※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


[和名]:西洋ニワトコ
[学名]:Sambucus-nigra
すいかずら科/落葉低木/耐寒性
9mほどの大きさになる
[特徴]:濃緑の大きな葉(深緑色/縁が鋸状)と花にはもったりとした甘い香りが漂う
[花期]:6・7月
[花]:レースを広げたようなクリーム色の花
[実]:花が咲いた後(夏の終わり)に小さな実がつく/実はブルーベリーに似る/艶々とした黒味がかった紫色/房状なので重みで枝がたわむこともしばしば

【分布・育て方】
◆ヨーロッパ温帯地域に自生する
◆日当たり(or)半日陰/中性~アルカリ性/やや湿り気のある場所を好む
◆つましい場所でもどんどん生長する/トウヒの森の下(酸性/不毛の土壌)で育つ唯一の灌木/鬼火のよく出る場所(沼地・湿地)にエルダーは多い/加えて麻酔性の発気もあり不気味な伝承が生じたようだ

【伝承など】
◆[不死の象徴](北ヨーロッパ):精霊が住むので伐り倒す・薪に用いるのはタブー/枝はいくら切ってもすぐに伸びる/『ニワトコおばさん』(アンデルセン)ではこの精霊が回春の寓意となる
◆[ホレおばさんの木=死者の女神の木]:“黒い女神”たるホレおばさん(地母神/夜の女神)から“白い女神”である輝くブリギットが現れる
◆[生まれ変わった魂と泉の女神=誕生を司る女神]:泉にはカウスリップ・スミレ・アネモネなど春の花が咲く。女神によって生まれ変わった魂(=子供の種)は、新しく誕生する者へとコウノトリ(もしくは別の白い魂の鳥)によって、しかるべき場所(誕生の泉へ/小峡谷へ/沼へ/リンゴなどの果物の中に/煙道を通って竈の中に/中庭のニワトコの枝へ)と運ばれる。魂はその場所に座って未来の母親がしかるべき所作をする(泉の水を飲む,竈の火を掻き立てる,リンゴをかじる,ニワトコに触れる)まで待っている。子供は前世の善行・悪行を自分の天命として刻印している
◇「輪になれ、輪になれ、列になれ/僕らは3人の子供/ニワトコの下に座ってる/みんな呼んでる、早く、早く、早く」
◇このニワトコの周りでの輪舞の歌(子供たちの古い歌)では、歌っているのは生まれてくるべき子供の種だという
◆[性愛のシンボルとして]:子供が霊的存在として先に存在しており、性的な合体によって物理的な身体を得られるいう信仰。そこでニワトコの藪と性愛が結びつけられていた
◇「ニワトコの茂みの後ろで/彼女は恋しい人にキスをした/赤ワイン、白ワイン/明日は婚礼となるだろう」
◇「聖ヨハネ祭(6月24日)にニワトコの花が咲くとき/愛はさらに素敵になる」
◆[埋葬・墓地の木として]:
◇ニワトコの材で死者を埋葬した(古代ケルト・ゲルマン)
◇家の近くのニワトコの下に死者を埋葬した(フリース人)
◇死者をニワトコの小枝の上に横たえる(多くの地方)
◇棺作り職人はニワトコの若枝で棺の寸法を測る/霊柩車の御者の鞭はニワトコの枝/葬儀屋は魔除けにニワトコの材を携える(イギリス)
◇ニワトコで作った十字架を棺の中に入れる(ニーダーライン地方など)
◇葬列の先頭にニワトコ製の十字架を掲げる(チロル地方)
◇お通夜の祈祷の先唱者は眠らないよう、エルダーの花のハーブティーを飲む
◆[死者の木として]:
◇枯死したニワトコの切り株を跨いだ者は1年以内に死ぬ(オークニー諸島)
◇亡くなった親族が地上に来た時には中庭のニワトコに腰を下ろす(フリース人)
◇家の脇に生えるニワトコは「亡くなった祖先と接する境界木」/そこでは魔法の時刻になると死者に助言を求めることができる
◇中庭のニワトコにミルク・パン・粥・ビールの入ったボールを供えた/中庭のニワトコが年に2回花が咲く(or)枯れるのは家の誰かが死ぬ前兆

【民俗学的なこと】
◆[人間と密着]:庭の隅に根を下ろして、家・家畜小屋の壁にぴったりと寄り添う。しかし人々は住処の近くに生えるのを嫌う
◆[妖精]:世界が邪悪になった時に彼らはこの“ホレおばさん”の木に逃げ込む(ホレおばさんは精霊・エルフ・自然存在の支配者だから)
◆[聖ヨハネの日](6月24日):夏の花の季節なので(花から作った)お菓子・花・枝がたいへんもてはやされた
◆[聖母マリア被昇天祭](8月15日):薬草の束に枝を添える
◆[呪術として]:自分の切った爪・髪・抜けた歯を中庭のニワトコの下に埋める/これらを魔法使いが横取りして悪い魔法をかけるのを防ぐため
◇牛の胎盤・乳幼児の沐浴の水も(同じ理由で)捨てる
◇子供が病気になったら「身代わり」の人形をニワトコの木の下に置く(ガリア)
◆[誕生の木]:庭のニワトコの枝に触った妊婦には、ホレおばさんと先祖が身近にいて親身になってくれる(北ヨーロッパ)
◆[揺りかごに使ってはダメ]:新生児をニワトコでできた揺りかごに入れると、ホレおばさんが彼岸の国へ連れて行ってしまう/妖精が赤ん坊をいじめて青痣・黒痣を作ってしまう(後者はイギリス)
◆[ニワトコの十字架]:耕地の周りでの祈願行列・聖体の祝日(復活祭後60日:必ず木曜日)の行列に、この十字架を捧持した。聖体行列の十字架は「特別によい収穫を保証する」とされた(低地ブルターニュ地方)
◆[魔女除け]:ヴァルプルギスの日に葉を採ってきて戸口・窓に張り付ける
◆[厄除け]:家畜小屋にこの木の十字架をかけると良い
◆[魔女の木]:魔女はエルダーに変身する/うっかり斧を当てて木の切り口が血を吹いたという伝承もある
◆[悪いものを引き寄せる]:膿のついた包帯・雑巾・排泄物が根元に埋められた/これらはホレおばさんの鍋(「冥界の大鍋」的な存在)に入ると信じられた/病気の精霊はこれによって浄化・リサイクルされるという
◆[交感療法]:↑と関連してニワトコの木には「苦しみ・長患いなどの全てをぶら下げることができる」とされた(中世:ユダの首吊り自殺から生まれた)
◆[庭師も切らない]:神聖視して/誰であれエルダーを切るときには木の精に許しを請うてから
◆[空気鉄砲]:男の子はこの中空にした枝で作って遊ぶ(古代ローマから)
◆[木陰で昼寝しない]:木の発する気には一種の麻酔性があるとして
◆[ブリテン島の農民暦]:「ニワトコの実が黒くなったら/冬小麦の種を蒔け」「ニワトコが白ければ小袋を醸し焼け/ニワトコが黒ければ大袋と醸し焼け」
◇ニワトコの花が咲く頃にちょびっと発酵させる/ちょびっとパンを焼く
◇実が熟したらたくさん発酵させる/たくさんパンを焼く
◆[治癒力を称える格言]:「ニワトコ(エルダー)の前では帽子を取れ/ビャクシンの前では跪け」

