デジタル難民の高齢者を助ける | 直球オヤジの自由奔走生活

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座右の銘は「"行きたい"、"やりたい"、"欲しい"と思った時が"その時"」。55歳で早期退職し、高齢者と呼ばれるまでの今が"その時"。趣味のバイクや自転車は年齢的に待ったなし。エコノミーな生活で趣味を楽しむ。これをどう追い求めるかが、このブログのメインテーマです。

近所の方から、相談を持ち掛けられた。ネットやデジタルの流れの中で、悩める高齢者は多いことだろう。高齢のデジタル難民を解消するには、いったいどうしたらいいのだろう。

近所の
70歳近くと思われる一人住まいのおばさん(”女性”と言わなくては失礼かな?)が私を訪ねてきた。「スマホを代えたのだけど・・・」「テレビが・・・」「dアカウントが・・・」「光通信が・・・」と言うのだが、さっぱり理解できない。ことの発端はスマホを代えた(通信会社を代えたのか、プランを代えたのか、機種変更なのか不明)ことによるもののようだが、そもそもスマホとテレビは無関係なはず。何を言っているのかわからない。とりあえず、その方の自宅へ行って状況を把握しよう。

居間に入るとドンとテレビがあった。その方はドコモが提供する有料コンテンツ「ひかりTV」を以前から契約し観ていた。それが今日、テレビをONすると「
dアカウント」の入力を求められたそう。私は有料コンテンツを契約していないのでよく知らないが、この手のものは初回に一度入力すれば、以後そんな操作は不要のはず。なのに、スマホを代えた日以降このメッセージが出たという。しかし、私は「基本的に、ネットTV視聴にスマホは介在していないから、スマホとは関係無いですよ」と話す。ではどうするか。テレビ画面に表示されているように、テレビにdアカウントを入力すればいいのだが、そのアカウントは何?

おばさんは部屋中を行ったり来たりし、あっちこっちからスマホやネットテレビや光通信などの契約書類をかき集め、IDやパスワード(以下、PW)を記したメモ帳も持ってきて、テーブルの上に差し出す。メモがあるだけマシなのだが、どれが何のIDやPWなのかよくわからないだけでなく、それらのIDやPWの文字列のアルファベットが大文字なのか小文字なのかが、手書きメモの中で判別できないものもある。どれがdアカウントなのか断定できず、あーでもない、こーでもないと書類やメモを何度もひっくり返して何度も入力したら、ようやく繋がった。おばさんには「契約書類やメモは、特定のクリアケースにちゃんと整理して保管しておいた方がいいですよ」と助言しておいた。

こうしてテレビは解決したが、おばさんが「スマホを代えた」というのでそれを見せてもらったら、Wi-Fiと繋がっていない。この家はネットでTVを見たい(韓流ドラマがお目当てらしい)がために、数年前に光通信を導入し、Wi-Fiルーターを介してテレビはネットと繋がっている。しかし、なぜか
スマホがWi-Fiに繋がっていない。「自宅ではスマホをWi-Fiに繋げないと・・・」と助言し、まずはその意味を理解してもらい、スマホとルーターを繋げる。これは簡単な作業。「パスワードは何かなぁ」と聞くと、おばさんは光通信(ドコモ光)の契約書を探し始めた。「いや、いいですよ。ルーター本体のどこかに書いてありますから」と制止する。ルーター本体底部にSSIDのPW(暗号キー)が老眼では判読不明なほど小さな字で書かれており、それをスマホに入力すると、すんなりWi-Fiに繋がった。しかし、せっかく自宅に光通信を引き込んでいるのにスマホでその回線を使っていなかったとは、何とももったいない。こうしてスマホの通信量が増え、高いプランに契約せざるを得なくなっているのかも

おばさんは「
スマホの料金が毎月8000円も掛かるんだよ」などとブツブツ言っている。「私は1000円ですよ」と返すと驚愕していたが、その理由を話しても恐らく理解されないだろうから、軽く流す。まあ、とにかくこうしてテレビとネットが繋がったので、おばさんに大いに感謝され、これにて終了。

