死生観、ジェンダー観を大きく揺さぶられた | よしすけのツレヅレなるママ 映画日記

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大好きな映画の感想をメインに、読書感想や子育てについてetc…のんびりした日々をゆるゆると綴った日記です

『やすらぎの森』

(2019年 カナダ)


※若干内容に触れているため

未見の方はご注意を⚠️




カナダ ケベック州。

人里離れた深い森の中。

湖の畔に点在する古びた小屋で

年老いた3人の男たち

テッド、チャーリー、トムは

愛犬と共に静かに暮らしていた。

彼らはそれぞれに理由があり

世捨て人となった。


小屋から少し離れた所にある

寂れたホテルの支配人スティーヴだけが

彼らの存在を知っていて

生活物資の調達をしてくれる。


ある日スティーヴが

自分の叔母を連れてきた。

彼女の名前はジェルトルード。80歳。

60年以上前、父親の独断で

精神科の療養施設に入れられてから

一度も外に出たことがなかった。


ジェルトルードは今回

兄弟の葬儀で初めて

施設の外に出たのだが

もう施設には戻りたくないと言い

祖父の勘違いで

施設に入れられてしまった

彼女の事情を

知っていたスティーヴは

彼女を施設に戻したくないと思った。


ジェルトルードを匿える場所は

ここしかない。

そう思いスティーヴは

この森に彼女を連れてきたのだった。


森にやってきたが

テッドの姿が見えなかった。

二人に聞くと

テッドは先日亡くなったのだと言った。

自分たちで埋葬も済ませたと。


ジェルトルードを受け入れることに

トムは難色を示したが

スティーヴの強い願いと

彼女の深い事情を聞き入れた

チャーリーの一存で

亡くなったテッドの小屋を修理し

彼女を住まわせることにした。


ジェルトルードは

マリー・デネージュと名前を変え

この森で

新たな人生の一歩を踏み出した。


慣れない場所での生活の不安に

最初こそ精神的な発作が現れたが

チャーリーの献身的な世話と

自然に囲まれた穏やかな暮らしに

マリーの心は日々癒されていった。


しかし、彼らの住まいから

少し離れた所で起こった緊急事態が

段々と近づいてきていた。

穏やかな日常を脅かす事態に

彼らは重大な決断を迫られるのだった



結構前に映画館で予告を観てから

これは絶対に観に来なくてはと

思っていた作品。


『ノマドランド』的な内容だと

勝手に思っていたけど

予想とは違い

ちょっと前だったら

タブーとされそうな部分が

いくつかあって


というか

その中の一つは

もしかすると

私の中で線を引いていた

部分なのかも知れないなと思った。


高齢者というのは

性別を超えた関係を築くものという

私の勝手な思い込みだ。



高齢者の性愛、女性の性欲が

自然に描かれていることに驚き

正直戸惑ったが

愛のあるセックスを初めて知った

マリーの満ち足りた表情を見て

私の心が安らぐのを感じた。


自分の中で蓋してきたことを

肯定されたような安堵感

とでも言うのかな。



『ノマドランド』の時も思ったけど

程々に文明を取り入れつつも

自然に近い暮らしに

憧れはするものの

私はそういう生き方を

望んでいるわけではない。


生き方は選べる。

選択肢はいくつもある。

そういう考え方があることに

私は救われているのだと思う。


だから

こういう映画を観たくなる。

年齢を重ねる毎に観たくなっている。



若い時の自由に生きたいというのと

年老いて自由に生きたいというのでは

言葉の意味合いが大きく変わる。


高齢者の自由に生きたいというのには

自由に死にたいということも

含まれるからだ。


医療の進歩というのか

生きることが正しいとされる

今の価値観の中では

自分で死を選ぶことは難しい。


生も死も

神の領域だったはずだが

いつからか

人間のコントロールする範囲が

どんどん広がってしまった。


そんな中で

高齢者が自由に生きることを選択する

映画が作られたことに

心から共感した。


人によっては

受け入れられない内容かも知れない。

色んな意見があるだろう。

現に私も

自分のバイアスに気づかされたのだから。



原題は『IL PLEUVAIT DES OISEAUX

ケベックはフランス語圏。

意味が分からない💦

英語タイトルだと

AND THE BIRDS RAINED DOWN

そして鳥は雨のように降ってきた

なのかな。なるほど。


この映画は『やすらぎの森』。

『やすらぎの郷』とは関係ないので

お間違えなく()


死生観だけでなく

ジェンダー観にも触れている

多様性のある作品だ。



↓『ノマドランド』レビュー