【特徴と利用法】
※以下で(P××)と表記されたページ数は『ハーブ&スパイス』でのページを示しています
◇[悪影響]:その臭気によって(一般には)エルダーは周囲の植物に害を与えるとされる/木陰には他の植物は生えない
◇[ポイント]:葉・樹皮・実・花を利用/実は乾燥させると苦味が少なくなる/葉・樹皮は食べると猛烈な下痢を起こす/生の液果も下剤として働くので食べ過ぎは禁物/花も加熱すべき
◇[葉]:夏に摘み取る/生で使用
◇[樹皮]:冬の終わりの新芽が出る前(or)秋に葉が紅葉する前に剥ぐ/乾燥させたものを煎じ薬にする
◇[花]:開ききった頭花はそのまま乾燥して花弁のみをむしり取る/成分浸出液・フローラルウォーター・成分抽出液・軟膏・チンキにする
◇[実]:熟したら集める/茎から外して生で使う/乾燥させたものを煎じ薬・シロップ・チンキにする
◆[櫛][遊び道具][釣り竿][焼き串][ろくろ細工]:黄白色の木材は硬いので小さな物に利用された(ブナと同じ)
◆[生け垣用に]:耐久性・繁殖力が向いている点が評価された/とにかく長持ち
◆[火を起こす]:若枝の白い髄が抜き取りやすい/中空にした枝を使った
◆[オイル][軟膏]:花から作る/シミ・そばかす・ニキビ・吹き出物に(P246)/クリーム(P257)もあり
◆[ミルク湯]:P252
◆[目薬][化粧水]:エルダーフラワーウォーター(花の蒸留水)が有名(P254中)
◆[髪染]:紫色の実の汁で(古代ローマ)
◆[染料]:果実で革を青/紫に染める
◆[防虫]:枝・葉があればハエ・アリの侵入を防げる/穀倉でネズミ・モグラを防ぐ/服に煎じ汁・揉み汁をつける
◆[馬具に葉をくくりつける]:馬をハエから守る
◆[家畜の病気]:羊の腐蹄症に樹皮・若葉を食べさせると良い/牛の白癬病には若枝を干からびさせる「交感療法」を使った
◆[獣医学]:家禽の強壮餌に/乾燥したサンザシの実・ナナカマドの実・ニワトコの実から(特に冬の)鶏の良質の添加餌が得られる
◆[胴枯病を防ぐ]:カブラ・キャベツ・小麦・果樹などを若葉の束で打っておく
◆[殺虫剤]:葉を茹でて漉したものをアブラムシに(P146)
◆[コンポスト]:エルダーの木の下に作ったコンポストはきわめて有効(P147)

【料理】
◆[菓子]:花の持つ甘い香りが好まれる/ゼリー・ジャム(特に西洋スグリ)・ミルクを使った菓子に/花をガーゼに包んで調理して後からガーゼを引き出す
◆[果物の煮込み]:花を使う/特にグーズベリーに
◆[タルト]:花・凝乳・卵白で作る“サンボカーデ”/医療用に処方された
◆[ケーキ]:中世料理のコースに組み込まれている/饗宴の出席者は占いで楽しんだらしい
◆[エルダーフラワー・コーディアル]:花から作る砂糖水/夏の冷たい飲み物/ポットに乾燥した花をひとつまみ入れるだけで甘い香りのお茶が楽しめる
◆[エルダーワイン]:花を浸す
◆[葡萄酒]:赤が流行になったときに白に実を入れて出荷した(中世)
◆[ピケット](葡萄の2番煎じ):中世の農民はこれを飲んでいたのだが圧搾機を用いるようになりその質が下がった(14・15世紀)。そこでアルコール度を高めるためにエルダーの実を入れた
◆[果実酒]:実から作られた(中世)
◆[フリッター]:花をバターで炒める/夏のデザートとさて
◆[アップルパイ]:実を加えると風味・色は一足違った焼き菓子に仕上がる
◆[実のスープ]:寒い季節の祭餐
◆[ジャム][ピューレ][ゼリー][シロップ][酢][着色料]:実をこれら家庭の保存食に幅広く利用/ジャム・ピューレはビタミンに乏しい冬に日々のパンに添えて食べた
☆生垣で採れる果実のジャム(P211)
☆エルダーの花のシロップ(P214)
☆春野菜:エルダーの花のワインで蒸したリーキ/ポロネギ(Allium-porrum)(P177)
☆エルダーの花のパンケーキ(P204)
☆グーズベリーとエルダーの花のスフレ(P206)

【症状・薬効】
◇苦辛い・冷却性のハーブ,解熱・消炎・刺激緩和作用がある
◇花・実には利尿/変質/抗カタル効果がある
◇葉には殺虫/殺菌/治癒効果がある
◆ゲルマン古来の薬草の1つ/“生きた家庭薬局”と呼ばれた
[インフルエンザ][風邪][カタル][副鼻腔炎][発熱性疾患]:花・実を内服(ワインを加える,砂糖を加えて煮詰める,牛乳で煮る,ハーブティー)
[催眠効果]:花のハーブティー
[リウマチの諸症状]:実を内服
[便秘][関節炎]:樹皮を内服
[軽い火傷][打撲][腫瘍][霜焼け]:葉・種皮を外用薬として(P275)/ラードの中で煮て軟膏にする
[眼の痛み][皮膚炎][口内潰瘍][軽い傷]:花を外用薬として
[黄疸]:熱した石にエルダーの葉を置いて水を注ぐ蒸気浴が良い
※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


[英名]Common-Fig
[学名]Ficus-carica
クワ科/落葉半高木
小アジア・アラビア南部原産
高さ3~6m
[枝]:成熟すると灰褐色
[葉]:互生/葉柄をもつ/掌状に3~5裂/肉質で大きい
[花]:淡紅白色/雌雄異花だが1つの花嚢内にある
[果実]:花嚢が果嚢となる/中に入っているのが痩果/果嚢の色は淡黄色~紫・濃紺まで様々

【分布・育て方】
◆(挿木苗を)温暖/保水力がある/過湿にならない所/土壌は中性~微アルカリ性の所に植えるのが最適
◆ヨーロッパでは生産は地中海地域に限られる/ライン川上流の谷では香りの弱いイチジクが採れる/イギリスでは充分に熟さないが古代ローマ人は持ち込んで食べていたらしい/(伝説)トマス・ベケット(1118-70)がローマから持ち帰った
◆潅漑技術の伝播とともに中近東からマグレブ諸国・アンダルシア地方へともたらされた植物の1つ(10世紀~)

【伝承など】
◆[新約聖書]:イチジク桑(Ficus sycomorus)もあるが、これが「桑」と誤訳された(これは不味くて食べられないが、古代エジプトミイラの棺材とされた)
◆[エジプト]:オシリス信仰(冥界の王=農業の神:人は大地より出で大地に還るという思想の反映)は基本的なものとなる
◆[地中海世界]:痩せた土地でも果実ができるので「生命の最も高貴なもの」として語られた
◆[ギリシア]:クレタ島から伝わった/ディオニュソスの聖なる「モノ」とされた・ディオニュソスの像は柔らかいイチジクの木から好んで彫られた(そこにイチジクの葉で飾られた)/果実は女性の性器を示すという(豊穣さは女性とイメージを繋げられたから)/アテネの人々はサルゲリア祭(毎年5月)でイチジクの精霊に仮装した
※ローマは略

