気温と気圧の乱高下に翻弄され
晴れれば花粉や黄砂が飛びまくる。
隙あらばベランダに
巣をこしらえようとするハトと
攻防戦を繰り広げ
なんだかんだ忙しい毎日。
一昨日と昨日は
酷い目眩に襲われダウンしてしまった
今日は少し持ち直したけど
一日花冷えの雨模様だったので
家事もそこそこにのんびり映画三昧。
選んだのは
体調にも優しそうなアキ・カウリスマキ。
夫・ラウリは路面電車の運転士。
路面電車の乗客が
地下鉄に奪われてしまい
世の中はマイカー時代へ。
不況の煽りを受けた会社は
コストカットのためリストラを敢行。
会社がリストラ要員の選出に用いたのは
なんとトランプ
ラウリはトランプで
リストラされてしまったのだ。
妻・イロナはレストランの給仕長。
ある日突然
銀行が急な融資の返済を求めてきたため
やむなくオーナーは閉店を決めた。
従業員も全員解雇するはめに。
するとチェーンが店を買収。
なんと銀行が
チェーンのオーナーだったのだ。
ラウリもイロナも
何か落ち度があったわけではない。
「不況」の一言で片付けるには
あまりにも理不尽。
中年に差し掛かった二人に
思うような仕事は見つからなかった。
(とても他人事とは思えない💦)
イロナは新聞の仕事の斡旋広告で
給仕長の仕事をたまたま見つけ
斡旋会社に連絡するも受付時間外。
翌日の受付開始を前に
夜のうちからその会社の前で待っていたが
うっかり眠ってしまい
別の人に仕事が決まってしまった。
皿洗いの仕事なら紹介できると言われ
仕方なく了承すると
斡旋料を払えと言われた。
(思わず「ひどい!」と言ってしまった)
イロナは預金を全額下ろして会社に支払い
もらった紹介状を手に面接に行くと
頼んだのは食洗機だと言われてしまう。
それでも食い下がって
なんとか仕事をもらったが
これまで働いていたレストランとは違って
酒がメインのみすぼらしい食堂で
しかも調理、給仕、会計の全てを
イロナ一人でこなさなくてはならない。
ヤクザなオーナーはふらりとやって来て
売上全部持って行ってしまうし。
働き始めて数ヶ月後に
税務署の調査が入り不正が発覚。
イロナはまた職を失ってしまうのだった。
(しかも賃金不払い)
その後
イロナはかつての同僚と再開し
希望の兆しが見え始めたと思われたが
またしても夫婦共々
不幸に見舞われてしまう
イロナが全てを諦めようと思った時
思わぬ救世主が現れるのだった…
イロナもラウリも
不幸のどん底なのに
不思議と悲壮感がない。
アキ・カウリスマキ作品の登場人物は
良い意味で感情が迸ることがない。
気の利いたセリフは言わないが
他人を蔑むようなことも言わない。
いつもあるのは素っ気ない優しさ。
夫婦もそうだけど
同僚や友だちを放っておかない。
かといって干渉はしない。
この付かず離れずの関係性が
アキ・カウリスマキ作品に通底する
優しさなんだと思う。
そしてユーモアも忘れない。
だから悲壮感がないんじゃないかと。
それはまるで
昔の日本の物語に出てくる
長屋の住人のよう。
最近だと
前々作の朝ドラ「らんまん」の
草長屋の住人たちみたいな。
まぁそれよりもっと素っ気ないんだけど
優しさの類いが似ている気がする。
余談だけど
日本のものと似ているといえば
アキ・カウリスマキの作品で
飲食店の生バンドが演奏する曲はいつも
昭和のムード歌謡を思わせる。
懐かしい感じがして私は大好きだ。
どん底から這い上がるハングリー精神。
所謂ど根性物語だったら
私の心はきっと動かないだろう。
俯いていた顔を
ほんの少し上げてみたら
空に浮かぶ雲が見える。
アキ・カウリスマキが描くのは
そういう希望だ。
静かだけど強い。
理不尽な目に遭ったり
不幸に見舞われたりもする。
だけど負けない。
だから応援したくなる。
社会の理不尽に対して
鋭いメスを入れる
ケン・ローチや
ダルデンヌ兄弟の作品が
私は大好きなんだけど
それとはまた違う切り口の
アキ・カウリスマキの作品もまた
私は大好きなのだ
↓アキ・カウリスマキ監督『枯葉』レビュー