊飼いたちが手にして踊っている
◇この日が5月祭と行事が被るのは(東欧など寒い地域では)聖霊降臨祭の時期がちょうど良いから
◆[聖体の祝日に]:この祝日は5月祭を禁止しようとして失敗した教会が、その異教的要素を薄めつつキリスト教の暦に取り込もうとして生まれたもの(聖霊降臨祭後の第1日曜日(聖三位一体祭)の次の木曜日)。シラカバの枝・木が堂々と飾られている
◆[シュタウフェンの聖アンナ祭](7月26日):西欧の全ての教会で聖アンナの日を祝うようになったのは近世(1558年頃~)/シュタウフェンの町は彼女を守護聖人とする/やはりモミといっしょに若枝を飾り付ける
◆[多産を約束]:若枝で女性・家畜の体を叩く/若者が娘を叩いてから枝をプレゼントする(北ドイツの5月祭)
◆[癒やしの木材]:“神経を癒やす”と言われた(17世紀)
◆[魔除け][雷除け][家畜の病気除け]:キャベツ畑の害虫を駆除するとも言われた/小枝を帽子・ボタン穴に差す地方もある/(5月祭の朝に)シラカバとナナカマドを十字に結わえて豚小屋に置くと魔女の呪いを免れる/聖ゲオルクの日(4月23日)に家畜を3度叩いてから放牧へと放つ/聖マルティンの日(11月11日)にも家畜を叩いて家畜小屋に入れて冬の間の無事を祈る
◆[狂人を鞭でひっぱたく]:魔物を追い出すためにする
◆[祭式の箒]:シラカバの小枝を柄(トネリコかハシバミの材)にヤナギの樹皮で縛り付けた
◆[聖木曜日]:洗足木曜日のこと(復活祭3日前)/この日に境界標をシラカバで鞭打つ“Beating-the-Bounds”の行事が催される
◆[姉妹語]:bark(樹皮)/barque(小型の帆船)/boat/barge(はしけ)

【特徴と利用法】
◇葉:5~6月に摘み取る
◇葉芽:3月に摘み取る/葉と葉芽は成分浸出液・湿布薬・チンキにする
◇樹液:3~5月/すっかり生長した木に穴を開けて1本当たり約82Lを採取する/ただし樹液の発酵は非常に早い
◇樹皮:切った幹から必要に応じて剥いでオイルを蒸留する
◇強靱・柔らかい・弾性的という特徴を有する/樹皮は特に水を弾く
◆[梯子][車輪のリム][歯車の歯][製粉機の歯車][家具][食器][パイプ][木靴][紡織機の糸巻き][玩具]:各種の木工細工を作るのに割裂しにくい材が適している
◆[カヌー][雪靴][木皿][肩掛け][ゲートル]:寒い地方では若い樹皮を材料にする
◆[スプーン]:これを作るのはロシアの習俗
◆[ビールコップ]:材をくり抜いて金銀のたがを嵌める/先祖伝来の家宝とする(スカンディナヴィア)
◆[細工物]:樹皮から作る
◆[鞭]:小枝からつくる/罪人を打つ/“ダ・バーチ”
◆[箒]:細くしなやかな小枝は最適/柄は材を使う
◆[浴用はたき]:公共浴場で男性客は自分の恥部を覆い隠すのに用いた(中世)
◆[ベッドに敷く]:小さな子供・身重の人は枝を敷いた
◆[文字を記す]:材は紙のような白い薄皮が10~12枚重なっている/これを剥いで文字を記した/古代ローマでも使われていた
◆[木製の容器に][ボートの隙間詰めに][石と木の接合に]:白樺のピッチ(蒸留後に得られる黒いかす)を使う(ガリアにて)
◆[傷ついた家畜の治療]:同上
◆[皮なめし]:樹皮から得られるオイルを使う(タンニン酸がたっぷり含まれる)/なめした毛皮にほのかな香りをつける(ロシア皮革の独特の香りがこれ)/皮革に保存・防水・防虫能力を与える
◇シラカバのオイルでなめした革で装丁した書物には、カビも虫も付かない
◆[屋根吹き]:樹皮を使う
◆[薪]:湿った状態でもよく燃える/薄い内皮は天気の悪い時でも良い火口になる/熱量が高く最適/ロシア・スカンディナヴィアには欠かせない
◆[松明]:渦巻き形に巻いたシラカバの樹皮の帯を油に浸して作った(~19世紀)
◆[緑色]:明礬で葉を十分に煮沸する/質の悪い媒染剤(葡萄酒,尿)をベースにした「小染め」の染色手法が経験に頼って行われていた(北ヨーロッパ)
◆[黄色]:チョークを加える
◆[洗濯石鹸の一種]:尾状花序を水の中で煮沸して作る
◆[顔のローション][フケ・抜け毛向けの頭皮マッサージに]:樹液・お茶を使う

