☀太陽の東の城(挿絵追加版)
AI画像生成ソフト「メイジ🧙」で挿絵を作成しました。
昼と夜の狭間、黄昏(たそがれ)の国に農夫の一家が住んでいました。
生活は豊かではありませんでしたが子供には恵まれ、
特に末娘の美しさは格別でした。
ある晴れた静かな夜、家の戸を叩く者が居ます。
それはまるで大きな白いクマの様でした。
大きく開いた口の中には人の顔の様な物が見えます。
その者は礼儀正しく言いました。
「こんばんは、私は夜の世界に住むマックスベアと言います。
実はお宅の末の娘さんの事が大変気に入り、
是非、娘さんを頂けないかとお願いがあって参りました。
もし認めて頂けるなら家族全員に豊かな生活を保障します。」

娘は考えた末、家族の為と思いベアの所へ行く決心をしました。
次の日、ベアは馬車で迎えに来ました。
その馬車は生まれ故郷の黄昏の国を後にして、
滑る様に地面を走り夜の世界へ向かいます。
夜の世界は永遠に夜が続き、雪と氷河の寒い世界です。
やがて馬車は夜の世界の中心、太陽から1番遠い山に到着しました。
山に囲まれた窪地には光り輝く宮殿が建っていて
近くの火山の溶岩の光や松明で赤く照らされています。
その立派な宮殿の周りだけは暖かいので植物が茂っていました。

ベアは宮殿の中に馬車を入れると娘を中に案内しました。
「ようこそ、美しい花嫁さん。」
建物の中は美しく金銀で飾ってある様でした。
「なんて美しい所なの!夢のようです!」
「何か用があれば、この鈴を鳴らしてくれ。」とベアは娘に鈴を渡しました。
娘は早速その鈴を鳴らしてみました。「お腹が空いたわ。」
すると金と銀で造られた人形が食べ物が乗ったワゴンを運んできました。
食事を終えて「眠いわ」と言うと今度はベッドを持ってきました。
娘が眠ると金と銀の人形はベッドをそのまま寝室へと運びました。
娘は真っ暗な寝室で目を覚ましました。
隣のベッドにはベアが寝ています。
夜になると抜け殻を脱いで人間に戻るのです。
娘はランプに火を点けてベアの顔へ近付けました。
灯りで照らされたその顔はとても美しかったのです。
娘はうっとりとして夫の顔に口づけをしました。
すると窓の近くで鳥の羽ばたく音と騒々しい鳴き声がしました。
そしてその鳥はベアの顔を2度見すると空へと去って行ったのです。
ベアはその物音に目を覚まし叫びました。
「なんと言う事だ!私の正体がばれてしまった!」
ベアは頭を抱えて泣き始めました。

娘が驚いておろおろするとベアは自分について語りました。
「私は昼の世界、太陽の東の城から逃げてきた。
女王の娘の許嫁なのだ。継母の女王は魔女だ。
偵察の鳥を世界中に放ち監視しているのだ。
そのうちの1羽に見つかってしまった。
あの鳥は魔女に私がどこに居るかしゃべるだろう。
もう此処には居られないし、君にも迷惑が掛かる。
私は観念して太陽の東の城に戻る事にする。
愛しい花嫁よ、短い間だったが幸せだった。」
と娘を抱きしめました。
「せめて私を一緒にお連れください」と娘も泣きながら言いました。
「それはできない。おそらく私は自由を奪われ誰にも会えないだろう
そして君にもどんな仕打ちをするか分からない。
残念だが、また君の家族の居る黄昏の国へ戻ってくれ。」
ベアと金と銀の人形は馬車に乗ると娘を彼女の家で降ろし、
自分達は昼の世界へと馬車を走らせました。
娘は故郷の黄昏の国に戻ってから寂しくて仕方がありません。
夫を本当に愛してると実感した途端の別れでした。
娘は家を出て夫の消息を探す事にしました。

