デイサービスの連絡帳は、スガ婆のその日の行動を書いてくれるので、できるだけ目を通している。

その日は、例のスタップ細胞の小保方春子が記者会見を開き、その放映がデイサービスのテレビでも流されていた。

そして、スガ婆はそれを見て「私も泣いてしまいそう」などと言った、と連絡帳に書かれていた。

それを書く必要が一体どこにあるのか、疑問に思うが・・・

おそらくスタッフはこう思ったのだろう。

「スガ子さんて何てやさしいんでしょう。私は感動してしまいました。だって認知症なのに、テレビを観て泣くんですよ。そんなの素敵すぎます」

あまい。あますぎる。

ということで、真相を解説するとしよう。

ほとんど芸能ニュース化した放送に、スガ婆はあまり興味を示さなかったが、やがて小保方春子が涙を流すと、体内スイッチが入った。

「かわいそう、かわいそうばい」

そう言うと、目をこすり悲しそうな顔をする。

内容を理解しなくとも泣くことができるスガ婆。

正確には泣いているというより、泣いている風にしているのである。もちろん涙などない。

「なんで泣くの?」とスタッフがきくと、

「この人が泣いているから」とスガ婆。

認知症とはこういうものらしい。いや、これが認知症の真実だ!(って何それ)

どんな理由があるにせよ、怒った相手は「怖い人」であり、泣いている人は「かわいそうな人」と識別される。

だから自分も泣くのが当然といった理由が成り立つ。(はい?)

泣く理由は一切関係ない。相手の気持ちなど、どうでもよく、何の価値もない。尿をため込んだ尿パッドのほうがまだましだ。

その証拠に、泣かない小保方春子にはまるで興味がなくなり、自分の紙パンツをまさぐりはじめる。

「バッ、なんきゃ、こりゃ?」

紙パンツの濡れたパッドに異様な反応をみせるスガ婆。

恐るべし認知症。自己中心主義の極み。

スタップ細胞で、なんとかしてください。
(ハイハイ)






早朝に突然、ドンという音がして目が覚める。

当然、スガ婆が何かをしでかした音である。

恐る恐るスガ婆の部屋に近寄る。

ふすまを開けると、掛布団を表裏ひっくり返し、

布団に対して直角に寝ている。

そして、静まり返る部屋に、あの嫌な臭いが

まぎれもない小便の臭い。

電灯をつけると、手すりにパジャマと紙オムツがぶら下がり、尿パッドが部屋の隅に無残に投げ捨てられている。


ということは…


ババアの下半身はすっぽんぽん。(オエ)

今月、すでに2回の寝小便で布団が濡れた。

ビニールシートを敷いているが、どういうわけかシートの下に体をもぐり込ませているスガ婆。

小便防止用シートは掛布団と化し、役立たずとなっている。

どうやらスガ婆は、尿パッドに尿が溜まり過ぎて、気持ち悪いからパンツを脱いでしまったようだ。

下半身すっぽんぽんとなったスガ婆は、そのまま眠ると、夢の中でジャジャジャと放尿したのである。

すると、ギャーとばかりに飛び起きて、トイレに向かう。

だが時すでに遅く、途中で尿がただ漏れ、床を濡らし、その尿の跡が点々と続いている。

トイレに着いたとき、すでに尿は出つくしている。

「はっ、なんしに来たんやろ?」と思うが、何も思い浮かばず、そのまま引き返して、再び寝るスガ婆……想像に難くないババアの行動。

よく見ると、濡れた部分を避けるように、体を丸めて寝ている。(なんというズル賢さ)

そんな知恵があるなら、紙パンツ脱ぐなよ!

朝5時の出来事は、こうして今日も無事に幕を開け、

下ネタ発の一日が始まりを告げた。







最近介護の話をする人が増えたように思う。


昨日も、とある会合で初めて会った40代の女性が、義理の父の物忘れがひどく、病院に連れて行こうとしてもかたくなに拒否されると言っていた。


病院に行くのが遅れ、アルツハイマー型認知症が進んでしまい、数年で寝たきりになる人は少なくない。


特に男性の場合、医者に病名を告げられるのを恐れ、


「寝たら治るから」「仕事がある」「病院はきらい」といった言い訳をし、行こうとしない人が多い。


そこで、こうした拒絶派をどうすれば病院に連れていくことができるか、考えてみよう。


たとえば、責任感の強い男性なら、


「介護するのは私なのよ」とか、


「あなたがボケると家族はどうなるの」など、きつく言ったあと、


「これからも頼りにしているから」と、やさしく言う。


これは、相手の心を揺さぶる一種の心理戦だ。


すると、


「そ、そんなにオレのことを・・・よし、わかった、お前にそう言われちゃあ、かなわねえやい。ほんじゃあ、ちょっくら病院行ってくるぜい」となるはず。


もし、それでもダメなら、方向性を変えよう。


たとえば、


「神経科に超かわいい看護師さんいるって噂よ」とか、


「受付の子、セクシーボイスよ」など、男ごころをくすぐる。


すると、


「バカヤロー、そんな軽々しく行けるか」と、さも興味なさげな態度だが、


内心は、「ウッシッシ、内緒で行ってみっかな」と思ったりする。


ダメ押しで、


「精神科の女医、Gカップよ」と言えば、行く確率は倍増する。



男性の性格を考え、ときにはこうした誘導をしながら、根気よく説得してほしい。


仮にアルツハイマーを発症すれば、本人だけでなく、家族にも大きな負担となる。


それを覚悟しているなら放置してもいいだろう。


ともかく、病院で診察するか否かは、家族にかかっている。


どんな手を使ってもいいから、早く診察してもらうことだ。




介護ロボットというのがあるとは聞いていたが、その姿は想像したこともなかった。

だが、これがなかなかの代物なのだ。


特に、ロボットスーツとかマッスルスーツなどと呼ばれる、いわゆる筋肉補強器具的な装置で、これを身に付けると、重いものでも楽に持てるようになるらしい。


ロボスーツというから、てっきりガンダムのモビルスーツ風かと思ったが、そうではない。もちろん戦うことはしない。あくまでも物や人を持ち上げたり、歩行を楽にするという、平和的な目的が主である。


