「権利」というのは実は簡単に奪われてしまうものなんだ… | よしすけのツレヅレなるママ 映画日記

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大好きな映画の感想をメインに、読書感想や子育てについてetc…のんびりした日々をゆるゆると綴った日記です

『ヤジと民主主義』

劇場拡大版

(2023年 日本)


昨日の『枯葉』は

日常を守るための

静かな抵抗を描いた作品。

今日ご紹介する作品は

権利を守るために

声を上げ闘い続ける

ドキュメンタリー映画だ。


二つの作品は手法は異なるが

理不尽に屈しないという

メッセージは共通している。


↓アキ・カウリスマキ監督『枯葉』レビュー



2019年7月15日。

札幌市で行われた安倍首相(当時)の

参院選の街頭演説中に

聴衆の中の一人の男性が

「安倍やめろ」とヤジを飛ばしたところ

北海道警の警察官に取り押さえられ

現場から排除された。


すると今度は

その様子を見ていた別の一人の女性が

「増税反対」とヤジを飛ばすと

また北海道警の警察官に取り押さえられ

現場から排除された。



この事件から遡ること2年前。

2017年7月1日。

秋葉原で行われた安倍首相(当時)の

東京都議会議員選の街頭演説では

安倍政権に反対する人々が横断幕を広げ

「安倍政権ふざけんな!」「極右政権粉砕」

「憲法を守れ」「共謀罪廃案」などの

プラカードを掲げて

「安倍辞めろ」「帰れ」

シュプレヒコールを上げた。


すると、安倍首相(当時)は聴衆に向かって

「あのように演説を邪魔する行為を

私たち自民党は絶対にしません。

相手を誹謗中傷しても何も生まれない。

こんな人たちに

私たちは負けるわけにいかない!」

と演説をした。


安倍支持者たちは

「そうだ」「そうだ」と

この発言を支持した。



どちらの事件もよく憶えている。

特に秋葉原での安倍首相(当時)の発言。


いくら現政権が非難されたとはいえ

一国の総理大臣が公の場で有権者に対し

「こんな人たち」呼ばわりするとは。


まるで自分の支持者だけが

有権者であるかのような振る舞い。

まさに安倍一強の驕りを

象徴するかのような出来事だった。



そして札幌のヤジ排除事件。

特定の団体や政党に属しているのでもない

一個人の市民がヤジを飛ばしただけで

複数の警察官に取り囲まれ排除される。


当時ニュース映像を見ながら

とても恐ろしくなった。

これは権力の暴走なのではないのかと…



だから

このドキュメンタリー映画の

公開が決まった時

絶対に観に行こうと決めていた。

制作はHTB北海道テレビ。


当事者がその時の様子を

スマホで撮影していたが

HTBも安倍首相(当時)の札幌での

街頭演説の撮影をしていたため

警察が彼らを排除する場面も

当然映っていた。


安倍首相(当時)の街頭演説であれば

HTB以外のテレビ局(主要キー局)も

撮影に来ていただろう。


多くの撮影者の目の前で

公然と警察による

排除が行われたという事実には驚きだが

それにどういう意味があるのかと考えると

街頭演説を円滑に進めたいがため

秩序を維持したいがためというだけでなく

ある種の見せしめという意味も

あるのではないかと思う。


秋葉原の街頭演説への報復とも

権力に物申した者に対する

ペナルティとも受け取れる。

また、安倍支持者に対しては「勝利」を

イメージさせたかも知れない。


現場に居合わせた人々や

テレビを見た人々に対して

権力側のメッセージとして伝えるには

十分な出来事だったのではないだろうか。


それにしても

警察官の対応は酷かった。

男性に対し

移動は排除目的ではなく

保護するためだと言ってみたり

「選挙(演説)の自由を侵してはならない」

と言ってみたり。

その場しのぎのデタラメを

並べ立てているようだった。


私には男性が

何らかの不法行為はしているようにも

危険な行為をするようにも見えなかった。


女性に対しては女性警察官がつきまとい

「とにかく落ち着いて」

