beach

エルサルバドルのトリビアをブログに書こうと思ったのですが、

もうちょっと公共財に貢献しようと思い直し、

代わりにwikiに加筆しておきました。


ここでは、そこに書けなかった個人的感想を・・・


エルサルバドルは、1980年からの国を二分する内戦で痛手を負い、

高校生の7割が「移民として米国へ渡ること」を将来の夢と語る、

悲しいほど希望のない国です。


この国の歴史に興味がわいて借りたドキュメンタリー映画は、

80年当時、軍部と政府の抑圧に立ち上がるしかなかった民衆の姿、

戦後もいっこうに回復しない経済に絶望し、アメリカン・ドリームに賭けて

不法入国と強制送還を繰り返す働き盛りの若者たちの姿を、

時を追って淡々と描いていました。


政治をみれば、大統領の横領、警察の収賄が常態化し、

自国の貨幣政策を放棄して米ドルをそのまま通貨にしています。


産業をみれば、主力のコーヒー農業は近隣の中南米諸国にかなわず、

カリブ海側にビーチを持たないので、

コスタリカ等と比べて観光もいまいちふるいません。


英語の話せる若者にとっては米企業のコールセンターが人気職業で、

銀行や役所には縁故がなければ勤められず、

医学部を出ても勤務先病院がない状況。

まして起業しようにも国内に市場がありません。


一方で、電気、ガソリン価格は高水準で庶民の生活を圧迫します。


安くてコンディションの悪い車ほど税金が安いので、

多くの国民が米国の安全基準をクリアしなかった車を走らせており、

排気ガスは真っ黒、おかげで道路はひどい大気汚染です。


ブリキ屋根+土床の集落が続く首都サンサルバドルで、

一部の特権階級と、米国出稼ぎ組から送金のある家族だけが、

ヒップな巨大ショッピング・モールに夜な夜な繰り出し、

米資本のウェンディーズ、ピザハットといったごちそうにも手が届き、

比較的豊かに暮らしています。


すべてを投げ出して母国を抜け出したいと思っても、

米国への移住は昔ほど容易でなくなり、

貨物列車やタンカーに隠れて不法入国を目指したまま消息不明となる人、

自分は不法入国したものの母国の家族にはビザの許可がおりず

生き別れになる家族もあとをたちません。


頑張っても、天井が見えている。

自国の未来を信じられないというのはほんとうに辛いことだと、思い知りました。


それでも、こどもたちの瞳はきらきら輝いていましたが。



volcano

tropical

今学期わたしは、演説のスキルを磨く授業を履修しています。

去年とても面白いと思ったメディア・トレーニングの延長です。


第2回の宿題で、

「the Last Lecture」をYoutubeで検索してじっくり見てきてください

と言われました。


そんな一般的な名前で対象が絞れるかしらと思いながら帰宅して

さっそく検索してみると

なんとthe lastと入力しただけで、候補のトップにそれは現れました。


私が見た時点で700万ビューを超えていました。

そして、私はそこに少なくとも10回分を追加しました。


カーネギーメロン大学でアニメを含むエンターテイメント・テクノロジーを教えた

ランディー・パウシュ(Randy Pausch)教授が、

末期ガンで長くて半年の命と宣告された翌月に

「子どもの頃の夢を追いかけろ」と題して満員の講堂で行った最後の講義。


ひとによって心に残るシーンは違うだろうと思うのですが、

彼が何度も繰り返したメッセージだけ、ここに。


*****

人生の壁は、僕らを門前払いするためにあるんじゃない。どれだけ本気か証明するチャンスを与えてくれるものなんだ。壁が止めるのは本気になりきれない「他の人たち」だ。


ダメだなぁとあきれたくなる人がいたら、まだ待ち足りないのだと思え。誰もがいいところを持っていて、時間をかければ誰でも必ず驚くようなことをして見せてくれるから。

*****


彼は今年7月に、家族に囲まれてこの世を去りました。

ほかにもいろいろとあって、今週は死についてぼんやり考えていました。

ウォール街発の衝撃と混乱は、私たちの今です。


夏に投資銀行でまる12週、休日返上で働いて

10人に1人しかもらえない内定をもぎとった友人までもが

就職活動再開だ・・・といって

授業のない金曜にスーツ姿でキャンパスに出てきています。


投資銀行から高給を取ったら何が残ると思う?

