最後の一行を見た瞬間―

 

 西野カナさんより震えた自信あります(笑)。

 

「星を継ぐ者」

ジェイムズ・P・ホーガン著 池央耿訳

 

 

 見たことのない深紅の宇宙服を身にまとった遺体が月面で発見されました。地球人としか思えない彼は、五万年前にその場所で息を引き取っていました。

 

 月で発見された事から、ルナリアンという名称で呼ばれることになる彼等。そして、彼自身にはチャーリーという名前が付けられました。

 

 ―このチャーリーがどこから来たのかを巡る物語です。舞台は二〇二〇年代、一般人でも月なら旅行できるようになっている未来(現状、惜しいとこまで来てます:笑)。

 

 

 

 主人公ハント博士は、巨大企業に特別な席(好きに研究開発してちょうだい的な事です)を与えられている天才物理学者。彼の最大の武器は、柔軟な思考と、天才的な閃き。

 冒頭、彼の開発したトライマグニスコープごと、NASAへ招聘されます。

 

 洞窟の中で土砂に覆われた状態であった為、奇跡的に良好な状態(ミイラ)で保存されていたチャーリーですが、その扱いには最大限の注意を要します。装備品や、身体の組成を詳しく調べる為、トライマグにスコープなる最新機器と、開発者であるハント博士の助力が欠かせなかったのです。そして、彼を招聘した国連宇宙軍本部長のコールドウェルは、スコープよりもハント博士自身が必要だと考えていました。

 

 秘密裏に各界の権威が集められ、“チャーリー”についての研究が進められます。骨格や内蔵なんかを見ても、ハッキリ地球人の特徴を備えているチャーリー。しかし、彼が生きていたのは、五万年前、発見されたのは月‥‥‥。

 

 NASAでは、様々な見地から仮説が飛び出して、まさに百家争鳴の状態。

 

 その中で、“チャーリー地球起源説”を唱える生物学のダンチェッカー博士は“偶然、異星人が地球人と同じ進化した”などの仮説を、駆逐していきます。進化論に照らせば、地球上で進化した以外には考えられないんですから、彼は無双状態(笑)。

 

 ―こいつが、本当にいけすかないヤツなんですよ。ハント博士も面と向かって言ってますが、狭量なんです、意見も人間も。

 そんでもってこの二人、とにかく反りが合わない(笑)。まぁ、物語のパターン的には、よくある“面白い関係”なんですけどね(笑)。

 

 ハント博士は、全く未知の案件なんだから、これまでの常識にとらわれない柔軟な姿勢こそが望ましいと考えています。勿論、ダンチェッカー博士に対し、『その五万年前に月に人類を送り込めた文明の痕跡はどこにあるんでしょう?」という反撃も忘れません(笑)。

 

 その後、トライマグニスコープによる解析の結果、チャーリーの所持品の一つがおそらく手帳であると判明します。そしてその中の、とあるページが“カレンダー”である可能性を示唆するハント博士。そこから、言語学者や数学者達がルナリアンの文字の解析を始め、後に大きな成果を生みます。

 

 ―ただ、元々のキッカケは、、コールドウェルの秘書であるリン女史(絵に描いた様な美人秘書です)の『手帳だったら、カレンダーが付いてて当たり前じゃない』という一言でした(うーん、柔軟:笑)。

 

 そして、この手帳には、チャーリーの最後の数日間の手記が書かれているんです。なんなら、お茶目だけれど、とっても頼りになる同僚の事なんかも‥‥‥。

 

 その後、月でさらなるルナリアンの痕跡が見つかり、さらには木星の衛星ガニメデで巨大な宇宙船と巨人タイプの異星人(通称:ガニメアン)の骨格等が発見されます。

 

 ―この時点で、チャーリーの故郷は地球ではなく、火星と木星の間にあったと思われる惑星(ミネルヴァと命名されます)であると推測されています。確かにその場所には、かつての痕跡のように小惑星帯が広がっています。

 

 ガニメアンと宇宙船は、なんと二五〇〇万年もの間、氷漬けけになっていた事がわかります。

 コールドウェルは、ハントとダンチェッカーの二人をガニメデに送り込みます。反りは合わないけれど、互いに優秀な科学者である二人。彼等が地球を離れ隔絶された環境で生み出す化学反応を、コールドウェルは期待していました。

 

 まんまと乗せられた形の二人(笑)は、真摯に探求者として意見を交わします。その結果、ハントはこれまで得られたデータに基づき、ついに現状で矛盾のない仮説を生み出します。それは、ルナリアンの謎、ガニメアンの謎、そして地球の、人類に関する謎まで、全てをカバー出来る内容でした。

 

 こうして物語は一気にエンデキングへ―

 

 しかし、ダンチェッカーが生物学者として、異を唱えます。

 

 進化論に照らせば、それは明らかに違う、と。

 

 そうして、ハントの仮説をもう一歩進めた、彼の考えを述べ、“ある断言”をするのです。

 

 

 ―私、今までそこそこ本を読んできた中で、クライマックスで声を出してしまった作品が二つあります(『火車』と『ななつのこ』です)。

 

 今回、三作品目出ました!

 

 ダンチェッカー博士の仮説の後、続くエピローグの最後の一文。

 

 思わず、「おおっ!!」ってなりましたし、寒気するくらい鳥肌立ちました。

 

 いやぁ、最高ですよ!!