太陽の方角、昼の世界に向けてひたすら歩きます。
途中、森の中で老婆の住む小屋を見つけ泊めてもらいました。
その老婆は魔女でした。しかし良い魔女でした。
「この水晶玉をあげよう。この赤く光ってる所が太陽に最も近い東の城、
逆の白い点が太陽から1番遠い夜の世界の果ての西の城だ。
今は黄昏の黄道からちょっと東に寄った辺り、星で示してる地点が現在地だ。」
「ありがとうございます。この恩は一生忘れません。」
娘は夫にもらった銀食器を魔女に譲り、代わりに馬車をもらいました。
それからも長い旅が続きました。
気が付くと昼は長くなりいつの間にか、夜が来なくなりました。
昼の世界に入ったのです。
森の木は巨大に、陽射しは強く、雲は嵐を連れて来ます。
道も険しくなり馬車では速度が出せず移動もはかどりません。
見上げる様な巨木の樹海を抜けると
今度は植生が変わって低い木ばかりになります。
視界が開けたその景色は沢山の風車が並ぶ山と海の世界でした。
ここは1年中強風が吹く世界。
風の国に来たのです。

ここへ来て娘は大きな勘違いをしてた事に気が付きます。
大陸の突端のこの風の国より先に陸地は無く、広い海が続いていたのです。
海は果てしなく続き、深いのでとても泳いで渡る事はできません。
絶望のあまり断崖で佇んでいると近くの建物から人が出てきました。
「こんな所でどうしたのです?危険ですよ、風で飛ばされます。」
建物に案内されて娘は事情を話しました。
「太陽の東の城は大海の中心にあります。海の中の孤島に建つ要塞なのです。
その周りは嵐の様な風と波で丈夫な大型船で行かないと辿り着く事はできません。
幸い私は港に船を持っています。
安全は保障できませんが太陽の東の城まで送り届けてあげましょう。」
娘は宝石の付いた金の髪飾りを船賃として彼に与え船に乗せてもらう事にしました。
船は港から出ると強風に後押しされて物凄いスピードで進んでいきます。
水平線まで一面海の景色、空の黒い雲だけが過ぎて行きます。
しばらく進むと風が止んで雲一つない晴天の空に変わりました。
後ろを振り返ると今まで居た海域には雲の壁ができています。
「太陽の嵐の目を抜けた。間も無く東極海の中心に着くだろう。」と船乗り。
やがて水平線に切り立った岸壁の島が見えて来ます。
そしてその陸地はケシの花畑の様に見えました。
近付いてみるとそれはケシの花では無く、
1つ1つが傘の様な形をした巨大な塔でした。

「あれが太陽の東の城だ。大きな船ではこれ以上近付くと発見される。
これからは小舟で行くと良い。成功を祈る。」
船乗りは小舟に乗る娘にいつまでも手を振って元気付けました。
小舟が岸壁に接岸した途端、衛兵が集まり娘は呆気なく捕まってしまいました。
そして娘は衛兵たちに女王の前に連れて行かれました。
「女王様、王子に会わせてください?会わせてもらえたらこの水晶玉を上げます。」
「良い物を持ってるでは無いか?分かった、会わせてやろう。それはもう私の物だ。」
女王は水晶玉を受け取り、娘は王子が捉われている牢屋に連れて行かれました。
しかし王子は薬を打たれていて意識がありません。
「あなた!私はここまで会いに来ました!目を覚ましてください!」
娘は女王を恨みました。これでは詐欺の様な物です。
次の日には女王の娘とベアの婚礼の儀式が始まりました。
ベアは薬で意識がもうろうとして自分がどんな事になっているか分かって無い様子でした。
民衆が見守る中、儀式が終わり、女王とベアと王女が船に乗り込みました。
豪華な船で島の周りを一周してお披露目をするのです。
娘は女王達に夫を奪われ涙が止まりませんでした。
「誰かお願いです。主人を助け出してください。」
船は沖に出てゆっくりと島の周りを周りはじめました。
しかし半周ほどした所で船の動きは止まり沈み始めました。
そのまま船は沈み、誰も浮いて来ません。
娘はその光景に耐えられず気を失ってしまいました。

「愛しい人よ、起きてくれ!もう全て終わったのだ。」と声がして娘は目覚めました。
そして目の前にはあの抜け殻を着たベアと金と銀の人形の姿。
「ロボロイドを連れて来て助かった。彼が船底に穴を開け、宇宙服を着せてくれたのだ。」
「助けてくれてありがとう、人形さん。」娘はその金属の冷たい顔にキスをしました。
そしてもう1度、たっぷり時間を掛けてベアに濃厚なキスをしました。
「私は王位継承の儀式を終えた、今ではこの国の正当な君主だ。
こと座438b惑星レイラ植民地の独裁的な王朝の時代は終わった。
私は君主としての最初で最後の王令を発せねばならぬ。
この世界は闇に閉ざされ、この国は水没するのだ。ここに住む者は全員退去しなければならない。」
「まさか、そんな唐突な事がありますか?今までにそんな事は起きた事が無いと思います。」