【花言葉】
 『多産』

【民俗学的なこと】
◆[生命の木]:世界各地にてモチーフとなる
◆[知恵の木を表す]:初期キリスト教時代より(後にリンゴに取って代わられる)
◆[欲望の象徴]:原罪との関わりによる
◇男性優位の論理をはらむ初期キリスト教象徴体系の中で「豊饒⇒女性⇒男に欲望を引き起こさせるもの・原罪」というように位置付け(※というよりも現代人から見れば一種の連想ゲーム)がなされた
◆[ユダヤ人・ユダヤ教会の象徴]:“実のならないイチジクの木”は不毛を暗示しており、これが転化した(中世後期~)
◆[救済の象徴]:キリストの『受難』図中にイチジクがしばしば表されるのは「キリストの十字架が救済という実を付けるように、イチジクも自然に果実を実らせる」という考えから
◆[豊穣のシンボル]:数多くの種を持つ
◆[首吊りの木]:ユダが自殺した木とされているが、それ以前にアテネの人ディモンの演説(B.C.3世紀:byプルタルコス)に用いられているのでこちらからからキリスト教が拝借した
◆[睾丸のシンボル]:ギリシア人・ベルベル人など(古代以来広まった解釈)
◆[遊女・売春婦の象徴]:古代ギリシアから現代のウィーンまで/イタリアでは女性の陰部を表す(これはイチジクの熟し方が女性の神秘を何となく示すところから)
◆[イチジクを人に示す]:人差し指と中指の間に親指を押し出す卑猥な身振りのこと(南ヨーロッパからアルプスを越えて北へと広まった)
◇嘲笑を伴って要求を拒否するときのサインとなる/一説ではフリードリヒ・バルバロッサに抵抗したミラノが起源(12世紀後半)
◆[魔除け][非難を防ぐ][邪視を防ぐ]:“イチジクを人に示す”仕草の魔力/それを人々は前掛けの下・ポケットの中でしていた(民衆から貴族まで:イタリア)
◆[御守りにした]:骨製/銀製のペンダントを作った。これをロザリオに付けた(バイエルン)/衣類の中に縫い付けた/コルセットの飾り紐に付けた
◇女性の性器に与えられた魔除けとしての呪術力が、性器を示すイチジクへと意味の転化をしたようだ
◇女性器を「おっぴろげる」仕草は、日常ではありえない故に笑いを誘う。その笑いが悪魔=呪い=病気を追い払う、という民俗学的なロジックだという
◆[求愛]:①農夫の若者が銀の「イチジク」を贈る/②女の子が返したら拒否/③受け取れば承諾で女の子は銀の心臓を贈る(これで約束成立)/④若者は時計の鎖に心臓をぶら下げ女の子は「イチジク」をコルセットの飾り紐に付けた
◆[媚薬]:性器との連想から
◆[ヴァレンタインデーの食卓]:ザクロなど種あり果物が出された(種のある果物は「愛」のための大切なご馳走とされたことから)
◆[家庭の慰安]:葡萄とともに用意された(古代ローマ)
◆[中世にて]:カール大帝は栽培を奨励した/イタリアの農家は8月に干しイチジクを作る(15世紀)/都市の食料雑貨商の看板に使われた

【特徴と利用法】
◇実の収穫は8~9月
◇木全体から出るラテックスは皮膚を刺激してある種の皮膚病を引き起こす
◆[殺虫]:生葉の煎汁を便所に用いる(昔の日本)
◆[白斑][しみ抜き]:乾かして粉にした葉/蜂蜜を混ぜる(エジプト)
◆[椅子][腕輪][花飾り]:イチジクの木材は(新鮮な状態で)強靭/柔軟/容易に曲げられるという性質を使う
◆[金属磨き]
◆[破城槌]:古代地中海世界にて
◆[火葬用][火あぶり用]:古代ローマではイチジクを薪として常に使った

【料理】
◇中世後期ハンブルク商人の取引した消費者向け商品リストにある/ハンブルクで拒絶されたイチジクの実をリューネブルクやリューベックへと送ったという
◇中世の北ヨーロッパでは(南欧から輸入しなければならないので)高価だった
◆[生食][乾果][ジャム]:乾したものパリ(13世紀)にも食されているがもちろん金持ちの食べもの/四旬節の食べ物として修道院では重宝したという
◆[イチジクのケーキ]:オーブンで焼いて作る(ギリシア)
◆[煮リンゴと直火で焼いたプロヴァンス産イチジク]:上にゲッケイジュの葉を載せて料理の最初に出した
◆[3色の甘いいちじく]:レッド・サンダルウッド(紅木:コウキ)・サフラン・いちじく本来の茶色を利用した中世のフルーツ料理
◆[イチジクの木の葉包みの蜂蜜煮]:特に柔らかい葉を使う
①上質小麦・ラード・卵・動物の脳みそで作った詰め物を小分けして葉で包む
②鶏(or)子山羊のブイヨンで下茹でする
③水気をきってから煮立てた蜂蜜で煮る
◆[イチジク・チーズ]:果実を使う
◆[熟したイチジクを含む香辛料]:スペイン・ポルトガルにて
◆[酒]:古代ローマで作られた

【症状と薬効】
[痔][疣取り]:枝・葉・果実を傷つけると分泌するフィジン(蛋白質分解酵素:白い乳液)を塗布する
[緩下剤]:花のうを乾燥させたものを使う
[疝痛]:イチジクとヘンルーダを煮たものを浣腸剤に(byディオスコリデス:A.D.40年頃~90)
[便通][滋養強壮][長患いで顔色の悪い人][喘息][てんかん][水腫]:乾果の作用(byディオスコリデス)
[腫れ][打ち身]:葉から湿布を作る(アラビア)
[下剤][利尿][中毒][緩下剤]:フルーツを使う(エジプト,アラビア)
[気分の落ち込み][神経過敏]:イチジク・ナツメヤシ・レーズン・蜂蜜の混合物がよいという
※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


◎ナツボダイジュ

[英名]Large-leaved-Linden
[学名]Tilia-grandifolia(T.platyphyllos)
シナノキ科/落葉高木
30~35m
[樹皮]:褐色/平滑/後に暗色を帯びる/縦方向に編み目状の亀裂
[葉]:互生/歪んだハート形/6~10cm/葉柄は長い/先端が尖る/縁に鋸歯あり/脈腋に白い腋毛あり
[花期]:6~7月
[花]:両性花/黄白色/2~5個の花が苞から垂れ下がる/冬菩提樹よりも14日ほど早く咲く/冬菩提樹より大きい
[実]:茶色味を帯びた1・2個の種子

【分布】
◆全ヨーロッパ(北はバルト海まで・東はウクライナまで)/広葉混合林・山の麓の高台に生育/標高1000mまで


◎フユボダイジュ

[英名]Small-leaved-Linden
[学名]T.cordata
シナノキ科
25~30m
[樹皮]:褐色/平滑/後に暗色を帯びる/縦方向に編み目状の亀裂
[葉]:互生/歪んだハート形/5~8cm/葉柄は長く尖る/縁に鋸歯あり/脈腋に赤い腋毛あり
[花期]:6~7月
[花]:両性花/黄白色/5~11個の花が苞から垂れ下がる
[実]:茶色味を帯びた1・2個の種子

【分布】
◆全ヨーロッパ(北はスウェーデンまで・東はウラルまで)/低地・水辺の森に生育/標高1800mまで

―――――

【伝承など】
◆[女神の木/愛の木]:アフロディーテ・フライア・聖母マリア信仰の対象となる/女神は菩提樹に豊満・官能的・優しい姿で現れた/葉の形がハート形をしていることによる
◇ドイツ人にとって「愛」「憧れ」「優しさ」のシンボル/ゲルマン人はこの木を女神フリッガに捧げた(フリッガはヴィーナスに相当する)
◆[中世にて]:村の井戸の傍・教会の脇・路傍の十字架像の横・共同牧草地・村のはずれ・丘の上・泉のほとりなどに植えられた/こんもりとした枝を天に向かって広げていた/豊かな芳香・心地良い陰樹を提供してくれた
◆[コミュニケーションの場として]:
◇女たちはその下でおしゃべりをした
◇ボダイジュの下で裁判・祝祭・忠誠の誓い・結婚式が行われた
◇長老たちは村の重要案件を木の下で相談した
◇裁判の司法杖を持つ裁判官の席がボダイジュの傍にあった
◇村人の生活と切り離せないボダイジュが多くの歌に歌われた
◇若い男女の愛を結ぶ木とされた/ミンネザング(恋愛詩)では菩提樹とその梢で歌う可愛い鳥が恋愛の欠かせない点景となった
◇若者たちは遊びに興じた/手にタンバリンを持って木の周りを踊った
◆[ゲルマン神話の菩提樹竜]:菩提樹は竜の棲む木とされている/翼が無いので空中に舞い上がれない代わりに地上では他の竜よりも敏捷だという/菩提樹の靱皮・材のしなやかさがこの伝承の理由だったようだ