介護で老人を抱えてベッドに寝かせたり、車イスに移動したり、お風呂に入れたりする際に、マッチョマンのごとく力を得ることができるスーツだ。


仮に、わが母・スガ婆がスーツを着て町をうろつくと、危険だ。元気よく道路に飛び出したり、塀によじのぼったり、そこらじゅうで器物破損する可能性が高い。


それよりも、スガ婆用に「トイレロボット」がほしい。最近、ウンコをしても尻をふき忘れることが多く、トイレのロボット化は急務だ。できればトイレに連れて行き、便器に座らせ、排便をさせて尻を洗浄し、再び寝床に連れて帰るロボットが望ましい。


たとえば寝床から起きると、

「スガばあちゃん、こっちだよ」と言って手をやさしくとって誘導するロボット。子供が好きなスガ婆のために、女児童タイプのエスコートロボットだ。


「トイレに着いたよ」と、扉を開けると、

「ではパンツを脱いで座って」と言って、すでにトイレに来たことを忘れかけているスガ婆を便器に座らせる。


スガ婆が座ったのは、じつはトイレットロボット。まずはお尻を完全密閉する。


用を足すと、尻の洗浄を開始。水圧が低く、ウンコが溶ける特殊なお湯なので、気にさわることはない。水と空気だけで処理し、飛び散る心配もなく、肌にもやさしい。


すべて終了すると、ドアが空き、エスコートロボットが寝床に連れていく。


トイレの問題は介護者の多くが悩ましく思っているだろう。これが解消できれば、介護は格段に楽になる。トイレメーカーさん、ロボット開発を急いでください。


できれば月に500円くらいのレンタル料でおねがいします。






何だか久しぶりのブログだ。ちょっとだけ休もうと思っていたら、気がつけば半年ものブランク。多くのファンの皆様(約3名)、誠に申し訳ございません。
というわけで、さっそく本題に入ろう。


今年最大に度肝を抜かされたのが、親しいK出版社副社長Nさんのスーパードライブである。

今回はベンツ。さすがにベンツで無茶はしないはず、だった。

飯田橋から新宿までの大都会、しかも夜、飛ばせる道などないはず、だった。


しかーし、それが素人の浅はかさ。なんせクルマは自動車の王道ブランド、メルセデス・ベンツのオープンカー。

大人のクルマだが、Nさんはクルマに乗ると青年に戻る。まるで、こち亀の白バイ警官・本田速人のように。


駐車場で姿を現したベンツが唸り声を上げた(やばい)

走りたくて仕方がないサラブレッドのようだ。

6,000ccV12ツインターボ、すごいでしょ」

Nさんの前歯が光る。

「急いでませんので、アハハ」

と、暗に飛ばさないでと言ったがおそらく通じてない。

「新宿まで10分もあれば着きます」

「え、10分ですか?」

信号あるし、金曜だし、混んでるし・・・ああ、神よ


やがて、ゴージャス極まりないエンジン音を轟かせ、ベンツは飯田橋の狭いビルの隙間を駆け抜けた。
大通りに出ると混雑していた。すこしホッとする。神楽坂を過ぎたあたりで、抜け道に入る。いやな予感。

道幅は狭く、くねくねと蛇行し、他のクルマは見えない。

遠くに信号が見えた。と、その時、ベンツが悲鳴を上げ一気に加速した。

身動きとれないほどの空気のカタマリが体を押さえつける。
血液は流れを止め、心臓は硬直し、呼吸ができない。

「自動的に車体のブレを制御する機能がついてまして・・・」

こ、こんな時によくも・・・Nさんの解説がまったく耳に入らない。

信号が黄色になる。

だが、クルマは止まらない。信号までの距離は遠い。

(まさか行くんですか?)声は出ない。

やっぱり行くんだ、そう思った瞬間、ベンツは急停止した。

「ブレーキがね、すごく効くんです、アハハ」

Nさんは笑って、僕は凍っている。

新宿駅はあと少し。それまで生きているのか。


伊勢丹前の道路ではさすがに大人の運転だ。

目の前に新宿駅が表れ、クルマは地下駐車場へ進む。


駐車場は広く、直線に長く伸びた空間だ。


もう、これで帰れると思ったとたんだった。
閉じた空間にブフォーンというエンジン音が響き同時に悪魔の加速。

正面の壁まで100mもない。やっぱり今日はダメかも・・・

しかし、今度はすぐに減速し、壁の手前を静かに右折していく。

それでも顔の皮膚がピクつき鼻水も出て、手でぬぐう。(まさか脳みそ?)

「この前、ここで100キロ出しました」

地下駐車場で100キロ? とうてい信じられないが、Nさんなら有り得る。

そして、このクルマならどんな無茶も可能だろう。


「お疲れさまでした」

クルマから降りたNさんは、いつもどおりの優しい本田速人に戻っていた。

「今度、おうちまで送りますよ」

社交辞令でないことは、わかっている。

僕は、ただ笑うだけだった。