こんなに身近にいながら、気づかないとは自分でも呆れるが、最大のライバルが目の前にいると言うのにな・・・。相場は混乱した様子で自分を見つめる園田を面白がる余裕さえあった。しかし、好きな相手の為とはいえ、そう簡単には認めたくない。感情とは理屈では割り切れない厄介なものだ。
「お人好しでどうしようもない鈍感な奴だ。まったく・・・。いい加減気づけよ」
「相場さん、何を言っているんですか・・・。からかうのはやめてください。彼女といくつ違うと思っているんですか・・・。16になろうかと言う娘がいる私を・・・」
園田は相場から差し出されたコップを持ったまま相場を見つめて顔を引きつらせる。
「俺もたいしたピエロだ。なんだってふられた上にキューピット役を演じなきゃならない。冗談じゃないぞ!」
相場の声に何事が起きたのかと客の視線が集まる。相場は園田の襟首を掴み、拳を振り上げて今にも殴りかかろうとしていた。
拳を握り締めて園田を睨みつける相場と、大きく目を見開いて呆然とする園田。相場の荒い息が空気を震わせる。
友美はゆっくりと首を振った。「いいの、もう・・・。わかってるから・・・。私を女として見てくれてないことぐらい」
園田はコップを手から滑らせた。硝子コップは流しの食器類の上に落ち、音を立てて砕け散る。園田は友美の言葉が信じられなかった。そんなことがあるはずがない・・・。
「情けない奴だ。それでも男か!惚れた女にこんなことを言わせて・・・。何がいい人だ。年が違う?そんなこと関係あるか!男と女が惚れるのに理屈なんかいるか!そんなものくそくらえだ!」
「そりゃそうよね、確かに・・・」
突然割り込んできた声に三人は振り返る。
相場は驚いて園田の襟首を掴んでいた手を放す。
「千春!」友美は驚いて目を見開いた。
友美は親友であり義妹でもある千春に、まさかこんな場面を見られるとは思っていなかった。
「それにしても派手にやっているわね。見世物になっているわよ」
千春は首を竦めてから顎をしゃくる。千春の言う通り三人は客たちの注目の的になっている。友美は顔を真っ赤にしたかと思うと今度は青ざめる。腰に手を当てている千春を見ると、友美は辛そうな顔をした。
「私・・・」
友美の声は小さく萎んだ。友美は顔を覆って千春の横をすり抜ける。
「追いかけていかんのか?」カウンターの隅にいた川久保がボソっと言った。
園田はただ呆然としている。そんな園田に痺れを切らせたように、相場は再び襟首を掴んだ。そして園田をカウンターから引きずり出す。
「このまま黙って行かせるのか?あんた男だろ!惚れた女にあんなことを言わせて、冗談じゃないぞ!」
相場は掴んでいた襟首を放し、園田の胸を拳で押した。園田はカウンターに力なくよろめいた。
「行けよ!彼女を泣かす奴は許さん!」
園田は相場の言葉にはっとしたように、友美の後を追って一目散に駆け出した。その後姿を見つめて相場は大きく溜息を漏らす。
川久保はカウンターへ入り、冷水をコップに注いで相場へ渡す。
「畜生!」相場はコップの水を呷るようにぐいっと空けた。
「あんたはいい男だよ。一度失敗した男に勝ちを譲ったってへでもないだろう。いい女は湧いてくるようにいるだろう。君はもてるじゃないか・・・」
川久保は棚の上のウイスキーを取って水割りを作る。今度は二人分を用意した。そして、相場の背後に立つ千春たちに問いかける。
「あんたたちは何を飲む」
相場は髪をくしゃくしゃにして罰の悪そうな顔を二人に向けた。俺の立場がないじゃないかとぼそっと言った。
「なかなか格好良かったわよ」千春は相場に微笑む。
「うん、もう最高よ。男らしくて素敵」千秋は幾分慰めるように言った。
「でも、どうすんの?」千春は振り返って店内を見回す。
「何が?」千秋も振り返る。
「お客さんたちがいるのに、誰が注文取ったり会計すればいいのかしらん?」千春は面白がるように言った。
「多分、今日は収入なしでサービスってとこだ」
川久保は三人にグラスを差し出し、自分もグラスを手元に引き寄せた。
「なるほどね・・・」千秋はふっと笑った。
「それにしても、友美ったら親友の私に一言もなし?帰ってきたらとっちめてやる!」
川久保は千春を見て笑みらしきものを浮かべた。そして、三人に向かってグラスを掲げて見せる。
「直也の奴、きっと悔しがるだろうな・・・。彼女の相手が自分よりも年上で、それも子持ちの男に奪い去られるとはな・・・。二人に乾杯だ。畜生~!」
「お人好しでどうしようもない鈍感な奴だ。まったく・・・。いい加減気づけよ」