【花言葉】
 『夫婦愛』『夫婦の節操』

【民俗学的なこと】
◆[運命の木][家族の守り木]:部族の栄枯盛衰と結びつく/ボダイジュが死ぬと部族が消滅すると信じられた/逆にわざと切り倒して家族を没落させるという手もある
◆[シャーマンの占い]:女神の王国への入口の木として/スキタイ・スラヴで行われた/ボダイジュの下に座り指に3枚のボダイジュの葉を巻いてトランス状態に入った
◆[雷除け][魔除け]:どの農家の庭にも植えている/樹皮を御守りにする/灰を畑に撒くと魔法で発生した害虫が消える/木の葉から漏れる滴すら万病に効くと信じられた/ボダイジュの木の影は発熱を治すとも言われた
◆[不正を嫌う]:“神聖な木”として裁判が行われたことから中世の神明裁判との結びつきが生まれた/ここで不正が行われると菩提樹は耐えられないという
◆[誕生樹として]:女の子が生まれると誕生樹として植える地方もある
◆[名前に残る]:リンダ,リンドバーグ,リンネ,リンデンタール(菩提樹の谷),ウンター・デン・リンデン(菩提樹の下)
◆[裁判居酒屋“ボダイジュ亭”]:チューリヒ・ツーク間での上級裁判権の境界/シュタインハウゼン村では『裁判居酒屋の“ボダイジュ亭”』の食堂を通って引かれた/食堂の天井に分割線が書かれた
◆[気晴らしの場に欠かせない]:(ドイツ南部では)ボダイジュは川べりなどのダンス場に必ずある(例:チューリッヒのリンデンホーフ)
◆[村の自慢]:中世ドイツには幹の太さを記録し競う風潮があった。ノイシュタット(ヴュルテンベルク地方)には約12mの太さの樹があった(1229年)
◆[火を用いた洗礼]:外皮を剥いでそれを燃した火の上で子供を暖める(ヒルデスハイム地方)
◆[ボダイジュの葉]:自由な農民階級のシンボル(ドイツのカード遊び)/巡礼者が持っているものの1つとして

【特徴と利用法】
◇ハーブとして花を利用する:芳香性あり/夏に摘み取る/乾燥させたものを成分浸出液・成分抽出液・チンキにする/保存は1年まで
◇材は建材・薪には適さない(柔らかい・たわみやすい・なよなよしているから)
◆[綱][マット][ベッド][衣類][バッグ]:新石器時代の杭上家屋居住者が(ボダイジュの樹皮を)煮て突き砕いて靱皮から作っていた
◇中世の綱作り職人のマット・綱作り:①菩提樹の樹皮を剥ぐ(5月)/②小さな束にする/③混じりけのない繊維だけが剥がれてくるまで水に浸す(だいたい10月まで)/④太陽のもとで乾かす(1年くらい)/⑤靱皮の出来上がり
◆[衣類][編み物][縄][網][籠][紐][庭師の結び紐][井戸の引き綱][弓の弦][蜜蜂の籠][鞍具][ござ]:靱皮繊維から作る
◆[紙製造]:帯状に裂ける白い内皮で
◆[ピアノの伝響板][書冊](writing-tablet):樹皮は虫が喰わないから
◆[ボワソー升]:柔らかく・軽く・加工が容易・木理が詰まっていて均質という特質ゆえに好まれた
◆[楽器製作]:材が適していただけでなく「菩提樹を特に好むミツバチの羽音の記憶」ゆえに、わざわざボダイジュを選んだ可能性もある
◆[靴屋の皮切り台]:木を使った
◆[彫刻の材として]:リーメンシュナイダーなどのマリア像・聖人像となる/彫りやすい/美しい輝きをもつスベスベした表面を見せる/小さな聖母マリア像は至る所にある/それ以前の女神フレイア像が破壊されて置き換えられた/そうした聖母マリア像は奇蹟譚の対象となる/シュタウフェンの町の聖アンナ像は町出身の彫刻家シクストの作品(1516年)
◇「菩提樹の木材に刻まれた癒やしの聖人像」が、他の木材に同じ聖人像を刻むよりも、治療・予防効果が高いと信じられていた可能性もある
◆[棺桶]:これも菩提樹から作った(ドイツの田舎:都市ではオークも使う)/古くは埋葬の樹だったからだろうか?(部族の者が死ぬと、その遺骸をボダイジュ・オークの木の下に埋葬した)
◆[楯]:ゲルマンの戦士(おそらくケルトも)は楯を彫った/しなやかな靱皮を何層にも巻いて強化した/楯にトーテム動物・精霊・威嚇するモチーフをも彫った/けばけばしく色を塗った/川を渡るときに楯の上に横たわって泳げば容易となる
◆[養蜂]:花の時期には蜜蜂が集まる/蜂のブーンブーンという音を「女神が口ずさむ真夏の歌」と感じた/蜂蜜酒(神への捧げ物)・蜜の菓子と蜜(先祖への供え物)となった/菩提樹の豊かなニュルンベルクの帝国の森は“帝国の蜂蜜の庭”だった(中世を通じて)
◆[化粧水]:花水(1カップの水に小さじ2杯の花を入れて熱湯で煮出して抽出・漉す)・ハーブティーは、肌を強くする/洗浄する/マイルドなので過敏な肌によい
◆[歯磨き粉]:菩提樹炭1/サルビアの葉1を粉状にして混ぜる。歯肉を清浄・殺菌・強化する
◆[獣医学]:菩提樹炭は家畜の下痢を止める/腹部の膨満・中毒に効く
◆[家畜の飼料]:葉を使う

【調理】
◆[甘味]:樹液から一種の糖が抽出できる

【症状と薬効】
◇粘液質のハーブ,利尿/去痰/鎮静/血圧降下/発汗促進/鎮痙/消化管機能改善作用がある
◇炭には殺菌作用がある
◇花の薬湯をフランスでは好んで飲む
◇中世の薬局に最も好まれた薬草だった/ライ病院・施療院の傍らに植えられていた(13世紀~)
[高血圧][動脈硬化][不安による心臓血管疾患][同・消化管疾患][尿路感染症][発熱性風邪][インフルエンザ][呼吸器カタル][偏頭痛][頭痛]:内服する(蜂蜜を混ぜる),動脈硬化にはセイヨウサンザシと/神経緊張にはホップと/風邪・インフルエンザにはセイヨウニワトコと(それぞれ)合わせて用いる事が多い
[腹部の膨満][嘔吐][胃炎][腸疾患][胸焼け]:1日1~2欠片の菩提樹炭を飲む/胃の毒物・酸を吸着する/その後すぐに下剤を飲んで体外に排出する
[冬の強壮茶]:菩提樹の花2/サクラソウ1/ポプラの蕾1
[目の炎症]:ボダイジュのハーブティーを冷まして漉したものを布に染み込ませて瞼の上に置く
[瞳をスッキリさせる]:夏に寝る前、新鮮な葉を顔全体(特に瞼の上)に載せる(byビンゲンのヒルデガルド:12世紀)
※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください

山毛欅
[英名]Common Beech
[独名]Buche
[学名]Fagus silvatica
ブナ科/落葉高木
[幹]:直立/高さ30m/直径2.0~2.5m
[樹皮]:灰色/平滑/銀灰色
[葉]互生/有柄/卵形(or)楕円形/先端が尖る・縁には粗い鋸歯がある/長さ6~10cm・幅3~5cm
[花期]:5月/数年おきに咲く
[花]:新芽とともに開花/雄花は新枝の下部から長い枝で垂れ下がる/雌花は新枝の葉えきから出る
[果実]:9~10月/殻斗(果実が入っている)は直立/長さ2~5cm

