懐かしさと寂しさが胸に込み上げる | よしすけのツレヅレなるママ 映画日記

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大好きな映画の感想をメインに、読書感想や子育てについてetc…のんびりした日々をゆるゆると綴った日記です

『夏時間』

(2019年 韓国)


一昨日は夏日一歩手前まで上がり

昨日今日で一気に10度も下がるという

まるでジェットコースターのような

気温&気圧のアップダウン。


こちとら押しも押されぬ更年期の身。

テイラックと命の母を片手に

「やめてけれー」と叫ぶ毎日悲しい


寝たきりの父の容態も

緩やかに下がっていってるのが

目に見えて分かる。


ヘルパーさんと看護師さんが

毎日来てくれるけど

高齢の母だけに

留守を預けるのは気が気でないので

買い物もそそくさと済ませ

なるべく家に居るようにしている。


父はほぼ眠り続けている。

痛がったり苦しがっていないのは

幸いなことなのかも知れないけど

何も出来ないというのも辛いものだ。

そうすると自然と

意識が自分に向いていってしまう。

それはそれでなかなかキツい。


そういう時に

他に心を向けようとしてしまうのは

現実逃避とも言えるけど

自己防衛でもあるのかなとも思ったりして。

最近どうも頭と心がちぐはぐになっていて

その矛盾さを持て余してしまう…


そんな訳で

今日は劇場で観逃した韓国映画を観た。

冬に逆戻りしたような日だったけど

映画は夏真っ盛りだった。



STORY

ある夏の夕暮れ

わたしは少し大きな家に引っ越した―


夏休みのある日、10代の少女オクジュは、父が事業に失敗したため、弟ドンジュと父と共に広い庭のある祖父の家に引っ越したが、そこに母親の姿はなかった。弟は新しい環境にすぐ馴染むんだのだが、オクジュは居心地の悪さを感じている。そこに離婚寸前の叔母まで住みつき始め、一つ屋根の下に三世代が集まり、オクジュにとって、自分と家族の在り方を考えざるを得ない、夏の日々が始まった。オクジュが家と祖父に親しみを覚えるようになった頃、祖父が病気になってしまう…。
(公式サイトより転載)



もう子どもではない。

かと言ってまだ大人ではない。


いままで気づかなかったことに

気づきはじめる。

分からなくても済んでいたことが

分かってきてしまう。


これまでぼんやりとしていたものが

輪郭を帯びてくる。

痛みと哀しみを伴って…



父が祖父に同居を持ち掛けた時

本当の理由を言わなかった。

隣に座っていたオクジュは

無言でご飯を食べていたけど

心の中ではどう思っていただろう。


家の経済状態が良くないことも

それで祖父の家に転がり込んだことも

オクジュは分かっているから

父に二重の手術費用を借してと言うのが

すごく辛そうそうだった。

バイトして返すからとも言ってた。


父は「そんなの必要ない。

オマエは十分可愛い」と言ったけど

いや、そうじゃなくてー。



祖父の誕生日の夜

弟がスマホ欲しいと言った時に

「それなら踊ってみろ」と

父と叔母から言われて

弟がおどけて踊ると父と叔母は大笑い。

オクジュはぎこちなく笑っていた。


父はスマホ欲しいならしょうがないかー

みたいな感じでモヤモヤした。



それから

父と叔母が

祖父を老人ホームに入れるかどうか

子どもたちの意見を聞いていて

そりゃ昼間ずっと一緒にいるのは

子どもたちだろうけど

入所するかどうかは

祖父の気持ちを聞いた上で

父と叔母が決めればいいのにと思った。


それなのに

祖父が老人ホームに入った後の実家を

売るかどうかは

子どもたちには聞かないで

父と叔母だけで決めてて

なんかなーって思った。



叔母が言っていた

「お兄ちゃんは実家の金を当てにし過ぎ」

っていうのも気になった。

最初、当たり前のように

実家を貰うつもりでいた兄に対し

自分は妹だから

これまで困ったことがあっても

自分でなんとか工面してきたのに

家を貰うというのはさすがにズルい

と言ったのは

オクジュの二重手術と

弟のスマホの件とも

似てるよなーと思った。



叔母が夫とうまくいってなくて

離婚したいと言った時も

父(兄)は離婚しているのに

我慢した方が良いと言っていて

そりゃないよーって思った。

妹が離婚したら

実家で一緒に住んだっていいのにさ。


祖父の葬儀の時

夜中に母が弔問に来て

弟は無邪気に喜んでいたけど

いつも弟に母に会いに行くなと

言ってたオクジュは

突然の再会に

どういう顔していいか

分からない様子で

その表情を見てたら

堪らない気持ちになった。



だけど

みんなでご飯食べてる時には

嬉しそうな顔になって

オクジュはいままで

どんだけ我慢してたんだろうと思い

切なくなった。


それなのに

オクジュが寝てる間に

母はプレゼントを置いて帰ってしまって…



葬儀が終わって実家に戻っても

子どもたちはなかなか

家に入ろうとしなくて。


寝床は祖父が寝てた時の形が

そのまま残っていて。

父が作ってくれたチゲを黙々と食べたけど

食卓は三人だけ。

祖父の姿はここにはもう無い。

叔母も居ない。

母も居ない。


どうしようもない喪失感。

慟哭するオクジュに

心が締めつけられた。



緑が溢れる夏の庭。

レースのカーテンから漏れる西日が

緩やかな風に揺れる。

装飾が施された古いミシン。

部屋に吊られたビンク色の蚊帳。

色褪せたスヌーピーのタオルケット。


柔らかな色彩の映像に

懐かしさと寂しさが胸に込み上げた。



子どもの頃

毎年夏休みの間中

私は一人

祖母の家で過ごしていた。


戦後、祖母が土地を借りて家を建て

その後同居する叔母家族が増改築した家。

裏庭は季節の花で溢れ

祖母はせっせと手入れしていたっけ。

映画を観ながら

私は祖母の家を懐かしく思い返していた。


祖母が亡くなって数年後

土地を返却することになり

家は取り壊され

叔母夫婦は郊外のマンションに引越した。

祖母の家が無くなって

もう20年以上経つんだなぁと

しみじみ思う。


現実逃避するつもりで観始めたのに

映画を通して

喪失に向き合うことになって

これも巡り合わせということなのかな。


とても佳い映画。

おすすめですニコニコ








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