花火師の仕事に行って来ました。(長文) | 酔渓の山暮らし日誌

酔渓の山暮らし日誌

釣り日誌でしたが諸事情から山暮らしの日記に変更します。また釣りに行けばその事も書きますが、回数は少なくなります。

しばらく音沙汰のなかった酔渓ですが
実は色々あって花火のバイトに行ってきました。。
(実際に行ってきたのはお盆明けです)


私のセットした花火で
大会の開始が告げられます。

(殆ど教えて貰ってセットしたのですがそれでも嬉しい、打ち上げは勿論本職の花火師、点火には厳格な資格がいるのです)


とある県内の林業会社の知り合いから紹介された伝説のバイト!!


それは夏の華!!
夜空に咲く花火師!!



山仕事と全然関係ないのですが
唯一の共通点は危険な事(笑)


私も花火師の仕事がどんなもんか全然わからないまま行ってきました。

この段階で唯一の前知識としては

・きつい!しんどい!
紹介してくれたSさんによると、どうやら真夏の炎天下でひたすら花火の設置を行うらしい?


・職人気質な世界なので怖い人が一杯?
NHKか何かで昔みたドキュメンタリー番組のイメージ?

・会場は愛媛の松山あたりらしい
私はこの時はじめて愛媛に行きました。
(松山と言えば昔勤めてた会社で総務にいた美人、社内のアイドルUちゃんが確かあの辺の出身だった。今回Uちゃんはひと欠片も登場しませんが・・・全く私事ですいませんf(^^; )



う~んこれくらいしか思いつきません(>_<)


とりあえず、行けばどうにかなるさ
と言うことで指定された時刻に某インターで花火師のTさんと待ち合わせ。

大会前日の夜7時合流
Tさんは普通のセダンでやって来ました。
てっきり職人仕様のハイエースか何かで来るものと思っていましたが普通のツートーンカラーのミドルセダンでいきなりイメージが違います。
(イメージと言っても単なる思い込みですが)



そしてTさんの車に乗り込みいざ松山へ出発

徳島自動車道を走ります。

車内でふと途中の電工掲示板に出ていた事故の情報を(この日は徳島道でバスが事故った日でした。)
話題にしたとき

Tさんの顔色が替わりました
厳しい顔で「危ない事しに行くんやから、余計な事は口にするもんとちゃうぞ」と

やはり職人、かなり験は担ぐようです私がうかつでした。




この時点で新たにわかったおおよそのことと日程は
このまま現地まで走って深夜到着
その後軽く現場の場所を確認してそのまま車中泊

夜明け前におきて(睡眠時間3時間)
夜明けと同時に設営開始

昼過ぎまでに大方の準備を終えて休憩
そして夕方前から最終準備を行ってそのまま打ち上げ

花火を打ち上げて大会終了と同時に片付け開始
全ての片付けをその晩のうちに終えてその足で深夜に帰路に着くと言う
かなりのハードスケジュール


火薬を使うのでタバコは絶対NG!
どんなヘビースモーカーも現場の前後はタバコの箱にさえ触らないらしいです。

同じく水もNG!
火薬が湿気を嫌うので、水分の持ち歩きもNG!

設営場所から離れた所に給水場を作りそこ以外での水分摂取は絶対禁止!!


ついでに汗もNG!

まーしょうがないのですが
間違て火薬が湿るといけないので
手を濡らす事がないよう汗を素手で拭ってはいけない!また汗を滴らせるのもNGなのでとにかくタオルや手拭いを手放すなと言うこと



車中泊早朝行動は釣りで馴らしましたが果たして勝手の違う仕事で体力が持つでしょうか?