【分布・育ち】
◆北部・東部を除く全ヨーロッパに分布,石灰に富んだ土壌/霧で湿った空気を好む/年間500mm以下の降水量ではダメ/厳しい冬の寒気にさらされる場所でもダメ/標高1000mまで
◆春のブナの森の特徴:品のいい幹がすうっと伸びている/上の方でパラパラと葉を付けている/下枝はあまり張っていない・下草はない/全体的に明るい
◆ブナは自らの樹冠が作り出す日陰は生きていくのに欠かせない(幹の樹皮層が厚くないので直射日光・温度変化から守る/地上を平らに這う根も太陽から保護しなければならない)のだが、これによって生長途中の他の木々から光を奪ってしまう
◆日当たりが悪くてもブナの若木は平気だが、オーク・トウヒの苗・カエデは負けてしまう。ブナ林の植物は日陰が作られる前に大急ぎで花を開かせる。それらの草花は(ブナと同じく)湿り気のある石灰土壌を好む
<例>アネモネ(Anemone-coronaria),スハマソウ(Hepatica-nobilis),プルモナリア(Pulmonaria-officinaris),スミレ(Viola),アマドコロ(Polygomatum odoratum),クルマバソウ(Galium odoratum),ベアラウフといった植物が該当する

【伝承など】
◆[キリスト教の伝説]:「神聖なブナの木が身を開いて、敵に追われた聖人を隠して救う」「苦悩する聖母マリアの姿を現して教会建立の縁起となる」といったものが多い
◆[ブルターニュ地方にて]:木の中に隠れ家を求めた“苦痛に満ちた死者の霊魂”がいて、彼を救済するのは生きている者の務めだという(例:2本のブナの木の伝説)
◆[ゴシックの大聖堂とブナ]:丸天井の樹冠・静けさ・和らげられた光をもつブナの森は、ゴシック建築のモデルだった。高い円柱・分岐した尖塔丸天井・大きなステンドグラスの窓のある教会堂の身廊は、ブナの森を石へと形態変化させたものと言える。カテドラルの音響(グレゴリオ聖歌・大オルガン)は、霊感を与える森のざわめきそのもの

【花言葉】
 『繁栄』『楽しい思い出』

【民俗学的なこと】
◆[供儀の木]:屠られた動物の頭蓋骨・皮を掛けた/神々しい樹冠の葉ずれの音から祭司は未来を占った
◇ブナの森は鬱蒼とした雰囲気なので供儀にはピッタリだった
◆[籤占い]:古代ゲルマンで枝を切って使った(byタキトゥス)/「若枝を小片に切ってある種の印を彫りつけ、無作為に白い布の上に撒き散らし、それを3度取り上げて、予め彫りつけられていた印によった解釈する」というやり方/樹皮にはルーン文字が刻み込まれた
◆[クリスマスの薪]:“ユール・ロッグ”の灰は新年に祝福として野原に撒いた
◆[雷はめったに落ちない]:雷雨に襲われるとブナを探して雨宿りした
◆[占い]:穀物商人が木の芽の出方で景気を(南ドイツ)/農民が収穫・天候を占う
◆[病気を移し取ってもらう]:(民間医療)北ドイツ・フォアポンメルンのメクレンブルク近くのライトフルトのほとりに「奇蹟の木」がある。この古いブナの木は幹の一部が癒着して穴のようなものができている。病人がその穴をくぐり抜けると再び健康になる、という
◆[豊穣儀礼]:実から供儀のパン“ブーヒェレ”を作る/万霊節(サーマイン祭:11月1日)に黒い粉のパンが焼かれた/死者のための餐だった
◆[生まれる前の子供がいる場所]:赤ん坊はブナのくり抜かれた幹から生まれるという(ケルン)/“幼児樹”という
◆[私生児がたくさん生まれる]:ブナの実がたくさんできると
◆[男狂いの女性になる]:ブナの木のたらいで湯浴みした女の子の将来
◆[捧げ物としての人形]:ブナの材で作った子供の人形を水浴びの泉に捧げる/(すると)超感覚的存在が子供を安らかに守る(古いガリアの信仰)
◆[切り倒すと死刑]:実のないブナの樹を切り倒した者は首された(古代ゲルマンの部族法)/都市では当局が規定した森林用益権での制限対象となる(オークとともに)

【特徴と利用法】
◇紅葉が美しい/栄養素に富んだ葉は良い腐食土になるから“森の母”とも言われる/木は大きくなり過ぎないように定期的に伐採された
◇木部を採取(木クレオソート:乾留によって得られるタール,正露丸の成分)
◇種子〔オイル〕を利用する:1kgのブナの実から0.5Lの良質のオイルが採れる
◇焼けるような味/刺すような香り
◇収穫期:ぶなドングリは10月/葉は5月
◇建材には適さない(裂けやすい・もろい・害虫に冒されやすいから)。加工すると強くなるが収縮しやすい
◆[豚の飼料]:中世には家畜の餌になっていた/ぶなドングリで飼育された豚の肉質は良好とされる(ただしブナだけで育てるとハムが不味くなる)/オイルを搾った油粕も肥育飼料となる
◇ただし棒でオーク・ブナを打ってドングリを落とそうとすると次年度以降の収穫を損ねる恐れがある
◆[山羊][羊][牛]:若芽を求めた
◆[木工][家具][各種日常道具][玩具][敷居][橋げた]:材の用途はきわめて広い
◆[松明]:普通の松明は簡単に火が着かないからブナの松明が好まれた(中世)
◆[薪]:大量に使われた(ドイツ)がブナの薪を燃やすのは裕福な人だけだった/高価な薪としてパリにはイオンヌ川・マルヌ川で筏で運ばれた/国王はブナ材の価格をしばしば統制した
◆[灰汁の製造に]:へっつい(竈)・暖炉の中にたまったブナ灰(カリウム化合物を大量に含む)を用いた
◇灰汁は泡立ちか良い/石鹸液のように汚れを落とす
◇ブナ灰にぬるま湯を注いで1晩置いてから上澄みを濾過して出来上がり
◆[灰汁から石鹸を作る]:灰汁+実+山羊の油を混ぜて作る/髪の毛の色を明るくする効果ありという/髪の毛をケアする
◆[肥料]:灰を畑に撒く
◆[ガラス製造]:ソーダ以前はブナ灰を用いた

【料理】
◆[飢饉時の食糧]:実が生命を救った(旅の非常食にもなった)/貧者は薬草のように茹でた/ブナの実パン“ブーヒェレ”は万霊節に貧者に贈られた/ただし有毒なので大量に食べる前には茹でなければならない
◆[サラダ]:葉・種子のオイルを使う/若葉は黄緑色で酸っぱい味がする
◆[食用油]:種子のオイルを使う
◆[酢]:農婦が籠一杯のおが屑を台所に持ち込んで作った
◆[ワインの色付け]:おが屑を使う
◆[ワイン・酢の濁りとり]:ブナの小さな木片を入れると除ける
◆[肉・魚の香ばしい味付け][長期保存向け]:赤く輝いて燃えるおが屑の煙の中に吊すとよい
◆おが屑:農民がブナを鉈で割って薪小屋に積むときに良いのだけは置いておき、そこから作った

【症状と薬効】
◇殺菌/刺激/去痰性のハーブとして機能するという
[慢性気管支炎][上気道感染症]:内服する
[皮膚疾患][消毒剤][腐食剤]:木クレオソートを外用する(◆ただし発癌性あり)
[傷][潰瘍]:ブナ灰(殺菌作用がある)をオトギリソウの油と混ぜてペースト状にして塗布する
[熱性の潰瘍]:葉でくるんで冷やす
[腫れ目][もらいもの]:葉を次々に貼り替えると冷却効果がある
[重い胃の病]:同種療法に木クレオソートを使う
※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください

ヨーロッパナラ/楢(樫・柏・橡は日本種)
[ドイツ名]:Eiche
[学名]:Quercus-robur
ブナ科/落葉高木
25m以上になることも
[成長]:長寿(1000年にもなる木もある)/成長が遅い(樹齢80年で幹の直径50cm以下・100年を過ぎると毎年2.5cm程太くなるだけ)ことが材質の固さをもたらす/材質は根がどれだけ力強く成長するかに左右される(土層が固いほど根・幹ともに曲がりくねって伸びる)
[樹皮]:平滑/灰色/年をとると粗くひび割れて黒くなる
[葉]:聖ヨハネの祝日(6月24日)頃に新芽を出す
[花]:4~6月
[実]:青銅色から黄褐色に紅葉して散る/ドングリが成る(ただし樹齢20年ほどになるまではつけない)

【分布・育て方】
◆[歴史的に]:かつてはヨーロッパ大陸・イギリスを覆った/ヨーロッパで最も普通の楢
◆[イギリスにて]:どちらかというと北部よりも南部の方が多い/水辺の森に育つ(ニレ・ハシバミ・ポプラとともに川岸の混合林を形成)
◇北部の原野は岩壁で区切られる/松・モミ・トネリコが多い
◇中部の森の下生えはシダ類(オークの下が空き空きだから):秋には黄色・褐色に変わり、冬は一面に落葉する
◇南部は生け垣が原野を区切る/生け垣沿いのオーク・ブナ・(幾列もの)ニレとなる

【伝承・歴史など】
◆[雷と神様]:しばしば落雷に見舞われるので「神の依代」と考えられた/深く根を張りしばしば水脈が交差するところに根を伸ばすことが落雷を(他の木よりも)呼びやすい原因となっている/ゲルマン人は雷神ドナーの木とみなした
◇雷除けの諺:“楢は避けるべし/ブナを探そう/菩提樹を見つけられない場合には”
◆[雷と火]:雷の木として大地に「宇宙の火=豊饒をもたらす天の恵み」を伝えると信じられた/丘の上・聖なる場所に設けられたインド=ゲルマン語族の聖なる火にはほぼオークの材だけをくべた(生贄の火と同じ)
<例>ヴェスタの聖域(古代ローマ)でもオークの薪が焚かれた/古代ケルトの火神Baal(これを祭るのがクリスマスの起源である冬至の火祭り:Yule log)に燃やすこの木は太いオークの丸太だった
◆[古代ケルト]:ドルイド教において樹木崇拝の対象だった/夏至・冬至にオークの薪を燃やす/聖なる白牛をオークの木の下で生贄にささげた/楢の木に生える小さな草=「楢ヤドリギ」が一番神聖な植物であり毎年の夏至・冬至にドルイド僧が刈り取った
◇刈り取りの儀式:①ドルイドは白いだぶだぶの衣をまとって楢に登る/②金の鎌で刈る/③刈り取った後で土に触れさせないまま人々に配ったオーク
◇つまり一度も土に触れずに育ち・刈り取ったことになる。土に触れた瞬間に聖なる力が逃げると人々は信じた
◇人々はこれを御守りとして1年中ずっと身に付けた
◇クリスマスの「ヤドリギの枝を飾りに使う」風習はこの名残り
◆[神聖な木]:アイルランドではオーク・榛の木(ハンノキ)・リンゴ・シラカバ・ハシバミ・セイヨウヒイラギ・ヤナギは“7種の神聖な木”とされた/ケルトのドルイド(Druid)とは「オーク:dru」+「知っている:wid」=「オークの賢者」という意味/オークを切る者は雌牛1頭の罰金を課せられた/聖ブリジッド(2月1日の聖人)はこうした風習を前提にとあるオークの木陰にキルダラ(楢の木の教会)女子修道院を建立した
◆[神託の木]:丈高く育ち根を深く張るので「天へのはしご,シャーマンの木,天上世界と冥界を結びつける」木として、神託をもたらすのに必須とされていた
<例>ゼウスに捧げられたオーク(エピルスのドドナの森にある)の神託,マルセイユ近くにあったという聖なる森(byルカヌス:1世紀)
◆[民会の木](古代ケルト・ゲルマンにて):全ての部族は聖なるオークの下で部族会議(or)民会を開いた/ケルトでの民会の流れは以下の通り
1.首長は(天の支配者の地上での代理として)オークの真下に顔を東に向けて席を占める
2.民会は満月(or)新月のときに召集された
3.場所を(此岸と彼岸の境界を示す)ハシバミの枝を挿して囲んだ
4.全員が集まるとドルイドによって神に捧げ物(花冠で飾った聖なる白い雄牛・馬)がなされた
5.神酒として麦芽醸造酒(ホップを加えていないのでビールではなくこう呼ぶ)・蜂蜜酒をオークの神に捧げた(特にヒヨスを漬けた強い麦芽醸造酒をオーロクスの角に入れて飲んだ)
6.ドルイドは王よりも先に口を切らねばならない
7.ハシバミの杖(or)フリントロック製儀式用手斧が回されてから一同は発言できた(聖なるオークの下で真実と異なることは語ってはならない)
8.最後に首長が語って裁きを言い渡す
◆[古代ゲルマンにて]:“森の王”とされる/堅牢さ・強さ・森厳さ・太くたくましい根・巨人の腕を思わせる枝を左右に大きく伸ばした幹をゲルマン人は神聖視した/重要な決定を下す集会のときにオークの樹の下に集まった
◇ゲルマン人は森を神聖視し、オークの森には供儀を行う祭司の他は足を踏み入れることを許さなかった
◇祭司は暗闇にじっと座り、樫の樹の葉から漏れるささやきにじっと耳をすまし、神意を聞き取った
◇ベストなど悪疫が流行った時に樫の樹の下に集まり、供儀を捧げて祈った
<例>祭司は潔められた山羊・馬を屠る/その血をオークと民衆の上にふりかける/肉は鍋で煮て神に捧げる/首を幹にぶら下げる
◆[古代ゲルマンの雷神]:ゲルマン人はこの樹の神聖さを犯す者に対して生命(or)財産を失う刑を科した/オークの皮を剥いだ者に「腸を引き出して樹の幹にぐるぐる巻きつける」刑を科した(中世)/カッテン族のドナーのオークの中に雷神ドナーの立像が安置された/その樹冠の下で彼らは裁判・祭儀を行った/
◇この樹はカールマルテルの特許状を持ったボニファティウスにより切り倒された(723年)
◇さらに教会は、雷神ドナーの代わりに(天気の守護神として)聖ペテロを充てた
◇異教の神をキリスト教の聖人で置き換えた典型例
◆[中世ドイツ]:レーゲンスブルクの聖エメラム修道院の1修道士がオークの巨木に対する畏敬が残っていることを報告している(11世紀)/中世いっぱいはオークの伐採に関する迷信は残っていた/農民戦争の際に下記の「境界木」に農民が群をなして縛り首にされる、という出来事があった
◇ただし農民戦争以前にオークで首吊りにされうる森番の事例もある(羊飼いの森林内放牧を阻止できなかった場合)
◇楢が「ドイツの紋章樹」として愛国的礼賛がなされたのは近世後期(18世紀~)
◆[オークの森の消滅]:豚の過剰放牧によってドングリだけに止まらず幼木までが食い尽くされてしまって何本かの古い木だけが残った/“節くれだった樹木の間にはヒースの繁み・いばらの藪が残っただけだった”とも言われた/そこで(成長が早い)トウヒ・白樺・松が植林されていった
◆[イギリス]:英国でオークと言えばQ.robur/Q.petraea(Durmast-Oak:フユナラ)をイメージする/どっしりした太い幹・大きな樹幹冠を持つこのオークが「あらゆる樹木の王様」だった
◆[巨大さ]:スコットランドの英雄ウィリアム・ウォレスは100名の部下とともに1本のオークに身を隠した、と伝えられる。実際に葉が広がった大きなオークならば、大勢の人間を隠すことは可能らしい

