北海道鉄道の旅(その1)/インバウンドは何処へ行く | 直球オヤジの自由奔走生活

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座右の銘は「"行きたい"、"やりたい"、"欲しい"と思った時が"その時"」。55歳で早期退職し、高齢者と呼ばれるまでの今が"その時"。趣味のバイクや自転車は年齢的に待ったなし。エコノミーな生活で趣味を楽しむ。これをどう追い求めるかが、このブログのメインテーマです。

昨夜、北海道の鉄道の旅から帰宅した。鉄道とバスを乗り継ぎ、冬の北海道をほぼ一周。バイクや自転車で何度も走ったこの地で、どんな発見があるだろうか。まず気になったのはインバウンド(外国人旅行者)の存在だった。

往路は空路で行く。成田空港から新千歳空港へと向かう。バイクと鉄道、そしてフェリーの旅は経験豊富の反面、私の旅では飛行機を使う頻度は少ない。今回の旅では、あまり使いたくないがとにかく安いから
LCC(格安航空便)を使う。LCCは過去に2~3回使ったことがあるので勝手は知っているが慣れてはいない。

成田第2ターミナル駅を降りると、案の定、
LCC専用の第3ターミナルまでの長い道のりが始まった。寒い通路を上へ下へ、そしてクネクネと歩かされる。それでも中部国際空港のLCC専用ターミナルほど酷くはなく、ほどなく第3ターミナルに到着。そんな周囲を眺めるとインバウンドばかり。ここは外国の空港か?チェックインカウンターもフードコートも手荷物検査場も搭乗待合室も、どこもインバウンドが目立つ。半分以上がインバウンドではないかと思う。しかし、明らかに少ない層がある。それは日本人の高齢者層。私もその類に十分入るが、この層の客が極端に少ない。LCCの予約は原則ネットだし、手荷物の制限は厳しいし、様々なオプション選択があったりと実にうっとうしい。そして、搭乗ターミナルまで長い長い距離を歩かされる。こういうのを嫌って高齢者層が少ないのではないかと想像するが、とにかく安いのだからその程度の事はガマンしよう。それがイヤなら大枚はたいて大手キャリアに乗ることだ。

 


第3ターミナルの搭乗待合室は質素そのもの

横に伸びる低い建物がLCCの搭乗待合室のある建物

まるで、ガレージのよう

経費削減の為かボーディングブリッジは使わない​​​​​​​

激安でも景色はプライスレス

下北半島尻屋崎を横目に北上する

 

ようやく機内に搭乗。すると更にインバウンドの密は増した。感覚的に8割が外人。まるで海外でその国の国内線に乗っているかのような感覚に陥る。

約1時間半のフライト後、無事に新千歳空港に到着。ここもインバウンドが多い。半分くらいがそんなだ。私はJRの
みどりの窓口でこれから乗る特急の指定席を取ろうと列に並んだが、10人近く並んでいる列の7~8割がインバウンドらしき人々。さて、これから乗る予定の釧路行き特急は、なんと指定席は満席。北海道の鉄道はガラガラのイメージがあるが、満席とは驚きだ。イヤな予感がした。しかし、これに乗らないと今日中に釧路へ行けないので自由席に乗るしかない。

新千歳空港から特急への乗り換えのために南千歳駅へ行き、そこで石勝線を走る特急に乗り込もうとすると、もう既に満員。客室内の通路にも入れず、
乗降口前のスペースに立つはめに。そこへ巨大なスーツケースを持ったアジア系インバウンドが、「これでもか!」と次々入ろうとしてくる。ただでさえ狭いこのスペースに、中に人が入っているんじゃないかと思えるような巨大なスーツケースと、私以外の6~7人のインバウンドが押し込まれ、ようやく列車は発車した。

いったい
この人々は何処へ行くのか。私はある予想をした。それは図星だった。超満員の列車は1時間ちょっと走って、山の中の小さな駅に止まった。そこはトマム駅。ここでインバウンドはドッと降りた。この駅の近くに「星野リゾートトマム」というスキー場を併せ持つ巨大リゾート施設がある。経営破綻したリゾート施設を星野リゾートが再建し、今や全国的に有名な場所。多くの観光客がここで降りると予想したがその通りだった。この駅を発車すると立つ人はいなくなり、列車内に平穏な空気が訪れた。

そして、帯広を経て
釧路駅に到着。そこにはインバウンドの姿は殆ど見掛けなかった。翌朝、私は東の果ての町、根室を目指した。釧路~根室の花咲線は国内有数の絶景路線。特急列車は走っておらず、単行(一両編成)の車両がノンビリ走る。乗客は20人程度、日本人以外のアジア系と思われる人は2~3人乗っているだけで、いくら絶景路線と言えどもこんな辺鄙な場所までわざわざ来るインバウンドは極めて少数のようだ。



釧路駅に到着した特急「おおぞら」

一時は超満員となったが、釧路で降りた人は少なかった
 

根室に着くと、すぐに折り返し釧路行きの列車でUターン。そして2時間半後再び釧路駅に立つと、今度はここから網走に向かう釧網線に乗り換える。この路線も非常に有名な絶景路線で、釧路湿原を通り、知床の玄関口に位置する斜里へと繋がり、そしてオホーツクの海岸沿いを走る。この列車にはそこそこインバウンドが多かった。1/3位か。釧路湿原や摩周湖、知床という超有名観光地を通る路線だからだろう。私の向かいに座っていた中国人と思われる夫婦は、釧路湿原の茅野駅に着くと、「タンチョウ」という言葉を吐いていたことからして、この駅の裏手に丹頂鶴がいることを事前に調べてあったようだ。そこまで調べるような人が、この鄙びた絶景路線に乗ってやって来る。

終点の網走に着き、その後
北見に向かうと、そこにはインバウンドの姿は無かった。北見にはこれといった有名な観光地はないからなぁ。翌日、稚内に向かった。この町に向かって、私が好きな荒涼路線であつ宗谷本線が旭川から長々と延びているが、稚内に着いてもインバウンドは殆ど見掛けなかった。最北の町というだけでは、わざわざ片道3時間半も掛けてここまで来ることはないと判断しているのか。

翌日、再び南下して札幌に着くと様々なお国の方々が跋扈していた。これは想定通り。私はそこから函館に向かった。
函館は典型的な観光の町。駅のコンコースにいる人々の半数以上がインバウンド。そんな函館だったが、翌日、私は函館駅から「道南いさりび鉄道」で木古内駅に向かった。殆どの人は新函館北斗駅から新幹線に乗るが、私はローカル線の風情が楽しめるこの路線に乗って新函館北斗駅の一つ手前の木古内駅に向かうと、そこにはインバウンドの姿は影も形も無かった



道南いさりび鉄道では往年の国鉄車両「キハ40」が現役

この車両の風情はインバウンドには理解できないだろう

 

こうやって振り返ると、北海道はインバウンドにとって人気のエリアなんだろうが、どこを目指しているかと言えば、多くの方は有名観光地、それも滞在型リゾートができる場所に向かっていると思われる。私のように真っ白な北の大地を走る列車に乗って、ただただ車窓を眺めているような輩はインバウンドにおいてはかなり稀のよう。今回、千歳から乗った超満員列車には戸惑ったが、それは一時のこと。私が好む超閑散ローカル路線にまでインバウンドが押し寄せられたら、申し訳ないが辟易してしまう。もちろんその方が鉄道会社にとっても地元の業者にとっても、喜ばしいことに違いないが、真っ白な地を眺めながらノンビリ走る醍醐味を邪魔されずに済んだことは幸いだった。