前回のブログで安いホテルの空調のショボさを書いた。ならば苦情を言って、部屋を代えてもらうのはどうなんだろう。前回のような事態になった時、クレームを言って部屋を代えてもらうべきだと思う方も多かろう。私もそう思う。しかし、実際にはそのような申し立てをしたことはない。これは何故?
私はこれだけ旅をしているし、働いていた時には出張もあったので、今までトータルで1000泊くらいはしているはず。しかし、その中で「部屋を代えてくれ!」と申し立てたことは、たったの一回しかない。その一回のケースはこうだ。
10年近く前、宮崎県都城市の駅前の安宿(ビジホ)でのこと。チェックインを済ませて、客室(和室)に入るとその室内には布団が引かれており、何とそれは使ったまんまだった。つまり、前日に泊まったまま部屋を清掃していなかったのだ。さすがにそんな部屋には泊まれない。すぐに踵を返してフロントに。その結果、ルームチェンジとなった。清掃忘れなのか、昼間から何か良からぬことに使ったのか知らないが、こんな経験は後にも先にもこの一回だけ。
このようなケースはルームチェンジ以前の話なので、これを除けば、ホテル側の不手際に対してクレームを言い立て、部屋を代えてもらった記憶は無い。部屋が寒かったり暑かったりしたケースは、安宿中心に泊っているので何度もあったし、私は物事をズバズバ言うし、思い立ったらすぐに行動に移してしまう性格。なのに、そのような場におよんでもフロントにクレームを申し立てたことはない。なぜなんだろう。その潜在的な意識を紐解いてみたい。
もしそれが起きたのが高級ホテル(私が”高級”というレベルは10000円以上であり、世間的には全然高級ではない)だったら、クレームを言うだろう。しかし、私の旅ではこのクラスの宿には決して泊まらない。私が泊まる宿の殆どはアンダークラスか、良くても中クラス。一泊素泊まり6000円以下、できるだけ5000円以下を目指す。そんなクラスの宿で、「暑い」「寒い」「うるさい」などという、いわゆる感覚的な苦情を言うのはどうにも申し訳ないように感じてしまうのだ。
つまり「まあ、安いのだから我慢してやろう」ということ。「安い宿にそんな多くを求めちゃあいけない」という自制が働いてしまうのだ。エアコンが作動しない。トイレの水が流れないなどというような明らかな不具合ならば当然要求するが、暑いだの寒いだのうるさいだのという感覚的なことは個人差があるし、大抵の場合、不満ながらもちょっと我慢すれば何とかなってしまう。
ホテル側は客に”快適”な環境を提供する義務がある。ただ、その”快適さ”には安い宿と高い宿では差があるはず。高級レストランと大衆居酒屋とでは、期待するサービスも提供するサービスも違うのと同じこと。私はそれを忖度し、「安さという最大のサービスを受けているのだから、他の面では少しは妥協が必要」と、戦う前から矛を収めてしまっているのだ。
実は、私のカミさんは市内のアンダークラスのビジホでベッドメーキングのパートをしている。だからカミさんから安宿の内部事情も聞いている。それによるとルームチェンジはちょこちょこあるとのこと。フロント係ではないので詳しくは知らないと言うが、様々な理由でクレームはあり、結果ルームチェンジになることは決して珍しいことではないらしい。
ベッドメーキングの担当者は、備品(エアコン、テレビ、ウォシュレットなど)の作動チェックはしていないとも言う。あくまでも清掃と整理、リネンの交換、消耗品の補充が仕事。エアコンの作動チェックすらしていないのだから、ちゃんと暖まるか冷えるかなんて、ホテル側は全くつかんでいないと言う。高級ホテルはともかく、安い宿の実態はそんなものかもしれない。カミさんに言わせると「アンタのようなバンバン言う人が、なぜフロントに怒鳴りこまないのか不思議」、「部屋に空きがあれば応じてくれるはず。ルームチェンジしてもらえばいい」とも言われた。
果たして私は自制し過ぎなのだろうか。それとも、安いのだから暑いだの寒いだのというレベルのことは、許容すべきなんだろうか。そんな深く考えずに、今後こういう場合、フロントに申し出てみて相手の出方を探ってみようかと思う。クレーマーだと思われないように注意を払いながらね。
テーマ:エコノミーライフ
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