【料理】
◆[サラダ]:若い葉(粘着性・幾分苦い)を添加物とする
◆[カバノキワイン]:樹液(糖分を発酵させて作る)を発酵させて作る/農夫に愛された家庭飲料(ロシア)
◆[樹液を飲む]:森の中でのどの渇きを癒してくれる

【症状と薬効】
◇苦い・収斂性のハーブ
◇利尿・緩下剤・消炎・鎮痛・発汗促進作用がある
◇樹皮から得たオイルが薬用にされた
[リウマチ][関節炎][痛風][動脈硬化][尿閉][膀胱炎][腎臓結石][皮膚の発疹][発熱]:内服する
[疥癬][湿疹]:オイルが有効
※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


[和名]セイヨウネズ(西洋杜松)/セイヨウビャクシン(西洋柏槇)
[英名]Common-juniper
[学名]Juniperus-communis
ヒノキ科/常緑針葉樹/耐寒性/叢生する多年生の低木
灌木として2~3m/樹木として10m
分布が広いので亜種が多数存在する
[成長]:(たいていは)地面から厚く枝分かれして真っ直ぐに立つ/(しばしば)柱の形の樹冠を作る
[樹皮]:赤褐色で縦に裂ける
[葉]:小さい/灰緑色/先が鋭く尖る/芳香がある
[花期]:4~5月
[花]:マツカサ状の花が咲く/雌雄異株/雄花は黄色/雌花は青みがかった緑色
◇雌花は次第に青黒くなって肉質の液果となる/熟して黒茶色になるまで2~3年もかかる(セイヨウネズのベリー:杜松実)/ヒノキ科の植物で唯一食用になる果実

【分布・育て方】
◆ヨーロッパで広く分布
◇イギリスでは石灰岩・白亜土壌地帯に見られる
◇ドイツでは松・オークなどの林に生育している
◆荒れ地・まばらな針葉樹林・南斜面に見られる/標高1600mまで
◇風に曝される山岳地帯・砂丘では地を這うように広がる
◇風の影響のない場所では高さ3m以上になる
◇料理・薬用に利用するために庭で栽培することもある
◆日向(or)半日陰のどんな土地でも育つ/酸性・アルカリ性・乾燥・湿気・保護のない場所にも耐えられる

【伝承など】
◆[保護の象徴]:聖書での描かれ方/マリアが幼な子イエスをこの木の後ろに隠して(ヘロデ王の目をくらまして)エジプトへ逃れたという/ただし本当はこの木は「レダマ:Spartium-jenceum」の類らしい
◆[古代地中海世界にて]:復讐の女神エウメニデスに捧げた/生木を燃やして地獄の神々を宥めた/弔いに実を燃やして悪魔除けにした
◆[中世では]:魔除けの力を秘めた木として、とりわけ北部ヨーロッパの国々で尊ばれた