「ジュース買ってあげるから」と

まるで子ども扱い。


「道路交通法の許可が」とデタラメを言い

「ヤジ飛ばすのに許可が要るんですか?」

と逆に女性から質問されると

笑いながら「要らないねー」と言っていた。

全くバカにしている。


結局は警察官にとって

彼らを現場から引き離せれば

任務は遂行されたということになる。

理由なんてどうだっていいのだ。

彼らの任務は警備ではなく排除なのだから。


2022年二人は道警を提訴。

一審は原告側の主張が全面的に支持され

原告勝訴となった。

ヤジは「表現の自由」であり

排除は不当だったと地裁が認めたのだ。


しかし

排除は道警が指示したものではなく

あくまでも現場の警察官が判断し行ったもの

と主張し組織的関与を完全に否定した。


この判決に

民主主義は機能していると

安心したのも束の間

判決を不服とした道警側が上告。


2023年の二審で

道警が新たに提出した証拠は

男性が聴衆の一人から

危害を加えられていたというものだった。

だから警察官は男性を移動させた。

それは排除ではなく

保護のためだったと改めて主張した。


更に道警が提出してきたのが

笑っちゃ悪いが

言うなれば「If動画」

男性を移動しなかった場合に

起きたかもしれない事件を再現した動画。


警察が男性を移動させたことで

この事態は免れたと言いたいのだろう。

思わず「ここまでやる?」と言ってしまった。


高裁の判断は

地裁の判断を女性の側だけ維持とし

男性の側は逆転敗訴。



判決には

奈良県の街頭演説中に起きた

安倍元首相銃撃事件が影響したと思われる。

一審での判決が

警備の甘さを生んだのではないかという

意見が一部で出ていたからだ。


ヤジと銃撃事件が

同じ土俵で語られることに

私は違和感を感じてしまうのだけど…


男性は判決を不服とし最高裁に上告。

「表現の自由」を守る闘いは

まだ続いている。



日本国憲法で護られている

私たちの「権利」は

目に見えないけど

あるのが当たり前で

あるとかないとかなんて

日頃考えたこともない。


だけど最近よく思うんだけど

いまの生活から転落した時に

この国のシステムは

私のこと守ってくれるのかな?と

心配になる。


自分の力だけで

起き上がれなくなった時でも

きっと助けてくれるに違いないという

確信が持てない。



ニュースを見てても

能登地震の支援不足とか

物価高で食料支援に長蛇の列とか

「健康で文化的な最低限度の生活」が

保証されているようにはとても思えない。


権利を行使しようとすると

「迷惑」という言葉で口を塞がれたり

「権利を主張するなら義務も果たせ」と

意味不明な等価交換のようなものを

求められたりする。


こういうのを目の当たりにすると

「権利」というのは実は簡単に

奪われてしまうものなんだと怖くなる。


あるのが当たり前に思っているけど

目に見えないだけに

気づいた時には

奪われた後だったなんてことに

ならないためにも

声を上げる「権利」を

使い続けていかなくては。


🍀🍀🍀


余談だけど

排除されてしまった当時

大学生だった女性はその後

札幌地域労組で働いているそうだ。


実は先月たまたまテレビで

HTBのドキュメンタリー番組

『労組の男~最後の闘い』を見たのだが

これがまたとても良かった。



偶然にも彼女が働いているのがこの労組。

千歳相互観光バスの24時間ストにも

参加していたようなので

もしかしてこの番組にも映っていたのかな。

『ヤジと民主主義』では

労組の副委員長が

彼女についてコメントしていた。


『労組の男~最後の闘い』も

機会があったらぜひ見ていただきたい。


流れ星流れ星流れ星


レビューになってるのか

なっていないのか

随分と支離滅裂な内容になってしまって

申し訳ない💦


安倍政権の時から始まった排除主義に

岸田政権になってからは

放置主義まで加わった。

もはや法治国家ではなく放置国家だ。


派閥解体より前に真相を明らかにしろよ。

そんなことより能登の人たちを優先しろよ。

生命を軽く扱うな!