せめての気休めにコンビニで
リゲインを購入

(昔「24時間働けますか?」と
今ならかなりブラックなキャッチコピーでCMしていましたね。)


(以下現地では殆ど写真がありません、殺気立つ職人集の前でケータイに触る度胸はありませんでした)


そして翌日の大会当日
夜明けを迎えた愛媛県松山

なんとこの日は朝から寒冷前線が通過
すでに遠くでゴロゴロ言っています。



ヤバそうな雰囲気ですが昨日の事があるのであえて口には出しませんでした。


そして、花火師部隊、本隊と現場で合流
5人の花火職人が2台のトラックと共に現れました。

皆さん心配そうに空を見ますがやはり
NGワードなのか誰も口には出しません。

軽く自己紹介と挨拶をして
今回のメンバーが
リーダー(先打ちと言うらしい)現場の一番偉い責任者であるTさん

火薬のリーダーの工場長

点火のリーダーのKさん

そして花火職人のお二人


一番下っぱ、最後がバイトの私と言うメンバー






挨拶も済んで
まず最初の仕事はテント立てです

運動会で使うような三角テントをトラックの横に立てて
さらにブルーシートの屋根でトラックと接続


どうやら雨対策で、作業場を確保しているようです。


そんなこんなしていると
ついに雷と共に雨がやって来ました。

前線の雨なのでかなりの雨足
これで作業は中断

職人さんの顔が曇ります。
私も待機といわれたのですが
ピリピリモードで口も交わさず空を見上げる職人と一緒では、下手に気を抜く訳にもいかず気まずい空気

「とりあえず、今のうちに朝飯食っとけ!」と握り飯を渡されますが、皆さん手にも取らない。
私もどうしようか迷っていたら
「食っとけ!と言ってるだろが」とお叱り


う~んf(^^;
そうとうピリッてますね
無事に帰れるのだろうか・・・



その後、午前7時を過ぎて雨足も弱まり急ピッチで設営の開始
この日は約30分の花火を設置します。(比較的小規模とのこと)

まずは打ち上げ筒の配置



川原の土手に構える打ち上げ場所に
トラックから金属製の打ち上げ筒を運びます。

太さ10~15㎝で、長さは40㎝程の金属菅が10本事に連結されているものです。
(実際には尺貫法なので3寸から4寸の太さ、それ以上大きい物は単発か5本で1セット)



この時注意するのは、筒の中にゴミや水が入らないように、必ず口を下に向けて運ぶ事。


必要な分の筒をおおよその位置に置いたら今度は
鉄杭を地面に打ち、荒縄で筒を固定して行きます。

なんで荒縄かと言えば理由は後でわかりました。






こちらはセッティングを終えて発射まの花火




並べた筒に職人さんが
花火を装填して行きます。

大まかな手順は
筒に発射火薬を入れて
導火線をセット

丸い紙で出来た花火を装填

発射口に異物が入らないように油紙で封をし

さらに油紙とビニール、テント生地で徹底的にラッピング

発射薬や導火線も色々ノウハウはあるようでしたが
素人目に驚いたのは発射用の火薬は僅かオチョコ一杯程度

大体30㌘前後しか入れないのです
これで70mから90m上空まで花火が打ち上がるとの事で
発射薬の量は打ち上げる花火や天候、演出で僅かに調整するそうです。

なんと今回、私も花火のセッティングをやらして貰いました。

教えて貰いながらセッティングしたのは
大会開始を伝える昼玉と(昔の運動会とかで上げてた音だけのやつです)

近ごろの花火大会の華
スターマイン!!
(中型の花火が連続で上がる賑やかな花火)
1回のスターマインでおよそ70発くらいの花火が1セットになります。


(打ち上げの資格がないのにセッティングは良いのかと思われるでしょうが、きちんとした監督者さんの元で手伝いは可能だそうです。今回は手伝いにもならない、当に見習いが教えを受ける程度の範疇でした。)


スターマインにセットする花火は色々味付けがあって
これもセッティングの際にチョイチョイ入れて行きます。

今回教えて貰ったのは
星、笛、雷の3つ

下の写真にもそれぞれの写ってますがケータイ写真程度だとわかりずらいですね
ごめんなさいm(__)m



打ち上がる花火の下で、一緒に飛び出る色とりどりの光り玉が「星」
駄菓子のラムネくらいの粒で
小袋ごと筒に入れます。


いわゆる花火の音のヒュルルル~!ドッ~ン!バチバチバチ!

