どうしてもダメなのか?
ムリです、ごめんなさい。
日頃は感情をほとんど出さない彼が涙目したのは、これが初めてだった。
そして僕も涙目していた。
二人の間に沈黙がかなりの時間があったと思う。
そこから、どのくらいの時間が過ぎたのだろうか?
やがて僕はトシ編集長に対して嵐を呼ぶ発言をした。
『では、この出来事を暴露本として発表しても谷村パチンコランド編集部としては文句はないよな?』
これは芥川龍之介の羅城門のクライマックス、下人が老婆に対して言う言葉と全く変わりがなかった。
今まで辛抱し続けてきた僕の感情がついに爆発したのである。
止めて下さい不屈座さん、そんなことをしても貴方に勝ち目はないですから…
ここで、僕は谷村パチンコランドには、法的にも強力な弁護士がバックにいることを初めて知った。
事をこれ以上大きくしないで下さい
のトシ編集長の言葉が、僕の傷口にトドメを刺した。
フン、分かったよ、本は書かないよ。
僕だって、そんな本で作家デビューなんかしたくないよ。
あっ…
それは二人がパチンコジャーナリストという言葉を同時に浮かべた瞬間であり、また二人の絆が切れた瞬間でもあった。
こうして僕らはこの日を最後に、その後は会っていない。
そして原稿締め切り時間の土曜日の午後3時…
僕は谷村パチンコランド編集部に初めてボイコットをした。
そう、原稿を送らなかったのである。
もちろん、原稿は作っていた。
しかし、僕の気持ちがどうしても谷村パチンコランド編集部に従えなかった。
だが、3時5分、トシ編集長のパソコンに突撃!!インタビューの最終回原稿を送った。
ただし、宛名は
トシさんへ
だった。そして3時に送らなかった理由と、今に送った理由も伝えた。
これを今ご覧の皆さんなら、これまでの伏線を踏まえて、僕がなぜこんなまどろっこしいことをしたのか?お分かりかと思うが…
トシ編集長は許せなくても、トシさんを困らせたくはない
が、僕の考えだった。
つづく