路線毎の落差に驚く(前編) | 直球オヤジの自由奔走生活

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座右の銘は「"行きたい"、"やりたい"、"欲しい"と思った時が"その時"」。55歳で早期退職し、高齢者と呼ばれるまでの今が"その時"。趣味のバイクや自転車は年齢的に待ったなし。エコノミーな生活で趣味を楽しむ。これをどう追い求めるかが、このブログのメインテーマです。

先日、北東北をぐるっと鉄道でまわって来た。そこで見たのは、路線によって混み具合が余りにも極端に違うこと。これはなぜ?そして人々はいったい何処へ行くのだろう。

今、JR東日本から発売されている(2/29まで)「
旅せよ平日!JR東日本たびキュン?早割パス」という長ったらしく、妙なネーミングの乗り放題キップを使って、カミさんと旅に出た。まずは静岡から盛岡へビューンと行き、日本海を北に進んでみよう。

このキップを使って
東北新幹線の「はやぶさ」で岩手県までひとっ飛びしようと、出発数日前に指定席を取ろう(「はやぶさ」は全席指定)としたら、なんと満席!。しかし直前になってキャンセルが出て、ようやく当初目論んでいた便が取れた。鉄道の旅の良さは庶民的な気軽さにあるのに、今や指定席を確保しないと思い通りに長距離移動ができないし、それも「えきねっと」に代表されるように、ネットを駆使しないと達成できないことが多くなった。全国の鉄道を完乗している私はローカル線や普通列車には詳しいが、特急や新幹線、観光列車にはそれほど詳しくない。このような実態に認識を新たにしよう。

さあ久々の東京駅。働いていた時には出張などで何度も来ている東京駅だが、多くの国、老若男女、勤労者やツーリストが入り交じり、平日なのにごった返しており、少々うんざりする。「ああ、早く誰も乗っていない路線に行きたい」。そんな東京を満員の「はやぶさ」は出発。車掌のアナウンスでも満席と言っていたが、乗客の風貌からして
多くは観光客と思われる人々。東海道新幹線と違ってビジネスマンが少ない。いったい、こんな多くの人はどこを目指しているのだろう。あっという間に仙台駅に到着。東北新幹線は車窓はつまらないが、とにかく速い!。そんなはやぶさは、大まかに言って、ここ仙台駅で約1/3の人が降りた。そして、次の盛岡駅でまた1/3ほどの人が降りた。残りの1/3の乗客は青森か北海道に向かう。

盛岡からJR
花輪線で秋田県北部の内陸部の町、大舘を目指す。車両は一気に単行(一両編成)になった。駅の片隅の0番線からひっそりと出発。ディーゼルエンジンの唸りと振動が気分を盛り上げる。閉鎖的な新幹線と違って、ノンビリとそして開放的な気分に浸り、やっと旅らしくなった。そんな花輪線には当初数十人乗っていたが、盛岡周辺の駅で次々降り、安比高原駅以降は10人以下になってしまった。10年程前にこの路線に乗った時は私一人しか乗っていなかったから「結構乗っているじゃん」と思うが、盛岡駅まで新幹線に乗って来たあの多くの人々は何処へ向かったのだろう。

大舘駅からは
奥羽本線に乗り換え、東能代駅から待望の五能線に乗り換える。絶景路線としてかなり知れ渡っている有名な路線だが、車両編成は単行。乗客は20人以下。そして、その日の宿がある「あきた白神」駅で降りたのは私ら夫婦二人だけだった。駅の目の前にある日帰り温泉施設を備えた宿は立派だし、快適だし、飯も良かったが、宿泊客はどうやら私ら一組だけのよう。鄙びた集落の鄙びた民宿ならばそれは大いにありうるが、こんな立派な施設だし、目の前には日本海がバーンと開けている絶好のロケーションなのに、なぜか客がいない。

 


JR五能線乗換駅の東能代駅の待合室

東能代駅の待合室の中には運転席がある

 