【花言葉】
 『信頼と保護』『独創性と創意』

【民俗学的なこと】
◆[隠れ家・救難の象徴][保護の象徴]:弱い臆病な動物にいたわりを与える/イギリスでは(野生だが)わざわざ森の外れを好んで木は育つ/追い詰められた野ウサギは地を這う枝陰に逃げ込む/ツグミは枝に巣をかけて実をついばむ
◆[棕櫚の日曜日]:北ヨーロッパでは“枝の主日”と呼ばれる/ネズなどの常緑樹の枝(例:ヤナギ,ハシバミ,モミ,イチイ)を飾る
◆[祈り・癒しのための薫香]:祭祀で香は香りが精神を浄化する力を持つとして用いられた
◆[治癒力を称える格言]:「ニワトコ(エルダー)の前では帽子を取れ/ビャクシンの前では跪け」
◆[雷除け][魔除け]:厩・屋内に飾る/厩でこの木を燃やして燻す/庭に植える
◇聖マルティンの日(11月11日)に牧人は家から家へと“生命の枝”ビャクシンを持って回る(ニーダーバイエルン地方)
◇この日には(一般には)鞭を振るって病魔を追い払うのだが、ここでは柏槇の小枝を束ねた鞭を使う。これを持って家々を回り、畜舎の扉に1本ずつ抜き取って挿していく
◇「聖マルティンが鞭を持ってやって来た/幸せは家の中に、不幸は外に/柏槇の実ほど仔牛が生まれますように/マルティンの鞭から小枝を抜いてドアの上に挿せ」
◇聖マルティンは家畜・羊飼い・病気の治癒の守護聖人
◆[ヨハネの火祭り](6月24日):焚き火の中に投げ入れて煙がたくさん出るようにする。その煙が畑・牧草地・家畜を燻すことで病虫害などを防げる、と信じられている
◆[燻し十二夜](クリスマスから1月6日の御公現祭までの12日間):上記と同じ
◆[疫病除け]:ルビー・サファイアをビャクシンオイルに浸して病室の周りに魔法の輪を描いた/(中世のペスト大流行期には)村や町の広場で柏槇の材を焚いた・疫病払いの松明を灯した/赤く輝く薪を病室に持ち込んで病魔をいぶり出した
◆[翌年の健康の願い]:子供たちが細い枝を持って家々を回って鞭のようにして人々の足を打つ(フランケン地方)
◆[バターの攪拌棒]:ビャクシンで作ればミルクは魔法にかからない
◆[葡萄酒の仕込み桶]:呪いで酸っぱくならないように木切れを埋め込む
◆[墓場に植える]:生死の間の境界の常緑の番人とされた/冥界から戻ってくることも有り得る(死者の魂は柏槇の中に身を隠して事情があれば生に戻ると信じられた)/男性の墓に花を供える
◆[泥棒も恐れる]:“柏槇おばさん”のおまじないを用いる
◇夜明け前に柏槇の藪へ行き/1本の枝を左手で東に向けて地面につくまで曲げて/その上に石を置いて言うのだ/「柏槇よ、泥棒が盗んだ物を返すまで、お前を曲げて押さえつけてやる」
◇泥棒が盗品を持ってきたらすぐに枝を元に戻す/石を前の場所にきちんと返す

【特徴と利用法】
※以下でのページ数は『ハーブ&スパイス』でのページ数を示しています

◇熟した実(ベリー)と、そこから蒸留して作るオイルを利用
◇液果には樹脂の芳香性がある
◇生で実を食べると苦い
◇小さいので木材としては使えない
◇十分に熟した実を収穫して乾燥・保存したものを成分浸出液・成分抽出液・錠剤・チンキにする
◇葉は松に似た香りを持つ/中世後期には女性を含む小売商たちの取り扱い商品だった(エルフルト)
◆[ストローイング・ハーブ]:病人の部屋で枝を燃やして空気を清める/学校の教室で毎朝ジュニパーを燃やして空気を新鮮にする(スイス:特に冬)(P221,P230)/浄火の風習は古代からのもの
◆[木製のバターナイフ][入れ物]:後者はバター・チーズなどの日用品用として/加工される(スカンジナビア)
◆[衣服の収納箱]:よい匂いのする木を材料に(P224上:イトスギ,ビャクダン)
◆[繊細なろくさ細工][鞭の柄][節くれだった散歩用の杖]:強靱で長持ちする/心地よい芳香を放つことから利用された
◆[染料]:淡いクリーム色/子鹿色/淡いカーキ色(P241・P242)

【料理】
◇実は風味が非常に強いので量は適当に判断する/使用直前につぶす
◆[アヒル,七面鳥,鹿,ウサギ,ヤマウズラなどの肉料理]:実を風味料として/マリナードによく用いる/癖の強い素材の調理に少量だけ使う
◆[基本的なマリナード]:P164左
◆[牛肉][豚肉][鳥の詰め物料理][パテ:肉,魚][ラトヴェルジ:冷製の肉に添えるジャム][ザワークラウト]:鋭い風味がきいて美味しくなる
◆[スパイスが効いた肉の煮込み][パセリゼリーのハム入り]:P190・P192
◆[煮込み料理]:風味料に少量だけ(フランス)/3・4粒の実がベイリーフ1枚の代用になる
◆[焼き魚]:葉(生/乾燥)を用いる
◆[バーベキュー:肉,魚]:枝・葉を燃やすと微妙な香りを付けられる(P193)
◆[ビールの苦み付け]:甘くピリッとした風味を持つ実(スウェーデン)
◆[ジン]:オイルを香りつけに(P216下)/オランダ人の国民的飲料だった
◆[麦芽醸造酒]:ホップが用いられる(13世紀)以前に使われた
◆[ブーケガルニ](芳香薬味草の束):豚肉用に小枝1本を加える(P162)