これのヒュルルル!が
「笛」口紅くらいの紙筒に火薬が詰まったやつで燃えながら風切り音が出ます。
打ち上げる花火を良く見ていると花火の下で回転しながら飛んでいく小さな火が見えます。あれが笛です。

バチバチバチ!が雷
ピンポン玉より少し小さな火薬の玉
で文字どおりバチバチ!バラバラ!とあの花火らしい音を出します。



そんなこんなで
設置を進めていた所
午前10時を回って再び雨足が強まります。

和みかけた現場が再びのピリピリモード

私ら下っぱは、体を張って火薬と設営隊を雨から守ります。

火薬を触る者は絶対雨に濡れられないので、ありったけのシートで四方から設営隊を取り囲みガードします。

勿論私らはずぶ濡れグショグショ
それでもテントに吹き込む雨から火薬を守るため、雨避けの楯になるのです。
そもそもバイトが一番役立つ仕事はこれくらいしか無い(笑)


頭の先からパンツの中までグショグショになった頃設営が終わり

午後になってやっと雨も上がり
職人さんたちにも笑顔が出てきて
遅めの昼飯時には、他愛ない話に花が咲くようになりました。

機嫌良くなったのか、私にも特別にタバコを吸いに行く許可が降りました。\(^^)/


うんと遠慮して100mほど離れた空地まで行って思いっきりニコチン補給

シワクチャになったタバコでしたがこんなときの煙りは美味いものです。


しかし、その後は寒かった、火薬を置いて現場を離れられないので見張りをしつつ休憩するのですが

びしょびしょのままトラックや仮設テントで仮眠です。
万が一、また雨が降ったらそのまま作業ですし
乾いた服は夜の打ち上げ本番と帰りように残して置かなければいけないからです。

ぶるぶる震えっぱなしで、新聞紙と段ボールで都会の自由生活者のようなシェルターを急造して何とか人心地つきました。


17時を過ぎて
打ち上げが近づくと
セッティングした花火から
テント地とビニールを外して最終準備を始めます。

遠隔操作の分は
点火師さんが導火線に点火コードを接続して行き

手動の分は導火線の最終調整(この辺はノウハウの固まりのようで、書くことが出来ません)


「速打ち」と呼ばれる職人さんは
単発花火を手動で連射する準備にかかります。



これは単発の打ち上げ筒の中に真っ赤に焼けた鉄を放り込み、

その上から打ち上げ火薬と花火がセットになった
専用花火を一発事に手動で投入
これを繰り返し
同じ筒から何発も連射しようという物


スターマインのように事前に大量の筒設置はいらないものの、発射中ずっと真横に張りつき

猛烈に発射される火の粉と爆音、衝撃波にさらされ
暴発すればひとたまりもない火薬の塊を、体一つで扱う当に危険な仕事。

TV番組ならば、まさしく花形として取り上げられる役回りです。

スターマインの手動点火や静電気一つで暴発するかもしれない電気点火も怖そうですが・・・・






さて
とうとつですがここで花火大会は終ります。


何故なら打ち上げの免許を持っていない私はこの後花火に触れる事は許されないからです。

無資格者が打ち上げ中の現場にいることも出来ないので
安全圏まで退避して見物しているより他にありません。



その分最後の撤収で頑張るのがバイトの花形(笑)


こうして無事に花火大会も終り遠くの一般会場から終了のアナウンスが流れる頃、こちらは真っ暗になった川原で撤収作業です。

打ち上げ筒を固定していた荒縄を切り
杭を引き抜きトラックへ積み込みます。
くらい川原には花火の残骸や封に使った油紙、縄の切れっぱしが散乱し
最後に全員でローラー作戦の容量で横一列で進みながらゴミを拾います。

勿論猛烈な発射のいきおいで何処に飛ばされたり、暗闇で回収漏れもあるわけですが
この為に、荒縄や紙など全て自然に帰るもので設置していたのです。
川原の草むらに僅な紙片や縄の切れっぱしがあったところで環境的にはそこら辺の枯れ草と大差ない訳ですので、

下手にビニールやプラスチックばらまくくらいなら昔ながらの自然素材が適しているわけです。

それにビニールやプラは熱で溶けたりくっついたりしますが
紙なら焦げる程度ですので、安全で掃除も格段に楽になるのです。

山仕事とは違いますが、環境を考えて道具を選ぶ

意外な所に共通点がありました。