人類の過去に“さらに”迫る、シリーズ第二作です。
「ガニメデの優しい巨人」
ジェイムズ・P・ホーガン著 池央耿訳 創元SF文庫
名作『星を継ぐ者』の続編です。
〈『星を継ぐ者』のレビューは⇒コチラ!〉
主人公は、核物理学者のハント博士。そして傍らには、今では盟友となった生物学者・ダンチェッカー博士がいます。
物語の冒頭、遠い過去に起こったとある恒星系での事故の描写があります。
恒星の爆発(おそらくは超新星)に巻き込まれた〈シャピアロン号〉の苦難の旅が始まる場面です。
木星の最大の衛生であるガニメデ。その氷の中で、巨大な宇宙船と約8フィート(約2メートル40㎝)の身長を持つ異星人(の遺骸)が発見されました。人類は彼らをガニメアンと名付けました。
その宇宙船とガニメアン、そして彼らの宇宙船の中に積まれていた漸新世(ぜんしんせい:地質年代の一つ。34000万年~23000万年前)の地球上の生物を調査・研究するためにハントとダンチェッカーの両博士はやって来ました。そこで、早速議論が紛糾します。
宇宙船に積まれていた全ての漸新世生物の体内に、進化の系統上あり得ない(地球上には存在しない)酵素が発見されたのです。例によって他の学者の仮説をことごとく駆逐していくダンチェッカー博士(この辺の意地悪さは変わりません:笑)。ですが、彼の前に門外漢ながらハント博士が立ちはだかります。
「君はそう言うけど、現実の数字(データ)はこうなっているよ」と―。
そんな折、ガニメデ基地の付近に、故郷を目指して20年(浦島効果的な事で実際は彼らの母星で×100万年)の旅を続けてきた〈シャピアロン号〉が現れます。そう、その船に乗っているのがガニメアンなんです!
―ガニメアンの故郷である惑星ミネルヴァ(火星と木星の間にあった惑星)ははるか昔に消滅していました。ミネルバの残骸は、一つは遠く軌道を離れ冥王星になり、残りは小惑星帯となっていました。さらに言えば、ミネルバの衛星は地球の“月”になっています。
そんなこんなで人類と異星人との間で、初めてのコンタクトが交わされます。
ガニメアンには、“ゾラック”というスーパーコンピュータがあり、瞬く間に英語を習得します。彼のおかげで、交渉は平和裏に終わり、人類は彼らと友好関係を築きます。
ガニメデにいる研究者はともかく、地球はこの大ニュースで沸き返ります。受け入れ先を巡って、早くも各国で議論が紛糾します。
―この『俺が、俺が』的なくだりがとっても可笑しいのです。(地面に張り付いている)地球人の発想の限界とでもいうんですかねぇ(笑)。それに―
そもそもガニメアンは、まだそんな意思を微塵も見せてもいないんです(笑)。
進化の途上で早々と肉食獣がいなくなった為、ガニメアンには競争とか闘争という概念がありません。ですから、正直(別な理由もありますが)、地球人の歴史を学ぶ程、警戒もしていました。しかし、ハント達と交流し、その後地球で手厚い歓待を受け、彼らの心も変化していきます。
故郷を失った彼らは、「地球人の好意に甘えても良いのではないか」と考え始めるのです。
しかし、そこでガニメアンの司令官は、新たに発見された“彼らの後の世代が移住したと思われる惑星『巨人の星』”へ出発することを決断します(アクセント間違えないでネ:笑)。
その理由に気が付いたのは、またしてもダンチェッカー博士でした。そこには、人類とガニメアンの間のさらなる秘密がありました。
―第一作でも、ラストで美味しいところを持っていったのはダンチェッカー博士なんです。まぁ、彼は生物学者ですから、そもそも彼の領分なんですけどネ。
ちょっと、歯ごたえのあるSFですが、それ以上の面白さでした。次作も楽しみです!
なお、すっごく難しい用語や理論なんかは、本レビューでは、いっさい―
割愛しています