【症状と薬効】
◇殺菌/利尿/消化促進/子宮の刺激/消炎作用がある
◇刺激性のハーブなので緩和性のハーブ(例:マーシュマロー)と組み合わせて飲むのが最適
◇妊娠中/腎臓疾患の患者に使用してはならない(腎臓の損傷を引き起こす)
◇古代エジプトで既に治療用植物とされていた
◇[傷の手当て][利尿剤][リウマチ][痛風][水腫](by古代ギリシアの医師ディオスコリデス)
[膀胱炎][尿道炎][腎炎][リウマチ][痛風][関節炎][ガス][疝痛を伴う消化機能不全][肝臓の障害]:内服する/リウマチ・肝臓障害には実をお茶にして飲む/民間医療では樹皮も内服した
[駆風][健胃効果][利尿]:潰した液果25gを1Lの熱湯に入れた浸剤を、1日にカップ1杯飲む
[腎臓の働きを促す][食欲増進][肺の病]:実をワインに浸したもの/ヒルデガルドの勧め/消化剤のシロップ(P272)
[水腫][壊血病][ひきつけ][てんかん]:木の灰を用いた
[ペスト]:吸入剤(P266中~右)が使われた(16世紀)/ペストの守護聖人たる聖ロックの日(8月16日)に収穫したものは特に効果ありとされた/オイルが“ペストの秘薬”とされた
[筋肉痛][リウマチ]:軟膏(P277上)/薬湯(同)
[歯痛][歯茎の病気]:オイルを使う
[堕胎薬]:かつて用いられていた
※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


[和名]セイヨウシロヤナギ
[英名]Goat Willow/Commom Willow/White Willow
[学名]Salix alba
ヤナギ科/落葉性の低木(or)小高木/耐寒性
25mまで
[樹皮]:深く亀裂の入った灰茶色/経年とともにザラザラしてくる
[枝]:傾状
[葉]:長さ10cm/互生/先細/披針形/両面ともに厚い毛で覆われる
[花期]:春
[花]:雌雄異株/新芽と一緒に尾状花序の花をつける/(雌花)緑色を帯びる/(雄花)黄色/この花序がいわゆる“ネコヤナギ”
[果実]:小さな種/白い毛の束あり


◎シダレヤナギ(Weeping Willow/S.Babylonica)
◇東部地中海地域原産/イギリスには17世紀に伝わる


【分布・育て方】
◆全ヨーロッパ/川辺などの岸辺・水辺の森に普通に見られる/標高1800mまで
◆日当たりがよい/湿り気がある(or)濡れている/目の詰まった土壌を好む
◆繁殖は(夏)半熟枝挿し/(冬)塾枝挿しを行う

【伝承など】
◆[古代地中海世界]:地母神デメテル(ローマではケレスになる)は彼女に捧げられた柳の木に現れた/死と復活の女神ペルセフォネも柳の幹の暗闇に浮かび上がった/オデュッセウスは冥界の入口アケロン川のほとりで柳を見た/バビロンの流れのほとりの柳に琴をかけて我らは涙を流した(『旧約聖書』)
◇樹皮を鎮痛・解熱剤に用いた(A.D.1世紀~)
◇“医学の父”偉大なギリシャの医師ヒポクラテスは樹皮を鎮痛・解熱に、葉を分娩の痛みの緩和に用いた
◆[キリスト教]:「キリストの言葉は異教の地でどんなに阻まれても、損なわれずに成長し続ける」という考えから、柳を福音のシンボルとした
◆[古代ケルト]:神聖な木の1つ/“冬の巨人”を燃やす儀式は(中に生贄を入れて燃やしたのではなく)藁・干草を詰めたヤナギで作った人形を、ヤナギの枝で編んだ籠とともに焼いた可能性がある
◇籠そのものは「イニシエーションの小屋(炉)」だった可能性もある
◇同様のものとして、スキタイ人のシャーマンがヤナギの骨組みに屋根を葺いたものを建ててシャーマン的儀式を行ったものがある
◇ケルトの豊穣の儀式では、ドルイドの木文字の5番目の木として、ヤナギの花が咲く頃に(自然の再生を祝う・畑の豊穣を促すために)枝を地面に差した

