藤沢市での虐待事件、指摘すべき点が多すぎる

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昨日、藤沢市で2歳の男の子が

虐待により亡くなり、

母親が逮捕されたとの

ニュースがありました。

 

児童福祉司、児童相談所の現場にいた私からすると

事件の概要を見ると、

報道発表の限りではありますが

 

児童相談所の人為的なミスが

多数見受けられ、

本当に重大な事件であると感じました。

 

2歳の男の子を想うと

本当に胸が痛く、いたたまれません。

 

問題な点は複数ありますが、
まず、第一に

意思疎通の難しい2歳の子と

当初よりネグレクト(育児放棄)で

受理されていた母の、

なにをもって

「親子関係が整った」と判断したのか。

 

平塚児童相談所が

男の子が母との面会から

「戻る時に楽しく過ごせた様子が見受けられ、

安心できる状況かと思っていた」

としていますが、

これはあまりに根拠に乏しい。

 

職員がいる目の前で

虐待をする親はいません。

 

その場では当然、楽しそうに

優しそうに

子どもに接するのです。

 

だからこそ

児童相談所で面会するときの親は、

家でどんなに暴力をふるう人でも

子どもからは一時、優しそうに見える。

 

その限定的な親の姿に

安心した様子を見せたとしても

判断の根拠にはならないのです。

 

自分自身が家庭に帰ったときに

安全でいられるか、などというのは

2歳の子には、

もっと言えば

高校生であっても判断はできません。

 

あらゆる状況を加味して

児童福祉司が大人として、客観的に、

適切な判断をするしかないのです。

 

二つ目に、

一番大きな問題は、藤沢市から平塚市への

引っ越しというタイミングで

保護をしていた子を家庭に帰す、

いわゆる「家庭復帰」

させたことです。

 

通常、市区町村をまたぎ、

引っ越しをする場合、

多くは管轄が変わるため、

新旧の管轄児童相談所で「ケース移管」と

呼ばれる引継ぎが行われます。

 

しかし、児童相談所にかかっている親子が

「引っ越す」というのは

本当にハイリスクであり、

細心の注意が必要なのです。

 

なぜ引っ越しがハイリスクであり、

注意が必要なのかと言えば、

 

・親子をよく知る児童相談所の目が

届かなくなり、

それをいいことに

虐待が悪化したり、

最悪の場合は

虚偽の引っ越し先などを提示され

行方が分からなくなる。

 

・管轄や担当の児童福祉司が変わり

親子への危険の認識が相違することで

見守りの体制が不十分になる。

 

・新居の構造によっては

泣き声が聞こえづらかったり、

それまで「危ないのでは?」と

心配して通告などをくれていた近隣の方などが

いなくなり、虐待の発覚が遅れる。

 

・新居、引っ越し作業、慣れていない環境など

新たなストレスが発端となり

虐待が発生しやすい。

 

などなど、挙げればきりがありません。

 

今回の場合も、

このようなタイミングで、

しかもそれが、

それまで保護により分かれていた

親子が初めて合流する家庭復帰

であったというのは

本当に重大な判断ミスであったと思います。

 

児童福祉司、児童相談所の現場にいた私からすると

上司や他の職員がいながら

なぜこうした判断がまかり通ってしまったのか、

甚だ疑問です。

 

このケースでおかしいと思うこと

は他にもありますが、とにかく

このような事件が起こってしまったことを受けて、

全国の児童相談所がいま一度、

基礎に立ち返り

虐待対応を見直すべきであろうと

思います。

 

少なくとも、新しく新設される

私の地元の杉並区立 児童相談所においては

このようなことを起こさせないように

徹底した対応を取るよう、

全力を尽くしたいと思います。

 

空来君のご冥福をお祈りいたします。