いまこそ、大人こそが読まないと | よしすけのツレヅレなるママ 映画日記

よしすけのツレヅレなるママ 映画日記

大好きな映画の感想をメインに、読書感想や子育てについてetc…のんびりした日々をゆるゆると綴った日記です


『兎の眼』

(灰谷健次郎 著)


冒頭いきなり

蝿の話から始まる。


舞台は大阪の小学校。

新任教師・小谷先生が

受け持つ1年生のクラスの

鉄三は誰とも口をきかない。


小谷先生は鉄三になんとか

心を開いてもらいたいと試みるが

噛みつかれたり

引っかかれたり…


鉄三を始めとして

この学校には

「処理場」と呼ばれる所から

通ってくる児童がいる。


「処理場」とはゴミ焼却場。

彼らの保護者はそこで働き

家族と共にそこで暮らている。

住民(とりわけ大人たち)の中には

彼らを蔑む人たちがいる。

この小学校の先生の中にも…


鉄三のこともっと知りたいと

小谷先生が

彼の住む「処理場」を訪ねると

「処理場」の子ども達は

「ここに来るのは足立先生くらいだ」と

たいそう驚き大喜びした。


足立先生は職員室の中では

かなり異質な存在だ。

小谷先生の言葉を借りれば

教員ヤクザ(褒めてる)

足立先生は

権力に媚びることなく

ただひたすらに子どもと向き合い

どんなことでも

「自分で考えることの大切さ」を

教える先生だ。


作中で

足立先生の過去に

触れられることは無いが

恐らく

この国の教育が軍国主義に

加担してしまったことと

無関係ではないと思う。


またそれは

鉄三の保護者バクじいさんの

朝鮮人の友人に対する

贖罪の話にも通じている。


冒頭の蝿の話は

鉄三と繋がっている。

鉄三はペットとして

蝿を飼っているのだ。


小谷先生は最初

蝿は不潔だから

飼うのを止めるよう

鉄三を説得するために

「処理場」を訪れた。

しかし

バクじいさんから

鉄三が蝿を飼うまでの経緯や

バクじいさんの願いを聴き

小谷先生は自分の浅はかさを

思い知らされた。


この日以来

蝿に対する認識が変わった

小谷先生と

鉄三の距離は縮まっていき

鉄三は蝿をきっかけに

文字に興味を持つようになっていった。


ある日

小谷先生はクラスに

「みな子」という

新しい仲間を迎えた。

支援学校に編入するまでの1ヶ月間

みな子を受け入れて欲しいと

保護者からの申し入れがあったが

教頭は体良く断ろうとしていた。

小谷先生はそんな教頭を説得し

自分のクラスに迎え入れることに。


みな子は席にじっと座っていられず

教室を歩き回り

おもらしすることも度々。

隣の席の児童の教科書を破ったり

勝手に給食を食べてしまったり…

それでも小谷先生は笑顔で

みな子の面倒を見続けた。


案の定、保護者からは

「勉強が遅れる」とのクレームが。

だけど小谷先生は諦めなかった。

必ずクラスの子たちにも

良い影響があるからと

保護者たちを説得した。


隣の席の児童は最初

みな子に嫌なことをされたと

泣いていたけれど

しばらく一緒にいるうちに

みな子への接し方が分かってきた。

誰に教わったわけでもなく

みな子に寄り添おうと思ったのだ。

そうすると不思議と

みな子の様子も変わってきた。


障害の有無に関わらず

人と人との関わり方は同じなのだと

この児童は教えてくれた。


小谷先生は

子どもたちが交代で

みな子のお世話係をするようにした。

関わり方をお教えるのは

もちろん前述の児童だ。


言葉を発しない鉄三も

お世話係をすることになった。

他の児童は

みな子の後をついて回り

お世話をするのだが

鉄三のやり方は違った。

鉄三はただいつも通りにしているだけ。

その後をみな子がついて来るのだ。

鉄三はみな子のお世話をするのではなく

ただ一緒に遊ぶだけ。

鉄三の中に

区別や差別がないからだろう。


無意識の内に

他人を比較してしまう自分を振り返り

恥ずかしい気持ちになった。


物語の終盤で

「処理場」の移転問題が

大きくなっていく。

社会のお荷物のように扱われる

「処理場」やゴミ。

だけど

「処理場」無しでは

社会は回らないし

そもそも

ゴミを出さない人間は

一人もいない。


本当は社会全体の問題なのに

そこで働く人やその家族

とりわけ子どもたちだけに

しわ寄せがいってしまうのが悲しい。


この物語では「処理場」だけど

「基地」や「原発」も同じことだと思う。

どれも本当はみんなの問題なのに

一方的に押しつけてしまっている。


簡単に止めることができないその場所で

暮らし続ける人たちがいる。

暮らしていかざるを得ない人たちがいる。


日々の生活に追われてばかりで

気持ちを振り向ける余裕がないのは

言い訳なのかも知れないけど

じゃあなぜこんなにも

他者に気持ちを振り向ける

余裕がないのだろうか。


余裕がないのが

一時的ではなく

当たり前のように

何十年も続いているのは

なぜなのだろうか。


それを考えるのもまた

とても大事なことだと私は思う。


先月

もんたよしのりさんが亡くなった時に

もんたさんが

灰谷健次郎さんの教え子だったと知り

そういえば子どもの頃

灰谷さんの

『ろくべえまってろよ』が

好きだったことを思い出した。


『兎の眼』はあまりにも有名だから

もちろん知っていたけれど

タイトルが怖くて

読んだことがなかった。

でもずっと気になっていた。

これもちょうど良い機会だと思い

図書館で借りてきた。


そしたら

児童文学だけど

これは大人がいまこそ

読まなきゃダメな本だと思った。

今更私が言うまでもないのだけど

本当に素晴らしい本だった。


兎の眼は曇りなく

真っ直ぐ静かに物事を見つめる。

それはとても難しいが

とても大切なことだと知った。

全然怖いお話ではなかったな(恥💦)


何度も読み返したい一冊。

買って手元に置きたいくらいだ。


うさぎクッキーうさぎクッキーうさぎクッキー


師走朔日?!

今年の残りがひと月切ったなんて

とても信じられないあんぐり

ついこの前までの

上着要らずの温かさに騙された?


一昨日あたりから

冬が本気出してきたなぁと思ってたら

シレーっと今日から12月って。

なんか騙し討ちされた気分だゎ指差し


最近ハマっている糀、酒粕。

特に酒粕+ゆであずき+豆乳を

混ぜ混ぜしてレンジでチン。

ホッとする温かさ。

菌活、腸活で

忙しない師走を乗り切るぞーグー