神聖な空間彼は、うつむいて、言葉を探している。空白の椅子を前にして身体の深部で、未だ輪郭を持たなかったモノ達が「言葉」へと結晶化するのを、待機している。まぶたが震え、握った拳に力がこもり眉間のしわが濃くなる。長い長い静寂を超え、彼は語りはじめる。空気が震えている。僕は、それをそっと掬いとる。人間が自らの魂に触れ、そこから何かを生成する瞬間そのあまりに私的で、あまりに神聖な瞬間に立ちあうことの不思議と奇跡に僕は、うたれている。