「この惑星は太陽:こと座438に対して常に同じ面を向け公転している。
自転周期と公転周期が一致し惑星に表と裏ができているのだ。
永遠に続く晴天により太陽光発電所の稼働率は100%だ。
しかし、この惑星の内側の惑星438aの公転周期が一致する時期が来た。
惑星438aにより1年間の日食が起こり、この惑星全体に闇が訪れる。
太陽の恵みである光と暖かさは失われ、昼の世界にも夜と冬が来る。
そして太陽と惑星438aの起こす複合的な潮汐力で超満潮が起こりこの島は水没するのだ。
この島では誰も生きてはいけない。早く全員脱出しなければならない。」
「私の故郷、黄昏の国は大丈夫でしょうか?」

「昼半球と夜半球の境は東極と西極の軸が少しずれているので昼と夜が来るのだが
惑星438aによる日食が起こったら昼は来ない。最低1年間は農作物も諦めた方が良い。
水没の件は安心だ、むしろ黄昏の地帯では海面が下がるだろう。」
「私はどうしたら良いでしょう?」
「太陽光エネルギー基地に頼るこの国は1年後、建て直さなければならない。
その間、故郷の家族を連れて西極の宮殿の新居に住もうではないか。
強力な潮汐力の影響でこの惑星は卵型に変形し、ストレスが火山活動を促進させている。
夜の世界の私の宮殿はそのエネルギーを利用した地熱発電所の施設なのだ。」
ベア新国王は民衆に1年後の再会を約束し、国民全員に避難する様に勧告しました。
そして愛しい人と再び惑星を半周する蜜月の旅へと立ちました。
完

※こと座Kepler-438bは、赤色矮星ケプラー438を周回する太陽系外惑星。
地球からの距離は470光年。半径は地球の1.12倍。2015年に発見。
主星のハビタブルゾーン(水が液体で存在する領域)内に存在すると考えられている。
公転周期は35.2日。主星に接近しているので公転周期=自転周期と考えられます。
地球の月、火星の衛星、木星の4大衛星、土星の衛星タイタン、冥王星の衛星カロンなども
常に主星に表を向ける公転周期=自転周期になっています。
惑星の気象、環境は観測された物ではなく、自分の想像です。
昼と夜の狭間、黄昏(たそがれ)の国に農夫の一家が住んでいました。
生活は豊かではありませんでしたが子供には恵まれ、
特に末娘の美しさは格別でした。
ある晴れた静かな夜、家の戸を叩く者が居ます。
それはまるで大きな白いクマの様でした。
大きく開いた口の中には人の顔の様な物が見えます。
その者は礼儀正しく言いました。
「こんばんは、私は夜の世界に住むマックスベアと言います。
実はお宅の末の娘さんの事が大変気に入り、
是非、娘さんを頂けないかとお願いがあって参りました。
もし認めて頂けるなら家族全員に豊かな生活を保障します。」

娘は考えた末、家族の為と思いベアの所へ行く決心をしました。
次の日、ベアは馬車で迎えに来ました。
その馬車は生まれ故郷の黄昏の国を後にして、
滑る様に地面を走り夜の世界へ向かいます。
夜の世界は永遠に夜が続き、雪と氷河の寒い世界です。
やがて馬車は夜の世界の中心、太陽から1番遠い山に到着しました。
山に囲まれた窪地には光り輝く宮殿が建っていて
近くの火山の溶岩の光や松明で赤く照らされています。
その立派な宮殿の周りだけは暖かいので植物が茂っていました。

ベアは宮殿の中に馬車を入れると娘を中に案内しました。
「ようこそ、美しい花嫁さん。」
建物の中は美しく金銀で飾ってある様でした。
「なんて美しい所なの!夢のようです!」
「何か用があれば、この鈴を鳴らしてくれ。」とベアは娘に鈴を渡しました。
娘は早速その鈴を鳴らしてみました。「お腹が空いたわ。」
すると金と銀で造られた人形が食べ物が乗ったワゴンを運んできました。
食事を終えて「眠いわ」と言うと今度はベッドを持ってきました。
娘が眠ると金と銀の人形はベッドをそのまま寝室へと運びました。
娘は真っ暗な寝室で目を覚ましました。
隣のベッドにはベアが寝ています。
夜になると抜け殻を脱いで人間に戻るのです。
娘はランプに火を点けてベアの顔へ近付けました。
灯りで照らされたその顔はとても美しかったのです。
娘はうっとりとして夫の顔に口づけをしました。
すると窓の近くで鳥の羽ばたく音と騒々しい鳴き声がしました。
そしてその鳥はベアの顔を2度見すると空へと去って行ったのです。
ベアはその物音に目を覚まし叫びました。
「なんと言う事だ!私の正体がばれてしまった!」
ベアは頭を抱えて泣き始めました。

