【君の声.88】『キュヒョン。』キュヒョンが部屋のドアを閉めようとした瞬間、彼が口を開いた。『…譲るつもりはないよ。』キュヒョンは何か言おうとしたが口を横にぎゅっと結び、返事もせずに大きな音を立ててドアを閉めた。彼はふぅと大きく息を吐いた。『腕…大丈夫か?』 #SJで妄想
【君の声.89】『赤くなってる。』腕を見ると、掴まれていた部分が赤くなっていた。彼はその部分にそっと触れ、そして優しく手を握った。『…送ってく。』申し訳なさそうに話す彼を見ると心苦しかった。帰る支度をして玄関に向かう。その間キュヒョンの部屋のドアが開く事はなかった。#SJで妄想
【君の声.90】あれから一週間が経った。大学はテスト期間に入り、試験勉強や予習に少し忙しくしていた。あの日家まで送ってくれた彼は、特に言葉はなかったけど、ずっと手を繋いてくれていた。それに今は毎日のようにメールをくれる。『 仕事の合間にしか返せないけど…』 #SJで妄想
【君の声.91】そう言いながらも仕事の合間に返事をくれるし、メールが途切れることはなかった。朝は"おはよう"から始まり、夜は"おやすみ"のメールをくれる。くすぐったく感じるものの、それが毎日の楽しみで幸せでもあった。心のどこかで期待しちゃいけない、と思っているのに #SJで妄想
【君の声.92】そんな毎日が幸せで、考えないようにしていた。(好きだとは一度も言われてないもんね…)授業を終え、大学を出ようとしたところで、後ろから声を掛けられた。『ヌナ?』「キュヒョンっ」『良かった…』「え?」『さっきの授業のプリント貸して貰えませんか?』 #SJで妄想
【君の声.93】プリントを手渡すと、キュヒョンは自分のリュックの中をゴソゴソと漁り始めた。『すみません、先々週ってプリント配られました?』いつも冷静なキュヒョンが、焦りながら話しているのは何だか可愛かった。「時間ある?どっかカフェでも行こ?プリント貸してあげる。」 #SJで妄想
【君の声.94】この間の宿舎での出来事が頭からすっかりなくなった訳ではなかった。だけど以前と変わらずこうやって話せる事が素直に嬉しい。キュヒョンは大切な友達だから…『ここは俺に奢らせて下さい。』カフェに着き飲み物を頼むと、キュヒョンが言った。『席取ってて下さい。』 #SJで妄想
【君の声.95】空いてる席を取り、プリントを出しているとキュヒョンがトレーを持って戻って来た。『すみません、なかなか授業に出れなくて。』プリントを確認しながらキュヒョンは言った。「忙しいんだねー?」『ええ、近々コンサートがあるんです…』「そうなんだ…」 #SJで妄想
【君の声.96】カフェラテを一口飲むと、キュヒョンが驚いた顔であたしを見ている。「え?なに?」『…ヒョンから聞いてませんか?』一瞬沈黙が流れた。「あ、彼仕事の話はあんまりしないから…」『日本で公演するんです。』「え?」『来月、日本でコンサートをするんですよ。』 #SJで妄想
【君の声.97】「日本か…」もう一口カフェラテを飲むと、キュヒョンが歌を口ずさみ始めた。初めて聴く曲で、優しいメロディがキュヒョンの声に合っていた。「上手だねー。」『歌手ですから。』クスクスと笑いながらキュヒョンは言った。その一言で張り詰めていた物がぷつんと切れた。#SJで妄想
【君の声.98】「良かった…」『え?』「またこうやって話せるから…あの日からずっと気になってて…」避けては通れない話題だと思い、心を決めて言葉にした。『気になってたって、どういう意味ですか?』「んと…キュヒョンともう話せないんじゃないかって思ってた。」 #SJで妄想
【君の声.99】「何て言ったらいいのか分からないけど…嫌な気持ちにさせたのかなって…」言葉を続けようとすると『あの日は俺も悪かったです。すみません。』とキュヒョンが遮った。『これで今まで通りの俺とヌナです。いいですか?』ふと顔を上げると、キュヒョンが優しく笑った。 #SJで妄想
【君の声.100】『そろそろ行きましょうか?』プリントの確認も済み、カフェラテを飲み終えた所でキュヒョンが言った。「そだね。」席を立つ前に携帯を見ると彼からのメールは帰って来ていなかった。(今日はお休みじゃないのかな…)バッグに携帯を押し込み立ち上がった。 #SJで妄想
【君の声.101】カフェを出ると辺りは真っ暗になっていて、冷たい風が刺さるように痛かった。「さむーいっ!」『冷えましたね。』他愛もない話をしながら駅へと向かう途中、何気なく顔を上げると、そこは彼と待ち合わせした場所の前だった。(…会いたいなあ。) #SJで妄想
【君の声.102】ボーッとその場所を見つめ立ち止まる。すると前を歩いていたキュヒョンが、それに気付き振り返った。『ヌナ?』キュヒョンの声に気付き、ハッと我に返ると、キュヒョンはあたしを通り越して後ろを見つめていた。「キュヒョン?」不思議に思い、後ろを振り返る。 #SJで妄想
【君の声.103】キュヒョンの視線の先に居たのは彼だった。黒いスーツ姿の彼は大人っぽく、まるで知らない人みたいだった。そして彼の隣には綺麗な女の人が立っていた。彼とその女性はあたし達に気付かずに、こっちに向かって歩いて来る。体が硬直して動かない。 #SJで妄想
【君の声.104】仲良く話している姿なんて見たくないのに、目が離せない。『ヒョン!』そんな状況を変えたのはキュヒョンだった。『キュヒョン?』彼は驚いた表情でこっちを見て、あたしがいることにも気が付いた。『大学の帰りか?』『…はい。』空気が変わるのが分かる。 #SJで妄想
【君の声.105】『ヒョンはどうしてここに?』『あぁ、ちょっとした用事があって。』その時彼と一瞬目が合った。どうしていいか分からず逸らしてしまう。『おっぱぁ?』彼の隣にいる女性が彼に声を掛けた。『…そろそろ行くよ。またな。』そう言うと2人は近くのお店へ入って行った。#SJで妄想
【君の声.106】キュヒョンが振り返り、大きく溜息をついた。『…そんなにショックですか?』困ったような苛立ちをごまかすような顔であたしを見る。『泣かれるとどうしていいのか分かりません。』すれ違う人達があたし達をチラチラと見ている。俯くとマフラーに涙がこぼれ落ちた。 #SJで妄想
【君の声.107】『ショックを受けるって事は、付き合ってないんですか?』キュヒョンの言葉には返事をせず、頬に落ちた涙を拭いた。『…まだ俺にもチャンスはあるって事ですね。』そう言うとキュヒョンはジャケットの前を開け、あたしを包み込むように抱き締めた。 #SJで妄想
【君の声.108】『今日だけは…ヒョンのために泣かせてあげます。』彼とは違う香りのするジャケット。キュヒョンの大きな手があたしの頭を撫でる。また涙が溢れそうになる。泣けるほど彼の事が好きなのに、キュヒョンの優しさに甘えてしまう自分が情けなかった。 #SJで妄想
【君の声.109】家へ帰り、コートも脱がずにベッドに崩れ落ちるように倒れこんだ。『俺、諦めませんから。』キュヒョンが別れ際に言った言葉が頭の中で引っかかる。携帯を開くと彼からメールが入っていた。数時間前のあたしなら喜んで見ていたのに…また涙がこぼれ落ちた。 #SJで妄想