投資銀行なんて職はこの世から消えてなくなったみたいな感じがするよ。


伝統的に金融に強くバンカーの多いWhartonにとって非常につらい局面です。


金融のプロがリスク管理を誤り続けたこと、

結果として起きた危機に誰も処方箋を書けないこと、

あれだけ自由市場を礼賛したウォール街が

破綻しそうになると一斉に政府のほうを振り向くこと、

ぜんぶ情けないし恥ずかしい。


今やアメリカがいちばん途上国っぽいんだから

アメリカこそIMFの支援を受けるべきだ。

アジア危機も今から見ると小さく見えるよね。


日本が外資をハゲタカと呼んで買収を恐れたのと同様に

米国ではいま中国ハゲタカ論が盛んです。


ウォール街の誇りを胸に

おそろしいほど自信たっぷりで羽振りのよかった同級生が

心理的ダメージを受けている様子なのが、実はいちばん心配です。


fnce

写真は、リーマン破綻の翌日にJeremy Siegel、Franklin Allenといった

Whartonのファイナンス教授陣が大講堂で開いた

「昨今の金融情勢を読み解く」討論会の記事 です。


連邦政府の超低金利政策を受けて投資家がみな金利にハングリーになりすぎた。77年間不動産価格が右肩上がりだった米国では、投資銀行も格付け機関も、日本のバブル崩壊が自国でも起こるとは思えなかった。投資銀行はしばらく商業銀行の傘の下でおとなしく回復を待つことになるだろう。IT、不動産に続いて今後はクレジットカードとオートローンにバブルが発生するかもしれない。などなど、興味深い発言が続いていました。



政治経済学の授業でも、リーマン破綻以降、

金融危機に関する特別講義が続いています。

教授は、日本の野村と三菱UFJがそれぞれリーマン・ブラザーズとモルガン・スタンレーの救世主となったことに「とうとうそんな時代になりましたね」と感慨深げにコメントしたあと、現在政治の中枢で行われている金融規制強化等を巡る熾烈な駆け引きに言及し、「ロビイングと賄賂は本質的に何が違うのかというのは経済学的に面白い問題ですね。腐敗しているのはアフリカじゃなくてアメリカかな。」と、にやり。



今回の金融危機の犯人さがしで名前が出てくるのは、
まずITバブル崩壊と911の影響を不動産バブルでカバーする戦略の仕掛け人とされるグリーンスパンFRB前議長。制御不能になったのは「みんなのせい」と我が校のファイナンスの権威は言っていましたが。
そしてもう一人は、上院の銀行・住宅・都市問題委員会委員長時代に証券・投資業界から1億円以上の選挙資金を受け取り、その後スイスUBS銀行から巨額の報酬を得てロビイストとして金融規制緩和を働きかけ、今やマケイン陣営の経済政策顧問におさまっているフィル・グラム元上院議員です。