娘が驚いておろおろするとベアは自分について語りました。
「私は昼の世界、太陽の東の城から逃げてきた。
女王の娘の許嫁なのだ。継母の女王は魔女だ。
偵察の鳥を世界中に放ち監視しているのだ。
そのうちの1羽に見つかってしまった。
あの鳥は魔女に私がどこに居るかしゃべるだろう。
もう此処には居られないし、君にも迷惑が掛かる。
私は観念して太陽の東の城に戻る事にする。
愛しい花嫁よ、短い間だったが幸せだった。」
と娘を抱きしめました。
「せめて私を一緒にお連れください」と娘も泣きながら言いました。
「それはできない。おそらく私は自由を奪われ誰にも会えないだろう
そして君にもどんな仕打ちをするか分からない。
残念だが、また君の家族の居る黄昏の国へ戻ってくれ。」
ベアと金と銀の人形は馬車に乗ると娘を彼女の家で降ろし、
自分達は昼の世界へと馬車を走らせました。
娘は故郷の黄昏の国に戻ってから寂しくて仕方がありません。
夫を本当に愛してると実感した途端の別れでした。
娘は家を出て夫の消息を探す事にしました。

太陽の方角、昼の世界に向けてひたすら歩きます。
途中、森の中で老婆の住む小屋を見つけ泊めてもらいました。
その老婆は魔女でした。しかし良い魔女でした。
「この水晶玉をあげよう。この赤く光ってる所が太陽に最も近い東の城、
逆の白い点が太陽から1番遠い夜の世界の果ての西の城だ。
今は黄昏の黄道からちょっと東に寄った辺り、星で示してる地点が現在地だ。」
「ありがとうございます。この恩は一生忘れません。」
娘は夫にもらった銀食器を魔女に譲り、代わりに馬車をもらいました。
それからも長い旅が続きました。
気が付くと昼は長くなりいつの間にか、夜が来なくなりました。
昼の世界に入ったのです。
森の木は巨大に、陽射しは強く、雲は嵐を連れて来ます。
道も険しくなり馬車では速度が出せず移動もはかどりません。
見上げる様な巨木の樹海を抜けると
今度は植生が変わって低い木ばかりになります。
視界が開けたその景色は沢山の風車が並ぶ山と海の世界でした。
ここは1年中強風が吹く世界。
風の国に来たのです。

ここへ来て娘は大きな勘違いをしてた事に気が付きます。
大陸の突端のこの風の国より先に陸地は無く、広い海が続いていたのです。
海は果てしなく続き、深いのでとても泳いで渡る事はできません。
絶望のあまり断崖で佇んでいると近くの建物から人が出てきました。
「こんな所でどうしたのです?危険ですよ、風で飛ばされます。」
建物に案内されて娘は事情を話しました。
「太陽の東の城は大海の中心にあります。海の中の孤島に建つ要塞なのです。
その周りは嵐の様な風と波で丈夫な大型船で行かないと辿り着く事はできません。
幸い私は港に船を持っています。
安全は保障できませんが太陽の東の城まで送り届けてあげましょう。」
娘は宝石の付いた金の髪飾りを船賃として彼に与え船に乗せてもらう事にしました。
船は港から出ると強風に後押しされて物凄いスピードで進んでいきます。
水平線まで一面海の景色、空の黒い雲だけが過ぎて行きます。
しばらく進むと風が止んで雲一つない晴天の空に変わりました。
後ろを振り返ると今まで居た海域には雲の壁ができています。
「太陽の嵐の目を抜けた。間も無く東極海の中心に着くだろう。」と船乗り。
やがて水平線に切り立った岸壁の島が見えて来ます。
そしてその陸地はケシの花畑の様に見えました。
近付いてみるとそれはケシの花では無く、
1つ1つが傘の様な形をした巨大な塔でした。