【花言葉】
 『安定と歓待』

【民俗学的なこと】
◆[重要な決定]:重要な会合はオークの木の下で開かれた/記念文書の末尾には『オークの木の下で』と書かれている
◆[親切なもてなしの象徴]:人類に最初の食・住を与えたから
◆[結婚とリンクした習俗]:結婚を考えている若者は婚礼に先立って楢の若木を2本植えなくてはならない(ドイツ・スイスの法律:中世まで残った)
◇太古のドングリ食文化の名残りである可能性もある
◆[人間の象徴]:(『ガーウェイン卿と緑の騎士』において)ガーウェイン卿は落葉性オーク(死んでも蘇る)/緑の騎士は常緑性のオーク(不死)を象徴している
◇“オークの美徳は人間の美徳”とも
◆[最高の栄誉]:古代ローマではオークの葉の冠“Civic-crown”を「戦友の命を救った市民に与える最高の栄誉」とした/忠誠・堅固・戦いの勇気との結びつきは各地に見られる
◆[扉の番人]:ローマ神話のヤヌス神(門の神:1月を司る)とオークは同一視されていた
◆[浄火の炎]:これをつけるのが許されたのはオークだけだった/着火手順が「オークの厚板にあけた穴にオークの棒を押し当てて回す→やがて木がくすぶり出して火口が燃え始める」なのはどの地域も共通
◆[浄火の魔力]:その炎の上を3度行ったり来たりして飛び越えた少女は多産になる/火で真っ赤にあぶった焼印を最初に自分の家に持ち帰った少年は(夏至もしくは冬至から1年間)家に幸運をもたらす/家畜の病気が流行っている時にも浄火は行われた
◆[クリスマスの竈に](ユールロッグの名残):オークの丸太を竈に詰め込むと(竈の口は家の門の1つとされたので)家中に祝福をもたらす/次のクリスマスに新しい丸太を入れる/その時には古い丸太の灰はすり潰して十二夜(クリスマスに続く期間で1月6日まで)に畑へ撒き散らす
◆[浄火の灰の魔力]:夏至にも畑に撒き散らす/病気の牛が灰の上を歩くと治癒する/雷を防ぐ魔力をもつ
◆[5月祭の樹]:ボダイジュ・モミ・ゲッケイジュとともに
◆[ミッドサマーの炎](6月24日):オークを燃やす
◆[キリスト教も利用]:布教に際してオークの木陰に人々を集めた/祭礼・舞踏・行列などもオークの周りで催した(このオークは“Holy-oak”“Gospel-oak”と呼ばれた)/“Gospel-oak”の下で虚偽を語ってはならない・その場所で司祭は福音書を朗読する
◆[教区・荘園の境界標]:“Gospel-oak”が使われた/境界巡回行事(村人が境界を練り歩いて隣村との争いに備える習わし)にはこうした木は必ず行列のルートに加えられる
◆[境界木]:広大な伯爵領の標識として(ドイツ)/互いに徒歩で1時間以内の間隔で立っていた/寿命が長いから目印に使える
◆[裁きの木]:近世まで審理と結びついていた
◆[不正は許さない/神聖さのシンボル]:神聖な木なので、その下で不正が行われたりするとドングリの実がならなくなるという
◆[妖精の住処]:オークが様々な生命を養いうるので母性的要素も持っている/偉大なる大地の女神のお供が“木の妖精ドリュアス”だった
◇ゲルマン神話では「エルフ(妖精)が住んでいる,幹の後ろが出入り口になっている」とされて、そこを触って病気を治すまじないがある
◇イギリスでも「妖精(地方によってはロビン・グッドフェロー)が住む,木を切る時には呻き声・悲鳴が聞こえる」と伝えられる
◇オークに宿る精霊という伝承は(上記に限らず)多くの民族に共通する
◇妖精・精霊の特徴:特にオークを好む/うつろな洞(うろ)を住処とする/枝が枯れ落ちた穴から出入りする/木の妖精ドライアドは木こりの斧を最も怖れる
◆[農民の家]:木枠と泥壁で作られるさいの枠となる/壁の土台になる垣を構成した
◆[護り木(家木)にならない]:トネリコ・菩提樹・ブナはよく家の守り木としての役割を与えられて植えた/しかし雷と結びついたオークを人々は家の近くには植えたがらなかった
◆[占い]:天候予知・農耕の指標だった/聖ミカエルの日(9月29日)の状態で翌年の夏を占う、など
◆[病を移す][骨折治療][関節炎を治す]:オークの樹の穴に「骨折した人・関節炎の人を通す」と樹が病・痛みを引き受けてくれると信じられていた
◇しかし穴がある樹はなかなか無いので、代わりに「雷に裂かれた幹の間を通す」方法を使った
◇もう1つの方法:①若いオークの樹を日の出前に縦に割る/②1人が割木を抑える・もう1人が病人を間に押し込む・さらにもう1人が病人を受け取る(これを完全に沈黙して行う)/③割られた木を元通りにして縛り合わせる/④木が元のように癒着すると骨折・関節炎は治るという
◇オークの妖精信仰から、腫れ物・傷などの患部を穴につけると治るともいう
◆[歯痛][丹毒][熱冷まし]:民間療法として用いられた
◆[鶏を狐から防ぐ]:庭に楢の杭を2本打ち込むとよい
◆[呪い除け][魔除け]:猟師・猟犬が割ったオークの枝を踏めば呪いを免れる/木陰にいる者・葉を身に付けている者に魔物は近づかない/家畜を病から防ぐために葉を食べさせる
◇蛇除けには小枝・葉を使う
◇呪いによる麻痺には日の出前に咲いた樫の木の間を通り抜ける
◇魔法でビールが酸っぱくならないようにするためには緑のオークの枝で酵母を撫でる
◇牝牛の家畜からの追い出し(4月)の時に、オークの葉3枚/イチョウシダの葉3枚/ヤネバンダイソウの葉3枚を家畜に与えた(ヴァイセンブルク地方)
◆[ブラインドの先の球]:ドングリを模して作られたもの
◆[魔女のシンボルともなる]:ワルプルギスの日(5月祭が行われる5月1日:前夜に魔女たちがブロッケン山に集まると言われた)に魔女たちがブランコをした
◆[クルミは敵]:オークとクルミを一緒に植えると必ずどちらかが枯れるという