「相場さん、何を言っているんですか・・・。からかうのはやめてください。彼女といくつ違うと思っているんですか・・・。16になろうかと言う娘がいる私を・・・」
園田は相場から差し出されたコップを持ったまま相場を見つめて顔を引きつらせる。
「俺もたいしたピエロだ。なんだってふられた上にキューピット役を演じなきゃならない。冗談じゃないぞ!」
相場の声に何事が起きたのかと客の視線が集まる。相場は園田の襟首を掴み、拳を振り上げて今にも殴りかかろうとしていた。
拳を握り締めて園田を睨みつける相場と、大きく目を見開いて呆然とする園田。相場の荒い息が空気を震わせる。
友美はゆっくりと首を振った。「いいの、もう・・・。わかってるから・・・。私を女として見てくれてないことぐらい」
園田はコップを手から滑らせた。硝子コップは流しの食器類の上に落ち、音を立てて砕け散る。園田は友美の言葉が信じられなかった。そんなことがあるはずがない・・・。
「情けない奴だ。それでも男か!惚れた女にこんなことを言わせて・・・。何がいい人だ。年が違う?そんなこと関係あるか!男と女が惚れるのに理屈なんかいるか!そんなものくそくらえだ!」
「そりゃそうよね、確かに・・・」
突然割り込んできた声に三人は振り返る。
相場は驚いて園田の襟首を掴んでいた手を放す。
「千春!」友美は驚いて目を見開いた。
友美は親友であり義妹でもある千春に、まさかこんな場面を見られるとは思っていなかった。
「それにしても派手にやっているわね。見世物になっているわよ」
千春は首を竦めてから顎をしゃくる。千春の言う通り三人は客たちの注目の的になっている。友美は顔を真っ赤にしたかと思うと今度は青ざめる。腰に手を当てている千春を見ると、友美は辛そうな顔をした。
「私・・・」
友美の声は小さく萎んだ。友美は顔を覆って千春の横をすり抜ける。
「追いかけていかんのか?」カウンターの隅にいた川久保がボソっと言った。
園田はただ呆然としている。そんな園田に痺れを切らせたように、相場は再び襟首を掴んだ。そして園田をカウンターから引きずり出す。
「このまま黙って行かせるのか?あんた男だろ!惚れた女にあんなことを言わせて、冗談じゃないぞ!」
相場は掴んでいた襟首を放し、園田の胸を拳で押した。園田はカウンターに力なくよろめいた。
「行けよ!彼女を泣かす奴は許さん!」
園田は相場の言葉にはっとしたように、友美の後を追って一目散に駆け出した。その後姿を見つめて相場は大きく溜息を漏らす。
川久保はカウンターへ入り、冷水をコップに注いで相場へ渡す。
「畜生!」相場はコップの水を呷るようにぐいっと空けた。
「あんたはいい男だよ。一度失敗した男に勝ちを譲ったってへでもないだろう。いい女は湧いてくるようにいるだろう。君はもてるじゃないか・・・」
川久保は棚の上のウイスキーを取って水割りを作る。今度は二人分を用意した。そして、相場の背後に立つ千春たちに問いかける。
「あんたたちは何を飲む」
相場は髪をくしゃくしゃにして罰の悪そうな顔を二人に向けた。俺の立場がないじゃないかとぼそっと言った。
「なかなか格好良かったわよ」千春は相場に微笑む。
「うん、もう最高よ。男らしくて素敵」千秋は幾分慰めるように言った。
「でも、どうすんの?」千春は振り返って店内を見回す。
「何が?」千秋も振り返る。
「お客さんたちがいるのに、誰が注文取ったり会計すればいいのかしらん?」千春は面白がるように言った。
「多分、今日は収入なしでサービスってとこだ」
川久保は三人にグラスを差し出し、自分もグラスを手元に引き寄せた。
「なるほどね・・・」千秋はふっと笑った。
「それにしても、友美ったら親友の私に一言もなし?帰ってきたらとっちめてやる!」
川久保は千春を見て笑みらしきものを浮かべた。そして、三人に向かってグラスを掲げて見せる。
「直也の奴、きっと悔しがるだろうな・・・。彼女の相手が自分よりも年上で、それも子持ちの男に奪い去られるとはな・・・。二人に乾杯だ。畜生~!」
予想外の展開、恋は予想不可能なもの・・・。彼女が選んだのはまさにまさかの子持ち五十男。気まぐれな神様は二人の胸を矢で射抜いてしまった。
相場はポプラの木を見上げた。
―これでいいんだろ直也・・・。それに少しぐらい格好つけさせてくれよ・・・ ―
相場は木漏れ陽の下で懐かしいような爽やかな風を感じた。ポプラが直也の代わりに答えてくれる気がするのだった。
相場はポプラの木を見上げた。
―これでいいんだろ直也・・・。それに少しぐらい格好つけさせてくれよ・・・ ―
相場は木漏れ陽の下で懐かしいような爽やかな風を感じた。ポプラが直也の代わりに答えてくれる気がするのだった。