と思ったら
翌日、またおばさんがやって来た。「タブレットもあるんだけど・・・」という。先日、スマホを代えた時、タブレットも購入したという。店員の口車に乗せられて買わされたのかどうかは知らないが、スマホはショップで初期設定してくれたのに、同時に購入したタブレットは箱のまま渡されたそうだ。初期設定くらいショップでやってあげればいいのにと思う。おばさんはタブレットを使いたいのだが、セットアップが出来ていないので私の所へやって来たのだ。

初期設定なんて簡単。再び私はおばさんの自宅へと向かう。まずはタブレットをWi-Fiルーターに接続する。これはOK。次に「
Googleアカウント」を入力し、次々出てくる指示に従っていけば完了だ。ところが、このGoogleアカウントがわからない。おばさんは昨日と同じように、あっちこっちから契約書メモ帳を持って来る。そこに様々なIDやPWが書かれており、Googleアカウントとおぼしきものがあったので、それを入力するも「PWが間違っている」と出てしまう。そもそもGoogleアカウントと書かれたメモや契約書が複数あって、それらが微妙に違うのはなぜ?こっちには「.」があるが、こっちの記述には無い。こっちのPWには「0」が一つ多い。いったいどれが正しいアカウントなのか。そうだ。先日スマホを代えたと言っていたから、その時にGoogleアカウントを入力している。その時の契約書に書かれているメモが正解のはずだ。それはどれかとおばさんに聞くと出てきたが、手書きなのでアルファベットの小文字大文字が判然としない。それを何度か試していたらOKとなった。

ここまでくれば、あとは簡単。無事にセットアップ完了。おばさんは傍らで「Googleって、どこの会社?」と聞く。私は「アメリカの会社で・・・」と言うと、おばさんは日本の会社だと思っていたそうだ。話していたら、光通信はドコモしかないと思っている。「ソフトバンクやauでも光はありますよ」と話すと、おばさんは「私は何にも知らないんだねぇ」と、しみじみ独りごちていた。こうしてすったもんだしたが、タブレットも使えるようになった。私は「
アカウントはきちんと整理して、すぐにわかるようにしておいた方がいいですよ」と、昨日と同じようなことを言い残して、おばさんの家を後にした。

デジタルものが苦手な高齢者は多い。今回のケースでは自宅に光通信と繋がったWi-Fiがあるのに、スマホをそれに繋げて使うことを知らず、通常の通信回線(5G)を使っていた。おばさんは「
店で何も教えてくれなかった」と不満を述べるが、客が具体的に質問すればそれに答えてくれるだろうが、超多機能のスマホのことを何から何まで教えること、そして教えられたとしても全てを理解することは不可能だろう。こうしてデジもんが苦手なまま中途半端に使い続け、結果高い通信料金を支払うことになる。

おばさんも
料金のことをブツブツ言っていたが、それでも「まあ、そういうもんだね」と自分自身を納得させながら、満足して使っているのだろう。スマホや光通信、有料ネットテレビなど合わせたらかなりの額になるはず。他人の家計を詮索したくないが、それだけ払っても普通に暮らしていけるのなら、人様のことだから「まっ、いいかぁ」だ。私は決してそんな高額な通信費用は認めたくないので、様々な本や雑誌、ネット記事を参考に検討し、私とカミさんのスマホ契約、自宅のインターネット固定回線(光)、固定電話を合わせ、総額月6000円ほど。

物事に疎い人、疑問を抱かない人が多額の費用を払うというのは、現代のデジタル社会の不条理、不公平な点。これを悔しいと感じるならば、ある程度は自分で勉強が必要だ。本屋や図書館に行けば、いくらでも初心者向けのスマホ指南本がある。これらを読めば最低限のことは習得できる。その程度のことはやった方がいい。そして、必要な時にサッと出せるよう、IDやPWはちゃんと整理して正確に記録しておくこと。これがわからないと、スタートラインにすら着けない。おばさんには何度もそのことを強調したが、果たして実行しただろうか。おばさん、まずはそこからだね。