寒い!冷たい!でもバイクに乗るのはなぜ?/西日本ツーリング(その1) | 直球オヤジの自由奔走生活

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座右の銘は「"行きたい"、"やりたい"、"欲しい"と思った時が"その時"」。55歳で早期退職し、高齢者と呼ばれるまでの今が"その時"。趣味のバイクや自転車は年齢的に待ったなし。エコノミーな生活で趣味を楽しむ。これをどう追い求めるかが、このブログのメインテーマです。

昨夜、一週間のツーリングから無事故無転倒無違反(厳密には違反はしているが捕まっていないだけ)で帰宅した。今回はとにかく寒かった。なのになぜバイクに乗るのか?

春のうららかな陽気に誘われて・・・西に向かって出発したのはいいけれど、この週は寒気が入り込み寒くなると言われていた。とは言え、もう3月中旬なんだからと楽観的に出発したが、予報的中。とにかく終始寒かったが、あまり雨には降られなかったのは幸いだった。そして最終日、昨日の徳島から帰路は一日中、
約10時間寒さと雨に晒され続けた

帰路では
渋滞に嵌った。名神高速道路の京都の手前でピタリと止まった。全く動かない様子からして、自然渋滞ではなく事故のよう。路上に停車した私に冷たい雨が降り注ぐ。流れは完全に止まった。周囲の車をチラッと見ると暖かそう。情報を提示するナビの画面も見える。こちとら何もできず、雨の中で車列が動くのをただジッと待つだけ。

気温は何℃かわからないが、一桁であることは間違いない。まともなカッパを着ているから水は侵入してこないが、雨用というふれこみの
安いグローブは水が内側に浸透してきて、冷たいことこの上ない。高速で走行すると風の影響を受け、更に冷たくなり指先が痛くなるほど。この渋滞はどこまで続いているのか、原因は何かなど知りたいが、ウエストバックに収めているスマホを取り出して調べることは不可能だし、ハイウェイラジオの情報もバイクでは得られない。そうこうしていたら頭がちょっと痒い。ヘルメットを脱いで搔きむしりたいが、それも不可能。丁度昼飯時でお腹が減って来た。車なら運転しながらおにぎりやお菓子をポリポリ食べることができるが、バイクは当然できない。

ようやく車列が少~し進んだ。バイクは基本的にマニュアルミッション。左手でクラッチレバーを握って、左足で一速にシフトし、右手のフロントブレーキレバーを開放しながら、クラッチを繋ぎつつ右手のスロットルグリップを静かに回す。歩くほどの極低速だからバランスにも注意を払う。文章にすると非常に複雑な動作だが無意識にやっている。でもこのような渋滞では、この普段の動作が非常に面倒に感じるのは言うまでもない。

渋滞の長さは僅か2kmほどだった。案の定、原因は事故だった。その現場を30分以上掛かって通り抜け、ようやく最寄りのパーキングエリアに到着。急いでトイレに駆け込む。ただでさえ頻尿なのに、ここに寒さが加わり
暴発寸前。トイレに行っても雨具や防寒具など着込んでいる上に、寒さで手の先が痺れ、なかなかアレが出てこない。ああ、もどかしい!。そうやって用を足したならば腹ごしらえだ。しかし、雨具を着たまま店内に入るしかない。周囲の人々は暖かそうで小綺麗な格好をしているのに、こちらはビショビショのカッパ姿。少しマヒした指で小銭が上手く掴めず、食券販売機にお金をスムーズに挿入できない。ああ、嘆かわしい。

こういうシチュエーションに晒されると、
バイクとは何とも不便で禁欲的な乗り物なんだろうかと思わされる。今日は寒さと雨が災いしたが、これが真夏の炎天下だったら、ヘルメットを被り、長袖長ズボンのライダーウェアを着込み、ブーツとグローブで保護をし、股下のエンジンの熱気や路面の照り返しを受け熱気ムンムンとなり、不快さを通り越して熱中症のリスクさえある。バイクにはエアコンは無い。こんな不完全で不便で不安定な乗り物に半世紀以上も乗り続けているが、何がそうさせているのだろう。

バイク以外のいわゆる自動車は快適で便利。単なる移動手段としてみたら素晴らしい乗り物だ。寒さや暑さとは無縁だし、渋滞に巻き込まれても最近の車は自動で追従してくれるし、ナビやスマホを操作して渋滞情報も得られるし、腹が空けば車内で飲食も可能。対してバイクはことごとくこの反対の世界。
不快で不便で不安定極まりない。渋滞に嵌ったらほぼ何もできず、アクセルとブレーキとシフトとクラッチを小刻み且つ頻繁に動かすしかない。バイクの乗らない人からしたら「気が知れない」と思われても当然だ。

それでもバイクツーリングを趣味としている
酔狂な人が多くいる。私もそんな人間のひとり。これはなぜなんだろう。確かにバイクは不便だし快適ではないが、多くの場面で悦楽的、享楽的な楽しさが味わえる。気持ちいいコーナーをバイクをバンクさせて駆け抜ける爽快さ。クネクネと曲がりくねったブラインドカーブが続く狭い山道を、ヒョイヒョイと素早くかつ安全に走る面白さ。私のバイクは悪路も走れるので、未舗装路のギャップと落石などを避けながらガンガン登って、そして飛び跳ねるように下って行く力強さと俊敏さ。まだまだ魅力はあるが、バイクの魅力を敢えて一言で表現するとしたら、圧倒的な機動力と爽快さだ。その反面、圧倒的な不便さと不快さが降りかかってくるが、この魅力に負けてバイクの世界に嵌ってしまうのだろう。

 

未舗装路でもガンガン行こう

狭い海岸際の道路でも小回りが利くから不安は無い(佐賀関)

 

バイクの不便さや不快さを少しでも改善しようと、最近ではグリップヒーターや電熱グローブをいうものも普及して来た。スマホをナビに使うのはバイクでは一般的で、それをヘルメットに装着したインカムに接続して情報や音楽も得られる。少しばかりの費用で不便さも不快さも多少改善されるが、基本的にバイクは不便であり快適なものではないことに変わりはない。でも”楽しい”し”気持ちイイ”。これはすごく重要なことだと思う。



同じ景色でも、ここに来るまでの移動手段によって見え方は違う(佐田半島)

 

楽しい」とか「気持ちイイ」という人間的な本能を感じなくなったら、そろそろバイクとお別れの時期ということ。幸いにも私にはまだそれらの感覚がある。だから乗る。雨の中、横の乗用車を見て羨ましいとは感じない。バイクはスマホのような何でもできる魔法のツールではない。技術の進歩でバイクも少なからず進化しているが、基本的に非常に単純でシンプルで原始的な乗り物だ。ただそれだけだが、それでいい。いや、それがいいのだ。