【花言葉】
 『見捨てられた恋人』

【民俗学的なこと】
◆[死・嘆きの象徴]:水辺・湿地に枝葉を長く大地に垂らす(葉に含む水滴が涙を思わせる)姿から/ユダが首をくくったと言われる木の1つ/魔女(地母神のなれの果て)とのもう1つの関連性
◆[生と死の境界に立つ]:陸地と水の境=「下界の門」に立っていることから/生命力に満ち溢れていることも影響している
◆[柳の下で眠ってはならない]:生死の境界に立つ木だから当然そういうことになる/人々は子供にそう教えた
◆[臆病者・倒錯者の処刑]:古代ゲルマンではヤナギの籠に入れて沼に沈めた(byタキトゥス)
◆[辱めの刑]:暑い盛夏に罪を犯した者にヤナギの鞭を持たせた/周りの人々と仲良く暮らせなかったことを告げ知らせていた(ゲルマン)
◆[月・月の女神に属する]:(一般に)柔らかく・腐りやすく・しなやか・水っぽいもの/涼しいもの/敏感なものが属する
◇春に咲くことからも“光の乙女ブリギットの満月”に属するとされた
◇ブリギット=ブリードはヒーラー・詩人・魔法使い・シャーマンの才能に長けた人々の守り神とされた
◆[薬草売りの女性]:セイヨウシロヤナギの樹液を煮て、その苦い煎じ湯を痛みを訴える人々に分け与えていた(中世)。しかし、籠を作るためにヤナギの木が緊急に必要とされるようになり、ヤナギを摘むことが罰せられるようになったため、この自然の特効薬は忘れ去られた
◆[魔女が出現]:柳の根にしゃがんで悪魔に魂を売る/それ以後は絶えず木陰に現れる/朝早くに魔女はヤナギの枝を触って霜・霧氷を生み出すという/ヤナギで作った笛で破壊的な風を巻き起こすとも/魔女と猫との繋がりは柳経由か?
◆[魔女の箒]:長い枝で作ると信じられた
◆[木女が住む](大昔の木の妖精の名残):①柳の木に夜な夜な忍んでいく妻が木女だったという話/②夫が木を伐って妻は死ぬ/③代わりにどんどん伸びる新しく枝で子供たちが笛を作る/④笛を吹くたびに柳の中に母の声を聞いた(ボヘミアの民話)
◆[棕櫚の日曜日](枝の主日):棕櫚はドイツには生えないのでバッコヤナギを奉献に使う/キリストは磔にされる前にヤナギの鞭でひどく打たれたという話しに由来する/家に持ち帰った柳の穂花を食べると、一年中無病息災になるといわれる
◆[復活祭の十字架]:枝を編む(イギリス)
◆[復活祭のウサギのために]:柳の枝とコケとでウサギの小庭を作る(シュヴァーベン)
◆[情欲の節制の象徴]:Vimen(柳のラテン語)に“しばるもの”という意味もある。そこでカシ〔常緑〕の大木に象徴される「頑固な情欲」を制御する徳に喩えられた
◆[制淫剤とされた]:ヤナギの尾状花序・葉を使った(中世)/ブリギットは処女神であることに関連する/魔女扱いされる木の筈だが「貞淑・純潔で汚れのないマリアの木」として修道院の庭に植えた
◆[病気を移し取る木]:痛風・リウマチ・子供の病気に有効とされた