早朝は五能線のあきた白神駅を6時12分発の列車に乗る。現在、五能線は一部の区間で工事をしており、日に寄っては一部の便を運休させている。この工事のおかげで、秋田から青森方面に抜けるには、この明け方近くの列車に乗らないと、次は夕方まで無いという恐ろしいダイヤになっている。だから朝食も摂らずにこの列車に乗らねばならない。風はしのげるが暖房は無い寒い駅舎で待つこと10分。夜が明けようとしている中を単行列車がやって来た。車内の乗客は地元の人と思われる方が1人だけ。そこに私ら夫婦が乗り込み、3人の乗客を乗せて出発進行。その後、先客は途中の駅で降り、とうとう私ら夫婦二人だけになってしまった。荒々しい日本海を眺めながら列車は北へ。青森県に入るとポツリポツリと乗客が乗って来て二人旅は終わったが、絶景路線として名高いはずの五能線なのに、こんなにも乗客が少ないとは驚きだった。

 

朝が明ける頃、一番列車がやって来た

五能線の車窓からは荒々しい日本海がずっと臨める


さあ、次は五所川原駅から「津軽鉄道」を目指そう。津軽鉄道の冬は「ストーブ列車」という風変わりな観光列車が有名。ストーブ列車には私は過去に乗ったことがあるし、カミさんも「わざわざ追加料金(運賃に+500円)を払ってまでストーブ列車に乗りたいとは思わない」「石炭をくべるストーブ列車の何がそんなに面白いのか」と素朴な疑問を呈す。しかし、五所川原まで乗ってきた五能線の閑散状況からして、更に鄙びた津軽鉄道はもっと悲惨な状況ではないかと予想し、「津軽鉄道の存続のためにも、これは乗ってやらないと・・・」という、ちょっと義務的な気持ちを抱きながら五所川原駅に向かっていた。

そして五所川原駅に到着。すると何やら様相がおかしい。寂しいはずの津軽鉄道のホームが、ちょっとざわざわしている様子。それでも特に気に留めず、まずは津軽鉄道のボロ駅舎を見に行く。そしてキップ(硬券)を買う。すると「
ストーブ列車は満員だと思います。その場合は普通車になってしまいますが良いですか?」と問われたが、「まさか、そんなことあるまい」と思いながらホームに進み、ストーブ列車の車両の中を外から伺って驚いた。本当に満員だ。空いている席が見えず、なんやらワンワンしている様子。そして多くの笑顔が見える。きっとアテンダント(津軽鉄道に「アテンダント」はちょっと不釣り合いないので、なんと称したらいいのだろう?)が難解な津軽弁で盛り上げているのだろう。酒やおつまみを売り歩く売り子さんの姿も見える。



はっきり言ってボロイ、いや風情のある、趣のある津軽鉄道の津軽五所川原駅

津軽五所川原駅構内の除雪車

先頭が一般車両、二両目がストーブ列車

 

私ら夫婦はストーブ列車に特に乗りたいとは思っていなかったので、乗れないことを残念には思わなかったが、残念さをにじませながら普通車両に乗り込んで来る人もいた。ストーブ車両一両と普通車一両の二両編成の列車は、片や満員、片やガラガラという不思議な状態で出発。ストーブ列車の半分は団体が占めていた。旅行会社主催のストーブ列車に乗るツアーの広告を見たことがあるが、個人旅行しかしない私から見たら「こんなツアーに参加する人はいるのか?」と疑問だったが、これほど人気があるとは思ってもなかった。五能線はあんなにも閑散としていたのに、なぜここにはこんな多くの人がいるのか。津軽鉄道は商売上手なのか。しかし、一般車両のスカスカさ加減からして、経営は決して楽ではないはず。だから、どんな要因であろうとも、こうして多くの客が押し寄せている現状を喜ぼう。

 

津軽鉄道では今でもタブレット交換による運用がされている

 

こうして津軽鉄道に乗り、新青森駅に移動。この駅も多くの人で賑わっていた。ここ新青森駅の賑わいから、青森にかなり多くの人が来ていることが想像できるが、冬の青森に来て何処へ行くのだろう?私は鉄道に乗っているだけで楽しいが、今まで乗って来た路線で賑わっていたのは津軽鉄道のストーブ列車だけ。他には冬の八甲田?青森市内見物?バイクツーリングを最大の趣味とする私から見て、ツーリングエリア的には青森は大好きな県で、走りたい道が目白押し。でも冬の青森に鉄道で来て、ここからどこへ向かうのか全く想像ができない。

そんな疑問を抱きながら、私ら夫婦は日本海側から
太平洋側に移動し、これまた有名な三陸鉄道を目指した。
(次回に続く)