【再投稿】フランス・第2の故郷 エクサンプロヴァンスVol.8 | すいらんぶろぐ

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フランス 3日目の朝

 

とても疲れていたらしく・・・

まあエクスに着いて6時間歩き回りましたから

けっこうすっきりと目が覚めて、

とにかくパリの松田さんに教えてもらった

安部さんという人の所へ行かなくては・・・・

と 先ずはエクスの地図で場所を確認。

 

前日に6時間も街の中をくまなく歩き回っていたので

位置関係も意外とすっきり分かって”さ~出発・・・”


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大きな噴水のあるロトンド

昨日より遥に美しい!!

 

昨晩、覚悟が出来た分 落ち着いて見えたのかもしれません。

ロトンドの噴水の周りをまわって、クールミラボー(ミラボー通り)へ

 

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美しいポプラ並木と ところどころにある噴水が美しい


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道幅が急に狭くなってすぐのイタリー通りを右に曲がり

パリの夜、松田さんから聞いていた建物の上の方にある番地を見ながら

進んで行くと、右手にパン屋(ブタンジュリー)が・・。


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その目の前の建物が、もしかしたら安部さんのアパート

大きく細長い扉の横にブザーが

そこを上から順番に見ていくと

「Kas・・・ABE」 ” ここだ~~~ あった~”

そのブザーを押してみる ”ブ~~・・・”

”カチャ”

返事がない・・・

”ブ~~”

”カチャ”

”ブ~~~”

”カチャ”

結構しつこくおしてみたもののうんともすんとも言ってこない。

そのうち上層部の窓から、

 

”キ エ~~ス (誰~) ”  安部さん???

日本人???

 

取りあえず日本語で ”すいません・・・”  

と大きめな声で

事情を窓に向かって話したら、

安部さんが階段を下りてきてくれたのですが

フランスではブザーを鳴らすと、

OKの場合は部屋から

外扉の施錠を解除すると、入ってきていい 

ということなのですが、

”カチャ” という音がなんの音か分からず

何度も何度もブザーを鳴らしたので

安部さん曰く ”誰かがブザーを鳴らしていたずらしてる”

と思ったらしいのです。

 

僕にはまったくそんな知識がそれまではなかったので

迷惑なブザーだったと思います。

 

で、”ま~あ 取りあえず部屋に来なさい” ということで

狭く古い、とても急な階段を上って

3階の安部さんの部屋へ・・・

そこは、本当に足の踏み場もないくらいいろいろなガラクタや

絵の道具やなんだかわからないようなものでいっぱいで

とにかく汚い!!

 

でも窓の外からはとてもさわやかな風と

向かいのパンやからおいしいにおいが・・・。

 

そんな部屋に入って ”まあどうぞ” と椅子に座ったら

”朝ごはん食べたの?”

”いいえ・・・”

昨日の昼から何も食べていない、

パン屋のおいしいにおいに反応している僕を

たぶん察知したのでしょう。

”じゃ~ちょっと、前のパン屋でパン買ってくるから、

一緒に朝ごはん食べよう!”

 

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しばらくするとパンの袋を片手に、

テーブルの上の目の前のなんだかわからないような

汚れたガラクタを無造作にどかして、その袋を置くと

 

”は~~~~~っ” なんともいいにおい。

 

見たことのない古めかしい 

あまりきれいとは言えない圧力コーヒーでコーヒーを入れて

ミルクをヘコンだ鍋で沸かして、カフェオレ。


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小どんぶりのようなちょっとビビの入った器に

コーヒーとミルクを注いでくれたのです。

この小どんぶり、

実は一般的なカフェオレボールだったのですが、

そんなこと知らないので、

なんでこんなどんぶりで飲むのかな~と。

本気で不思議でした。

 

でパンの袋を破いて、中からクロワッサンと

パンオーショコラが・・・

バターのすごくいい香りのそのパンを食べた瞬間

”なんだこれ~ なんておいしんだ~・・・”

あまりの美味しさに、まさにカルチャーショックでした。

 

それまで意外と僕は好き嫌いが多くて、

「お米の白いご飯がなくちゃ生きていけない!!」 

というタイプで

もちろんどちらかというとパンが好きではなかったので

本当に驚きでした。

 

勿論、昨日の昼から食べていなかったり、

ちょっとほっとした安心感や焼きたてのパンだったりと

様々な条件は重なっていたものの

それまで、そして今の今までで、一番美味しかった

クロワッサンとパンオーショコラです。

 

それからの僕の食べ物に対する感覚が

一変した瞬間でもあったと思います。

 

それにしても今考えると、

あの時、けっして余裕があったわけではなかった安部さんが

あのパンを買ったお金は、

大学食堂なら4回分の食費位だったので

迷える私をあんじての、心からの思いやりであったと、

心から心から感謝しています。

(安部さん今はどこに・・・)

 

そしてその後、宿泊しているホテルの名前を聞いて

”そんな高いホテルにいるの~~!!”

”じゃ~一緒に行ってあげるから

先ずホテル、チャックアウトしよう”

ってことになり、ホテルに直行。


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チェックアウトして安部さんのアパートに戻ると

”今の時期は、もうアパートを借りようとしても

もうなかなかいい物件がないから

しばらくこのアパートで寝泊まりしていいよ!”

ってことになったのですが

”どこにそんな部屋が・・・・”

すると奥のほうに扉が・・

扉を開けると窓のない暗くてカビ臭い、

それもかなりホコリがたまった小さな部屋があって

”ここなら、使っていいよ・・”

 

そして約一ケ月半、お世話になりましたが

安部さんにとっては、こころからの親切心だったと思いますが


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生涯であれほどすざましく汚くカビ臭い、

よく一月半も寝泊まりしていた・・・

と思うほどの部屋で過ごしたのは

それ以前もそれ以降も、その期間だけです。

たぶんあれ以下の場所は、僻地の牢獄??かも・・・

 

でも、その一ケ月半は、

僕を更にハングリーに磨き上げてくれた

美しく清らかな一ケ月半だったと思います・・・。


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つづく