でも、米国のメディアは一斉に悲観論を流すだけではありません。

米国にはイノベーションがあるじゃないか。

今ある価値が壊れたなら新しい価値を生み出せばいい。


そういう記事を読んで、やはり次はクリーンテックVCか・・などとつぶやきながら

私たちは今日もキャンパスへ向かうのです。

とっても今さらですが、DS版ドラクエIVをやっと攻略しました。

VではなくてIVです・・・時差で遅れてるんです。


昔ファミコンでやったときには気づかなかったけれど、

いろいろ学ばせる物語だったんだなぁと思いました。


シンシアがモシャスを唱える瞬間、つらすぎてもだえていたら、

エルサルバドルで同室だったCarolineとSonalに、

あんた28にもなって現実と区別つかないわけ。

とあきれられました。 



今度はこちらでチェスのDSソフトを購入しまして、これから特訓です。


が、同じマンションにワイン漫画「神の雫」を貸してくださる方がいて、

授業もいきなりトップスピードで始まって宿題にまみれているし、

当分はお蔵入りかな。


clinic

先週まで、中米エルサルバドルのちいさな村で、

医療ボランティアをしてきました。


ウォートン校国際医療ボランティア・プロジェクト(WHIVP)は

医療経営学専攻のMBA生が学校の斡旋で途上国に赴き、

病院経営支援などを行う伝統ある企画です。


Sonal、Carolineと私の3人組は今回、

ある国際医療ボランティア団体が立ち上げたばかりの現地クリニックに赴き、

財務管理などの経営指導と、

マイクロ・インシュランス・プロジェクトの導入支援を行いました。


クリニックは首都から40分ほど離れた村にあり、

村の子どもの70%以上が寄生虫を保有していて、

調べると村の共同井戸が汚染されており、

各家庭の水溜場ではデング熱を運ぶ蚊が大量繁殖していました。

また、半数以上が栄養失調と診断されていました。


そんな村で、


医療の基礎知識を教育する

→子どもの健康状態は改善できるのだと気づいてもらう

→適切な予防策を講じればポイントがもらえ、たまると高度医療を受けたり

 医薬品を買ったりできるというインセンティブを用意する

→浄化した水を飲ませ、栄養を与え、家を清潔に保つなど、

 母親が実際に行動を変える

→子どもの健康が改善する


というサイクルを作り出し、

この予防的措置をコミュニティ全体に広げて

長期的には医療費削減につなげることを目指すのが、

今回のマイクロ・インシュランス・プロジェクトです。


医療保険のコンセプトをお金を使わずに実現しようという意欲的な挑戦でした。


お母さんたちは、精一杯の生活のなかで、プログラムに熱心に参加し、

子どもの健康管理に時間を割き、ポイントを稼いで

生活水準をなんとか改善しようと頑張ってくれます。


クリニック側も、常駐のスタッフ達が村じゅうをまわり、

家をひとつひとつ訪問し、お母さんたちと会話して

足で稼いで現状をこまかく把握しており、

先進国の水準を押しつけるのではなく

ボトムアップで丁寧に対策と手順を組み立てていました。


私たちは主に、この活動を持続的な仕組みにするにはどうしたらいいか、

成果の評価をどうすべきかという点でコンサルを行ったのですが、

地元の事情について何を質問してもメモすら見ずにすぐに答えが返ってくる、

彼らの情熱と日頃の努力に心打たれました。


cow

一方で、ボランティアと地元コミュニティの難しい関係も考えさせられました。


例えば、新しいボランティアが来たと聞くと

村の女性たちが手作りのミサンガを1個1ドルで売りに来ます。

本来ならば彼女たちはミサンガを置いてくれる店を探し、

流通経路を開拓しなければならないところですが、

クリニックを定期的に訪れる気前のいい米国人ボランティア集団が

安定的な資金源と化し、それ以上の努力をしなくなってしまっているのです。


また、米国へのビザ取得を目指すひとが

米大使館を連日長蛇の列で取り囲むこの国で、

米国人ボランティアのフィアンセとしての渡米は羨望の的で、

私が会った長期ボランティアはなんと全員が現地人と付き合って、

しかも1年半以内にふたりで渡米しようとビザ取得に走り回っていました。


身の安全ということに関しても、

クリニックのある村はゲリラによる残忍な殺人事件が続いており、

プロジェクト・マネージャーのMeredithも

「外国人を目の敵にされたら、真っ先に狙われると思う。

いくら馴染んで信頼を得たつもりでも

私はエルサルバドル人にはなれないから。

でも死ぬのは怖いけど、いま撤退させられるのはもっと怖い。」

と真剣なまなざしで言っていました。



今まさに困っている目の前のひとりに何もしてあげられない役人と比べて、

日々ひとつひとつのいのちと向き合う彼女はまぶしい存在でした。


クリニックで我先にひざに座ろうとよじ登ってきた

子どもたちの顔を思い浮かべながら、

人ごとでなく生きていきたいと思いました。