3階の東京営業所入口に入ると一番奥に上司がいて、他には誰もいなかった。
いや、室内に社員の声がするのだが、姿は見えないこともあり、遅れた昼休憩を取っている感じだった。
僕がここを訪ねた時間も、午後1時半前でもあり、これはある意味メーカーの日常風景とも言えた。
この時、一番奥にいた上司は、実は僕の知人の業界人だった。
だが、数年ぶりに一目しただけでもあり、お互い全く気付くことはなかった。
僕は受付嬢に担当して頂いた高尾社員の名前を伝え、その方が留守と教わると、戻られる時間を確認し、またその時間を見計らって伺いますと言い、失礼しようとした。
その際に、僕の知人の高尾社員の名前を告げ、その方にも宜しくお伝え下さいと受付嬢に伝えた。
すると受付嬢は、慌てて奥に向かった…
まさかあの奥の上司が僕の知人なのか?
その方は、髪の毛の雰囲気が昔と比べ、ずいぶんボリュームがあり、全く知人だと見分けがつかなかった。
が、いざ間近で話をすると間違いなく知人だった。
知人は現在、高尾のキーマンに出世していた。
僕は知人が出世している現実を目の当たりにし、これ以上の喜びはなかった。
知人は、おそらく僕のことを覚えているまいと思い、CRベノムの逆襲の時にインタビューしたメディア業界人時代のペンネームを僕は名乗った。
すると知人は、そこで僕のことを思い出してくれて、僕としては昔のペンネームの神通力に感謝をした。
そして僕としては知人とまさか、この後にCR美男(イケメン)ですねに関する話を延々とすることを、この時は全く知らなかったのである。
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