【特徴と利用法】
◇硬い材:加工しやすい/耐水性がある/実は屈曲している材の方が有用
◇樹皮:春・秋に樹齢10~25年物から収穫/薬用には乾燥させたものを煎じ薬・成分抽出液にする
◇葉:タンニン酸に富んでいて朽ちるのが非常に遅い/長いこと木の下に積もる/葉は年に数回出す
◇ドングリ:大木だと百数十~二百数十kgのドングリが実る/9~10月に収穫
◇動物との関係:いつも鳥・動物・昆虫・芋虫などでいっぱいでもそれが原因で枯れたりしない/楢と関係の深い動物にとってはドングリと葉が重要な食べ物となっている
<例>リス(楢の角笛),カケス(Garrulus‐glandarius:ドングリのカケス),ナラタマバチ,カミキリ虫(楢の虫)
◇コピスの仕組みを使えば得られる材木のサイズは一定する/常緑樹が混じった密な森で育つと細くて高さのある幹が育つ〔■そこのオークは速やかに育たなくてはならないから:北方樹林と境界を接するスカンジナビアの混合林の場合〕
◇コピスとは:思い切って地上すれすれのところで木を切ってしまうが、次の春にそこから若枝が一斉に芽を出せば材木の供給が継続的に行われるようになる。低くなることで一部は動物に食べられるかも知れないが、それも覚悟の上だった:
1.地中に残った根は懸命に若木を出すので成長力が盛ん(元の木の2倍以上)
2.1本の高木の代わりに十数本の手頃な若木となり、とてもよい丸材・角材が手に入る
3.このやり方では、木の寿命が1本立ちの高木よりも長くなる。トネリコの場合だと標準的寿命は200年/コピスにすると500~1000年となる
<例>イギリスのある地方のニレのコピス:1本の木の根から直径6mの範囲内に数十本が生えている/もとの木の樹齢は900年以上
4.コピスを形成するにはオーク・トネリコ・サンザシ・ハシバミ・ハンノキ・ニレなどを切り倒す
5.針葉樹だとほとんどは地面スレスレに根元から切ってしまうと新しい芽は出なくなる。ただしイチイだけは例外(コピスにした細い幹は強くしなやか/丈夫な紐になる)
◆[歴史的遺物]:“アーサー王の円卓”はオークの1枚板(民会の木として使われていたことが物語に反映された)/ウェストミンスター修道院内のエドワード証聖王の棺/マインツで見つかったローマの軍用道路の橋の支柱
◆[貴人の棺]:樹木の王様だから(英)
◆[豚の飼育]:団栗を食べる(秋~冬)/森林内での豚の放牧を「pannage」と呼ぶ/『ドゥームズデイ・ブック』はオークの森の評価基準を飼育可能な豚の頭数とした
◇ドングリで育てた豚は力強い肉・硬い脂肪が特徴/ブナで肥育した豚の薫製肉は鯨油のような味がする、と言われる]
◆[飼料にならない]:落ち葉を動物は喜んで食べようとはしない
◆[建築][水車]:セヴァーン川(イギリス)の防波堤には古代ローマ人が打ち込んだオーク材がある/最古の建築物・家具はオークで作られ「ほぞ穴/ほぞ」を組み手として使った/城門もオーク材
◆[家具]:オーク以外の材木も家具の材料となったが、家具を食い荒らす害虫にやられずに今も残っているのはほとんどがオーク製のもの
◆[酒樽]:貯蔵/醸造用に
◆[桶][たらい][刀剣の柄][スコップ/ツルハシの柄][器具][工具][腰板][窓枠][織機のシャトル][車輪][荷車の台][九柱戯のボール][固定式テーブル]
◇ある伯爵はオスナブリュックで、オークの板でできた「箱」の中で6年間を過ごさねばならなかった。そこでは彼は立ち上がることすらままならなかった(1444年前後)
◆[船舶用材]:近代以前の海軍力の要だった/ディーンの森(グロスターシャー)の焼き討ちをスペインの密使が試みて失敗した(エリザベス朝期)
◆[柵]:1.オークの割材を杭として地面に打ち込む/2.杭と杭の間にしなやかな細い木を編み込む/3.編み込みには榛(オークの森の低層を構成する)などが用いられた
◇悪質な犯罪に対して「罪人に自分の家の柵を飛び越えて出て行かせて2度と戻ることを許さない」刑が課せられる場合があった。柵が高すぎれば棒高跳びをさせられた(中世フランス)
◆[杭垣]:オークの丸太/割材の柱を互いに近づけて地面に打ち込み、しなやかな細枝で繋ぎ合わせる
◆[沼地・湿地の通行路]:杭には榛の木も使われる/オークの厚板を切ったものを繋ぎ合わせた/厚板は縦横にきっちり並べる/刻みをつけてピッタリ合わせて表面をいっそう安定させた
◆[皮なめし]:樹皮/葉にできる虫こぶ(ナラタマバチが卵を産みつけるために刺した葉にできる)をタンニン原料にした
◇虫が与える刺激によってタンニンの生産が刺激される
◆[インク]:虫こぶから作った
◆[染料]:ケルメス(赤色)オーク(Quercus coccifera:常緑性/葉は西洋柊の葉にそっくり/赤いゴールができる)
◆[薪炭材]:熱含有量が高い/燃焼が安定しているので、好んで溶鉱炉の燃料として用いられた
◆[酢酸]:詳細は不明
◆[焚き付け]:葉を乾燥させ細かくする

【料理】
◆[パン]:飢饉の時にドングリ粉を使った:①殻をむく/②細かく切って水を注ぐ/③一晩そのままにしてから水を捨てる(水が澄むまで何度も繰り返す)/④オーブンで乾燥させる/⑤粉にひいて同量のライ麦粉(or)小麦粉と混ぜる/⑥混合粉からパン種を作りそれを焼く
◇この手順がドイツの古い薬草書に記載があるらしい
◇出来上がりは黒くて外側が堅い・中はスポンジのよう/味付けにホースラディッシュがとても合ったとのこと/③のあく抜きの水に香りのよいハーブを浸しておくとよい
◇古代にも飢饉の時にはパンを作った(byブリニウス)/アングロ・サクソン期にも飢饉を救っている/臼があるからと言って麦を食べていたとは限らない
◇食糧としてのドングリを追い払ったのはジャガイモ。その普及と並行してオークが減少したことでドングリも減り、そのために豚は家畜小屋の中で残飯・食材廃棄物を餌として与えられるようになっていった
◆[堅果]:苦味・有毒成分を取り除く手法はネイティブアメリカンが心得ている
◆[ケーキ]:かさばらずに体力のつく食べ物/持ち運びに便利/何ヶ月も保存可能
◆[スペインの軽食]:塩味を付けた焼きドングリ(~20世紀初期)
◇あく抜きして渋み成分さえ抜けばよいし、南欧・北米に分布するトキワガシ(Quercus-ilex)のドングリは十分に甘くそのまま焼いて食することができる
◆[バターミルクと混ぜる]:ドングリ粉と混ぜるのをクルド人が食している
◆[スープ]:上記①~④の処理をした粉を中世では(地域によっては)スープに入れていた可能性もある/非常に栄養豊富/木から揺すり落としたドングリから作るスープは良質・白く滑らか/地面に落ちているドングリから作るスープは黒っぽくてあまり好ましくない
◆[葡萄酒]:変質しそうなワインの保存にオークの灰を加える

【症状と薬効】
◇苦い・収斂・殺菌性のハーブ,消炎・止血作用がある
◇タンニン酸には収斂作用があり多くの病気の治療に用いられてきた/ドングリの治癒力はパラケルスス(テオフラストゥス・フォン・ホーエンハイム:1493-1541)も強調しているらしい/煮てオイルを抽出できる(■医療のみならずオリーブオイルの代わりにもなる)
[下痢][赤痢][出血][子宮脱][脱肛]:内服するのが有効という
[胃壁の病気][腸粘膜の病気]:オーク樹皮から作ったハーブティーを服用するという
[下痢]:オークの樹皮・トルメンテイル(キジムシロ:Potentilia-sprengeliana)の根を使ったものを服用した:①同量ずつ混ぜる/②小さじ1杯に2カップの冷水を注ぐ/③煮沸してから濾過
[痔][直腸脱][膣カタル][子宮炎]:オーク樹皮の座浴が効くという
[吹き出物][乾癬(皮膚角化)][白癬][脂肪肌][しもやけ][皮膚炎][甲状腺腫][腺腫脹][静脈瘤][軽い怪我][湿疹]:湿布/洗浄剤として樹皮の煎じ汁を用いるという
[子供のしつこい湿疹][子供の腺腫脹]:楢樹皮浴が特によく効くという
[うがい薬]:樹皮(小さじ山盛り2杯)を水0.5Lに加えて煮くだしたものを用いるという
[扁桃腺肥大][扁桃炎][緩んだ歯肉]:上記うがい薬の異なる効果とされる
[脾臓疾病]:ドングリの粉を用いるという