電話後、放心状態となり気付いたらとあるホールの休憩所にいた。
そして、やがてまどろみ店員から起こされてしまう。
だが、起きても動くまでには気力が湧かなかった。
生きているのに身体がピクリとも動かない…これは脳死状態と変わらないのだらうか?
そんな現状を考えているとようやく、身体を動かす気になった。
人間は身体よりも先に頭へエネルギーを与えなければならないのか?
そんなことを考えながらCRフィーバークィーンの台に座った。
座って2回転目の回転中に保留が2つ点灯した。これが次回転の停止時に残る1つの保留が突然赤保留に変化した。
えっ…こんな展開って普段見ないぞ。
そして、この保留は難なく当たる。それを見て僕は
人生も突然赤保留の日が来るんだ
と自分で自分を励ました。その後も大ハマリすることなく、2500発プラスで終了する。
いつもならトコトンの僕だが、今日は腹八分目で実戦を終了した。
身体よりもやはり頭が疲れているのが、自分でも分かった。
ホールを出てある業界関係者に会おうとコンタクトを取るも繋がらなかった。
仕方ない…
時間も空いたこともあり、印刷ページの再構成を始めようとした。
しかし、頭は違うことが脳裏を過った。
それは僕がこの業界に入って間もない頃の昔の自分だった。
昔、業界に入ったばかりの僕は専門誌に自分の座右の銘をタイトルの『藁はしょせん藁』と書いた。
これは僕が自分の麻雀店を潰して得た教訓だった。
僕が自分の麻雀店を店を潰した理由の決定打が
従業員が客とグルに…そう、パチンコ業界におけるゴトの被害によってだった。
そしてそれを最後まで従業員を信じ、見抜けなかった自分が間抜けだったのも認めている。
時折、僕がゴトに過剰な反応を示すのは、このバックボーンがあるからである。
それはある日客のリークにより分かるのだが、状況証拠だった。
状況証拠と物的証拠とでは証拠の価値としてがまるで違う。
賢い経営者なら次に物的証拠の証拠集めに勤しむだろう。
だが、僕はそれをしなかった。
右を向けば店を失う、左を向けば右腕を失う。
どちらを向いても何かを失うのなら
後々後悔しない生き方をする
これが当時の僕の根幹で、同時に今も変わらぬ考えだった。
面白いのは24のジャックバウアーも、作中でこの心情を吐露しているのだが、僕はそれよりもはるか以前にジャックバウアーの考えをしていたのである。
だからこそ、自分が知り得た情報で同じ悲劇を見たくない…
未必の故意を嫌う僕としては当然の考えだった。
だから仲間との共通財産を無断で自分勝手に持ち出したのは
僕自身が過去の僕を救いたい深層心理
があったのかもしれない。
つづく