【特徴と利用法】
◇葉・樹皮を利用/苦い
◇[葉]:春・生長期に摘み取る/生(or)乾燥させたものを成分浸出液にする
◇[樹皮]:春・夏の間に剥ぐ/乾燥させたものを成分抽出液・粉末・錠剤・チンキにする
◇(幹さえ傷つけなければ)新しく生えてきた枝をいくら伐っても枯れはしない/ただし抵抗力は弱く朽ちやすい/ヤナギの成長スピードを上回るのはポプラだけ(同じくヤナギ科)
◇『柳の植え付けについての規約』(スターブリッジ:1571年):どの参事会員も各々柳を120本ずつ植えた/都市民は80本ずつを地表・排水渠・溝の土手などに植えた/彼らは枝おろしをした・敷肥を施した・植えられている排水溝などを掃除した」
◆[土手を強化する]:川べりに生えるから
◆[漁船]:獣皮を張った柳編み細工で作るがかなりの耐久力があるという
◆[養蜂]:春に分泌する甘いネバネバした蜜が孵化したばかりの蜜蜂を誘う/春は蜂にとって柳は重要な蜜源となる/果樹の受粉のために果樹園主は好んで柳を果樹のそばに植える
◇巣箱にはコリヤナギのヨーロッパ種(Salix purpurea/Purple Willow)の枝を細工に使う
◆[羊・馬の放牧地に]:家畜に丸裸になるまで食い尽くされてもすぐに伸びるから
◆[木靴][クリケットのバット][製図版][マッチの軸]:柳は材としては柔らかい/害虫に喰われやすいので有用ではない
◆[笛]:ケルト人の死者の儀式/天候を操る術に用いられたらしい(死者・精霊に声を授けた)。骨・管・ヤナギの樹皮で子供たちが作った
◆[桶のたが][他の材木を縛る][葡萄の木を縛る]:切り枝を用いる
◆[祭式の箒]:シラカバの小枝を柄(トネリコかハシバミの材)にヤナギの樹皮で縛り付けた
◆[こね桶]:中が大きく空洞になった幹から作る
◆[籠を編む]:枝を使って(数千年来の歴史がある)/ところが古代ローマには籠が無かったらしい(イギリスからの輸入品だった)/イギリスにはどんなに貧しい家でも柳製の籠は必ず1つ2つはあった
◇パンを入れるのは今も昔も変わらない/パン屋では大型パンはちょうど同じ大きさの柳かごに麻布を敷いて入れた(中世)
◇石炭を地上へ運ぶのにも用いた(ウォーウィックシャー:中世)
◆[柳細工]:柳細工は農村の子供達の遊び道具作りの基本材料だった(中世)/様々な仮装・出し物を作るのにも柳をつかった/汚れたときにはソレル(スイバ:Rumex-acetosa)で除去する
◇ホビー・ホース(棒馬):柳の小枝や針金で作られた胴体の上に高価な刺繍を施した覆いを掛けていて、それが騎手も覆っている
◆[柳笛]:枝で作って子供の遊び道具になる
◆[葡萄酒の保存に]:細口大型ガラス瓶に柳で編んだ覆いをかぶせた(キプロス産:中世)
◆[建築用]:枝を編んで渡した上に漆喰を塗って壁にする/中世の農家の基本
◆[クッション・布張り家具の詰め物]:種を包む綿の用途だった
◆[染料]:葉の煎じ汁から木綿染料とする
◆[皮なめし]:樹皮を集める/(とりわけ)手袋用の革をなめすのに使う


【症状と薬効】
◇収斂・冷却性ハーブ
◇鎮痛・解熱・消炎・利尿・発汗・殺菌作用がある
◆医学の父と呼ばれる古代ギリシャの医師ヒポクラテスは、ヤナギの樹皮を鎮痛・解熱に、葉を分娩の痛みの緩和に用いたと言われている
[軽い発熱性疾患][疝痛]:葉を内服する
[リウマチ][痛風][自己免疫疾患の炎症期][下痢][赤痢][胃腸]:樹皮を内服する/小さじ1杯の細かく切った樹皮を1晩1カップの冷水に漬けた後に翌朝ごく短時間煮る
◇リウマチ性関節炎にはスープセロリ(Apium-graveolens)などと合わせて使用
◇不健康な沼沢地に生える柳と熱病を結びつけたことから始まったらしい
[熱冷まし茶]:柳の樹皮3/リンドウの根1/ミツガシワ(Marsh trefoil/Menyanthes trifoliata)の根2/ヒヨドリバナ2/ローズマリー1,を調合する
[避妊薬]:冷たい水で葉を飲むと女性は妊娠しない(byディオスコリデス)/セックスの前に膣に葉を挿入して妊娠を防ぐ
[傷口・潰瘍の洗浄][包帯を浸す][歯肉の出血][扁桃腺の腫れ][炎症]:樹皮の煎じ薬を外用薬として
[皮膚表面の潰瘍][治りにくい傷]:傷口に粉薬を用いる(柳の樹皮・ボダイジュの炭をそれぞれ細かい粉末にして同量ずつ)
[足の異常発汗]:樹皮を煎じた汁で足浴をする
[足の強壮・リフレッシュ]:ヨモギ1掴み/柳の葉1掴み/ヨモギギク1掴みを5Lの水と煮る