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中国は今、これまでアメリカが主導してきた国際的経済秩序に対して、挑戦を仕掛けている。


AIIB(アジアインフラ投資銀行)の設立を進めているのだ。
AIIBとは、アジア太平洋地域のインフラ整備を支援するために、中国の習近平国家主席が提唱している国際金融機関である。

資本金は実に1000億ドルにも上り、中国が最大の出資国となって初代総裁のポストにも中国人がつく予定だ。

ADB(アジア開発銀行)の試算によれば、2010年から2020年までに必要なインフラ整備額は約8兆ドルにも達している。

さらに、AIIBは看板政策として、「一帯一路」構想を掲げている。
これは中国から欧州に至る「シルクロード経済ベルト」と、中国からインドなどの海上ルートをつなぎ欧州に至る「21世紀の海のシルクロード」の2つの経済圏構想からなっており、シルクロード経済圏だけでも周辺人口は30億人に上る。

「一帯一路もAIIBも開放的なものだ。一帯一路は中国の合奏ではなく、周辺の国々との合奏だ。」として、習近平は関係国との協力関係を重視することを強調している。

しかし、そこには国内経済に配慮せざるを得ない各国に対し、中国がAIIBの投資先などの選定を主導できれば、中国国内の活性化するとともにアジアでのプレゼンスを拡大できるという中国の思惑が透けて見える。

さらに中国はAIIBの創設によってアメリカ主導の既存の国際金融秩序を崩し、人民元の国際化を進めようとしているのである。

中国はこれまで、欧米主導の金融秩序に対する強い反発を抱いてきた。

例えばIMFのトップである専務理事はこれまで欧州人が歴任しているほか、世界銀行総裁は米国人が、ADBの総裁は日本が独占してきた。
中国は世界第2位の経済力を誇る一方で、国際金融での影響力は極めて限定的なものであったのだ。

ここへきて、現状に不満を持つ中国はその経済力を背景に「新秩序」の構築を目指しているのである。

これらの動きに対し、日米は「組織のガバナンスが不透明」であり、「審査能力にも疑問がある」として否定的なスタンスを取ってきた。

アジアでの経済的プレゼンスを維持したいアメリカはともかくとして、日本がアメリカと歩調を合わせているのはどうしてだろうか。

当然、同盟国としての配慮という要素は無視できないものだ。
現時点では、米議会はAIIBに対する多額の資金拠出を容認せず、アメリカはAIIBに参加しないという見方が有力である。

ここで日本が参加に傾むけば、日米の分断が進み、政治・経済両面でアジアでの影響力の拡大を目指す中国に利することとなってしまう。

しかし日本が参加に踏み切れないのはアメリカへの配慮という要因だけではない。

それはAIIBに参加したからといって日本企業のインフラ輸出に有利に働くのかがわからないという点だ。

日本企業は他国の企業と比べコストが高いため、ADBの入札案件でも受注する割合がわずかである。
数千億円規模の拠出金を払っても受注が即増えるというわけにはいかないのである。

こうなると、日本が参加することで中国主導の国際金融機関にお墨付きを与えてしまうというリスクの方がはるかに大きくなってしまう。


一方で、こうした日米の否定的な態度とは裏腹に欧州の反応は実に肯定的だ。

3月12日にはG7の一角であるイギリスが参加を表明したのである。

これを受けてドイツ、フランス、イタリアという欧州の残りのG7各国も相次いで参加を表明する事態となった。

これによって、当初は資金を融通してもらいたいアジア新興国が大勢を占め、国際金融機関としての体裁すら危ぶまれたAIIBは、錦の旗を手に入れた格好だ。

こうした情勢のなかで、アメリカと同盟関係にあるはずの韓国や、オーストラリアなど予想をはるかに上回る50カ国以上が参加する運びとなったのである。

日本と違い、欧州諸国が比較的容易に参加を表明できたのには地政学上のポイントがある。

つまり、中国と欧州諸国には領土問題などがなく、「安全保証上の問題」が存在しないのだ。
これによって、純粋に経済的なメリットのみで動くことができたのである。

さらに、英独などは昨年、人民元決済銀行の設立で中国と合意している経緯もある。

人民元の国際的な通貨競争力を高めたい中国と、人民元の取引を増やして金融市場としての競争力向上につなげたい欧州側、双方のメリットがうまく噛み合ったのである。


今回の国際社会の動きからは、明らかにこれまでのアメリカ一極時代の終焉に伴うパワーバランスの変化を見て取ることができる。
日本は来る時代の変革という大きな波を超えることができるのだろうか。
アメリカ追従の姿勢を見直す時がきているのかもしれない。

日経ビジネス 週刊ダイヤモンド 参照