「あれが太陽の東の城だ。大きな船ではこれ以上近付くと発見される。
これからは小舟で行くと良い。成功を祈る。」
船乗りは小舟に乗る娘にいつまでも手を振って元気付けました。
小舟が岸壁に接岸した途端、衛兵が集まり娘は呆気なく捕まってしまいました。
そして娘は衛兵たちに女王の前に連れて行かれました。
「女王様、王子に会わせてください?会わせてもらえたらこの水晶玉を上げます。」
「良い物を持ってるでは無いか?分かった、会わせてやろう。それはもう私の物だ。」
女王は水晶玉を受け取り、娘は王子が捉われている牢屋に連れて行かれました。
しかし王子は薬を打たれていて意識がありません。
「あなた!私はここまで会いに来ました!目を覚ましてください!」
娘は女王を恨みました。これでは詐欺の様な物です。
次の日には女王の娘とベアの婚礼の儀式が始まりました。
ベアは薬で意識がもうろうとして自分がどんな事になっているか分かって無い様子でした。
民衆が見守る中、儀式が終わり、女王とベアと王女が船に乗り込みました。
豪華な船で島の周りを一周してお披露目をするのです。
娘は女王達に夫を奪われ涙が止まりませんでした。
「誰かお願いです。主人を助け出してください。」
船は沖に出てゆっくりと島の周りを周りはじめました。
しかし半周ほどした所で船の動きは止まり沈み始めました。
そのまま船は沈み、誰も浮いて来ません。
娘はその光景に耐えられず気を失ってしまいました。

「愛しい人よ、起きてくれ!もう全て終わったのだ。」と声がして娘は目覚めました。
そして目の前にはあの抜け殻を着たベアと金と銀の人形の姿。
「ロボロイドを連れて来て助かった。彼が船底に穴を開け、宇宙服を着せてくれたのだ。」
「助けてくれてありがとう、人形さん。」娘はその金属の冷たい顔にキスをしました。
そしてもう1度、たっぷり時間を掛けてベアに濃厚なキスをしました。
「私は王位継承の儀式を終えた、今ではこの国の正当な君主だ。
こと座438b惑星レイラ植民地の独裁的な王朝の時代は終わった。
私は君主としての最初で最後の王令を発せねばならぬ。
この世界は闇に閉ざされ、この国は水没するのだ。ここに住む者は全員退去しなければならない。」
「まさか、そんな唐突な事がありますか?今までにそんな事は起きた事が無いと思います。」

「この惑星は太陽:こと座438に対して常に同じ面を向け公転している。
自転周期と公転周期が一致し惑星に表と裏ができているのだ。
永遠に続く晴天により太陽光発電所の稼働率は100%だ。
しかし、この惑星の内側の惑星438aの公転周期が一致する時期が来た。
惑星438aにより1年間の日食が起こり、この惑星全体に闇が訪れる。
太陽の恵みである光と暖かさは失われ、昼の世界にも夜と冬が来る。
そして太陽と惑星438aの起こす複合的な潮汐力で超満潮が起こりこの島は水没するのだ。
この島では誰も生きてはいけない。早く全員脱出しなければならない。」
「私の故郷、黄昏の国は大丈夫でしょうか?」

「昼半球と夜半球の境は東極と西極の軸が少しずれているので昼と夜が来るのだが
惑星438aによる日食が起こったら昼は来ない。最低1年間は農作物も諦めた方が良い。
水没の件は安心だ、むしろ黄昏の地帯では海面が下がるだろう。」
「私はどうしたら良いでしょう?」
「太陽光エネルギー基地に頼るこの国は1年後、建て直さなければならない。
その間、故郷の家族を連れて西極の宮殿の新居に住もうではないか。
強力な潮汐力の影響でこの惑星は卵型に変形し、ストレスが火山活動を促進させている。
夜の世界の私の宮殿はそのエネルギーを利用した地熱発電所の施設なのだ。」
ベア新国王は民衆に1年後の再会を約束し、国民全員に避難する様に勧告しました。
そして愛しい人と再び惑星を半周する蜜月の旅へと立ちました。
完

※こと座Kepler-438bは、赤色矮星ケプラー438を周回する太陽系外惑星。
地球からの距離は470光年。半径は地球の1.12倍。2015年に発見。
主星のハビタブルゾーン(水が液体で存在する領域)内に存在すると考えられている。
公転周期は35.2日。主星に接近しているので公転周期=自転周期と考えられます。
地球の月、火星の衛星、木星の4大衛星、土星の衛星タイタン、冥王星の衛星カロンなども
常に主星に表を向ける公転周期=自転周期になっています。
惑星の気象、環境は観測された物ではなく、自分の想像です。
