フランス 3日目の朝
とても疲れていたらしく・・・
まあエクスに着いて6時間歩き回りましたから
けっこうすっきりと目が覚めて、
とにかくパリの松田さんに教えてもらった
安部さんという人の所へ行かなくては・・・・
と 先ずはエクスの地図で場所を確認。
前日に6時間も街の中をくまなく歩き回っていたので
位置関係も意外とすっきり分かって”さ~出発・・・”
大きな噴水のあるロトンド
昨日より遥に美しい!!
昨晩、覚悟が出来た分 落ち着いて見えたのかもしれません。
ロトンドの噴水の周りをまわって、クールミラボー(ミラボー通り)へ
美しいポプラ並木と ところどころにある噴水が美しい
道幅が急に狭くなってすぐのイタリー通りを右に曲がり
パリの夜、松田さんから聞いていた建物の上の方にある番地を見ながら
進んで行くと、右手にパン屋(ブタンジュリー)が・・。
その目の前の建物が、もしかしたら安部さんのアパート
大きく細長い扉の横にブザーが
そこを上から順番に見ていくと
「Kas・・・ABE」 ” ここだ~~~ あった~”
そのブザーを押してみる ”ブ~~・・・”
”カチャ”
返事がない・・・
”ブ~~”
”カチャ”
”ブ~~~”
”カチャ”
結構しつこくおしてみたもののうんともすんとも言ってこない。
そのうち上層部の窓から、
”キ エ~~ス (誰~) ” 安部さん???
日本人???
取りあえず日本語で ”すいません・・・”
と大きめな声で
事情を窓に向かって話したら、
安部さんが階段を下りてきてくれたのですが
フランスではブザーを鳴らすと、
OKの場合は部屋から
外扉の施錠を解除すると、入ってきていい
ということなのですが、
”カチャ” という音がなんの音か分からず
何度も何度もブザーを鳴らしたので
安部さん曰く ”誰かがブザーを鳴らしていたずらしてる”
と思ったらしいのです。
僕にはまったくそんな知識がそれまではなかったので
迷惑なブザーだったと思います。
で、”ま~あ 取りあえず部屋に来なさい” ということで
狭く古い、とても急な階段を上って
3階の安部さんの部屋へ・・・
そこは、本当に足の踏み場もないくらいいろいろなガラクタや
絵の道具やなんだかわからないようなものでいっぱいで
とにかく汚い!!
でも窓の外からはとてもさわやかな風と
向かいのパンやからおいしいにおいが・・・。
そんな部屋に入って ”まあどうぞ” と椅子に座ったら
”朝ごはん食べたの?”
”いいえ・・・”
昨日の昼から何も食べていない、
パン屋のおいしいにおいに反応している僕を
たぶん察知したのでしょう。
”じゃ~ちょっと、前のパン屋でパン買ってくるから、
一緒に朝ごはん食べよう!”
しばらくするとパンの袋を片手に、
テーブルの上の目の前のなんだかわからないような
汚れたガラクタを無造作にどかして、その袋を置くと
”は~~~~~っ” なんともいいにおい。
見たことのない古めかしい
あまりきれいとは言えない圧力コーヒーでコーヒーを入れて
ミルクをヘコンだ鍋で沸かして、カフェオレ。
小どんぶりのようなちょっとビビの入った器に
コーヒーとミルクを注いでくれたのです。
この小どんぶり、
実は一般的なカフェオレボールだったのですが、
そんなこと知らないので、
なんでこんなどんぶりで飲むのかな~と。
本気で不思議でした。
でパンの袋を破いて、中からクロワッサンと
パンオーショコラが・・・
バターのすごくいい香りのそのパンを食べた瞬間
”なんだこれ~ なんておいしんだ~・・・”
あまりの美味しさに、まさにカルチャーショックでした。
それまで意外と僕は好き嫌いが多くて、
「お米の白いご飯がなくちゃ生きていけない!!」
というタイプで
もちろんどちらかというとパンが好きではなかったので
本当に驚きでした。
勿論、昨日の昼から食べていなかったり、
ちょっとほっとした安心感や焼きたてのパンだったりと
様々な条件は重なっていたものの
それまで、そして今の今までで、一番美味しかった
クロワッサンとパンオーショコラです。
それからの僕の食べ物に対する感覚が
一変した瞬間でもあったと思います。
それにしても今考えると、
あの時、けっして余裕があったわけではなかった安部さんが
あのパンを買ったお金は、
大学食堂なら4回分の食費位だったので
迷える私をあんじての、心からの思いやりであったと、
心から心から感謝しています。
(安部さん今はどこに・・・)
そしてその後、宿泊しているホテルの名前を聞いて
”そんな高いホテルにいるの~~!!”
”じゃ~一緒に行ってあげるから
先ずホテル、チャックアウトしよう”
ってことになり、ホテルに直行。
チェックアウトして安部さんのアパートに戻ると
”今の時期は、もうアパートを借りようとしても
もうなかなかいい物件がないから
しばらくこのアパートで寝泊まりしていいよ!”
ってことになったのですが
”どこにそんな部屋が・・・・”
すると奥のほうに扉が・・
扉を開けると窓のない暗くてカビ臭い、
それもかなりホコリがたまった小さな部屋があって
”ここなら、使っていいよ・・”
そして約一ケ月半、お世話になりましたが
安部さんにとっては、こころからの親切心だったと思いますが
生涯であれほどすざましく汚くカビ臭い、
よく一月半も寝泊まりしていた・・・
と思うほどの部屋で過ごしたのは
それ以前もそれ以降も、その期間だけです。
たぶんあれ以下の場所は、僻地の牢獄??かも・・・
でも、その一ケ月半は、
僕を更にハングリーに磨き上げてくれた
美しく清らかな一ケ月半だったと思います・・・。
つづく